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法律情報

2022年4月 1日 (金)

民法改正による成年年齢引き下げについて

民法改正により、2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳に引き下げられまました。

この改正により、2022年4月1日の時点で18歳、19歳の人は同日の時点で成人年齢に達するということになりました。

民法上の成年年齢の引き下げに伴い、18歳で親の同意がなくとも様々な契約をすることができるようになります。未成年者の場合、契約は親の同意が必須であり、同意なき契約については未成年者取消権により契約の取消しが可能です。成年年齢の引き下げによりこれまで20歳まで認められていた未成年者取消権の範囲が縮小しますので、若者を狙った消費者被害が拡大するのではないかとの懸念もあげられています。

また、女性が結婚できる最低年齢は16歳から18歳に引き上げられ、結婚できるのは男女ともに18歳以上となります。

一方、民法改正後も、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は、パターナリズムの観点よりこれまでと変わらず20歳とされています。

成年年齢の引き下げは民法制定以来のドラスティックな改正であり、今後様々な分野で影響が及ぶことになります。内容については確認しておくことをお勧め致します。

弁護士 大窪和久

2021年2月28日 (日)

ダウンロードの違法化について

皆さんは違法にアップロードされた、漫画、動画、映像、音楽等を誤ってダウンロードしたことはありませんか。知らず知らずのうちに、違法な行為をしてしまっている人も少なくないかもしれません。今回は身近な問題であるダウンロードの違法化について取り上げたいと思います。

令和3年1月1日に改正著作権法が施行され、違法にアップロードされた著作物全般のダウンロードが違法とされました。著作権法は、一般に私的に利用する目的でのダウンロードを適法としていますが、違法にアップロードされた音楽や、映像のダウンロードについては、私的使用を目的とする場合であっても違法と定めています(3013号)。今回の改正では、音楽、映像だけでなく違法にアップロードされた著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)に規制対象が拡大されました。(30条1項4号)

但し、私的利用の場合の禁止の対象は、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみとされました。違法にアップロードされたと知らないことに重大な過失があったとしても、禁止の対象にはなりません。(302項)

漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」や、②二次創作・パロディ③「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードについても規制の対象外とされています。

刑事罰については、違法であることに加えて、正規版が有償で提供されていること、反復、継続してダウンロードを行うことが要件とされました。(119条第3項第2号、第5項等)法定刑は2年以下の懲役・200万円以下の罰金です。すべて親告罪であり、権利者による告訴が必要です。

先日、違法に漫画のアップロードを行っていたサイトの運営者が逮捕されたのは記憶に新しいと思います。情報化社会が進み、誰もがインターネットで簡単に著作物をアップロード、ダウンロードできるようになりました。悪質な違法アップロード、違法ダウンロードは後を絶ちません。これらの違法行為により、著作権者は、大きな被害を被っています。著作権法の改正は、こうした社会状況を背景に、著作者の権利を守るため、違法の対象、刑事罰を科す範囲を拡大する方向でされてきました。

しかし過剰な規制は人々の自由な情報収集、表現活動を委縮させることにもなります。

twitter、Instagram等のSNSでアニメ、漫画の画像や芸能人の写真をアップしたり、ダウンロードしている人も多いでしょう。権利者が承諾している場合には違法となりませんが、そうでなければ違法となる場合もあります。実務上、これらの行為が問題とされることはしばしば起こりますが、規制の存在は人々の表現活動を委縮させます。また、作品が伝えられることによって、作品の知名度や、人気が高まっていく面もあり、規制に消極的な意見もあります。

最近、スタジオジブリが、公式サイトで作品の場面の画像を無料ダウンロードできるように公開し、「常識の範囲内で」使用することを許可しました。反響はとても大きかったようです。

元の画像を無断で使用して利益を得ることは、権利者を害することになります。しかし「常識の範囲内で」、仲間内で楽しむために画像を使用することについてまで規制対象とするのは行きすぎのようにも思います。

法律により規制対象範囲を拡大することが抜本的な解決には繋がるかは疑問です。何より利用者一人一人に、著作権者を害するような行為には加担しない、という意識を持つことが求められています。

 (北浦)

2020年12月23日 (水)

SNS上の誹謗中傷の投稿者を特定するための「新たな裁判手続」について

 2020年12月21日付のNHKニュースにて、「SNS上のひぼうや中傷被害防止へ 新たな裁判手続きの創設決定」という報道がなされました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201221/k10012775821000.html

  報道によれば、「フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが、SNS上でひぼう中傷を受ける中で自殺した問題をきっかけに、総務省の有識者会議が投稿した人の情報開示に関する検討を進め、21日の会合で新たな裁判手続きの創設を決めました」とのことで、この「新たな裁判手続」によってSNS上の誹謗中傷の投稿者に関する情報開示が「迅速に進められる」ということになっています。この「新たな裁判手続」を創設するようになった背景、及び現時点で分かっている内容について本ブログで紹介致します。

  総務省の有識者会議(発信者情報開示の在り方に関する研究会)は、今年の4月から12月まで11回行なわれており、議事の内容等についてもホームページ上で公開されています。「新たな裁判手続」の内容についても、リンク先の最終とりまとめ(案)の中で紹介されています。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/information_disclosure/index.html

 「新たな裁判手続」を創設するようになった背景としては、誹謗中傷の投稿者に関する情報開示の裁判手続の負担が大きすぎるという点があります。

 SNS上の誹謗中傷の投稿により権利侵害がなされていることが明白な場合でも、情報を有しているSNSの運営者や接続プロバイダは原則として裁判外では開示しません(特に海外の法人については、裁判所の決定がなければ開示することはないといって良いです)。そのため法的手続が必須となるのですが、その場合、(1)SNSの運営者に対して仮処分を申立てた上、仮処分の結果接続プロバイダからのアクセスに関する情報の開示を受ける(2)接続プロバイダに対して訴訟を行い、勝訴してプロバイダの契約者に関する情報の開示を得るという二回の裁判手続を経る必要があります。

 このように二回の裁判手続を要し時間も費用もかかることから、被害者にとっては非常に大きな負担となっています。また、時間を要している間に、接続プロバイダのログ保存期間を徒過し、時間切れで特定に至らないということも珍しくはありません。

 総務省の有識者会議で創設を決めた「新たな裁判手続」については、最終とりまとめ(案)によれば、次のような内容になるようです。

  • SNSの運営者に情報を開示させた上、接続プロバイダの発信者情報の保全を行い、接続プロバイダに情報を開示させるという一連の手続を一回で行なうようにする。
  • 現行法上の開示請求権を存置し、現行の手続(上記二回の裁判手続を経て特定させる)も維持する(被害者は手続を選択することができる)。
  • 開示する要件としては、現行法と同様(権利侵害の明白性が認められる場合)とする。

  「新たな裁判手続」について現在明らかになっている内容からしても、誹謗中傷の投稿者に関する情報開示の裁判手続の負担はかなり軽減されることになるでしょう。手続の詳細については今後更に検討されることになりますが、被害者のSNS上で誹謗中傷を受けて泣き寝入りする人が少しでも減るよう、実効的な手続を導入していただきたいものです。

弁護士 大窪和久

2020年7月30日 (木)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について その3

 昨今、新型コロナウイルスのクラスターになることを恐れて、高齢者宅への訪問が減少しています。もともと、単身独居世帯が増えており、家族も帰省を控えるなどで行き来が減っているところに、ヘルパーも訪問回数を減らすなどしているところがあります。

 さて、これで喜ぶのは、高齢者宅を訪問して悪質商法を持ち掛けようとする詐欺師です。

 最近流行の悪質商法に、高齢者に対する不動産の押し買いというものがあります。不動産の押し買い自体は珍しいものではありません。以前から、高齢者宅を訪れて、自宅マンション等の売却を勧めるというものはありました。もとはひとつの詐欺師集団が、何度も業者名を変えて自宅を訪問し、相場より安価な値段を提示してこれが相場と思わせ、最終的に相場より恐ろしく安い値段で自宅を買い取ってしまうのです。高齢者に対しては、そろそろ終の棲家(施設)を探したほうがいいと言い、施設を購入するには先立つものがいるだろう、施設に入れば自宅はもういらなくなるからこれを売って元手にしよう等と親切ごかしに持ち掛けるのです。あるいは、転居先が見つかるまではリースで住めるから、と言って売らせることもあるようです。

 コロナによってヘルパーらの目が行き届かなくなったのをいいことに、最近このような押し買い商法が複数散見されています。不動産を購入する側であればクーリングオフ制度もあるのですが、売却する側はクーリングオフの対象になっておらず、手付倍返しや違約金による解決しか受け付けない業者もあります。

 判断能力の衰えた高齢者から自宅を奪うような悪質商法が許されていいはずはありません。安易に手付倍返しや違約金による解決を図る前に、弁護士にぜひ相談をするようにしてください。

石丸 文佳

2020年7月27日 (月)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について その2

  前回、本ブログでは、持続化給付金詐欺の話題を掲載しました。サラリーマンなど本来は受給資格のない人に給付金の受給を持ち掛け、手数料を取るというものです。今回は、このような詐欺について、もう少し詳しい話をしたいと思います。

 持続化給付金は、個人の自営業者で一定の収入減少があれば、最大100万円を受け取れます。詐欺師は、説明会場を設けてカモを呼び、架空の確定申告書と税理士を用意して、あたかもカモが自営業者であるかのように見せかけます。そして、カモの口座に100万円を振り込ませる手続を代行するのです。カモは、途中で止めたいと思っても、書類の全てを詐欺師が握っているので、申請を取り下げることもできません。そして、振り込まれた100万円のうち、実に8割以上を手数料と称して支払わせます。支払方法は、直接現金を持参させる方法をとります。昨今の特殊詐欺同様、口座への送金ではその口座が凍結されるかもしれないからです。

 書類に残るのは全てカモの名前と口座情報であり、詐欺師は全く表にあらわれません。カモの手元に残っているお金は20万円もないのですが、詐欺を行ったということで捕まるのはカモだけで、返済義務も100万円全額を負うことになります。

 更に、学生などの間では、これは一種のマルチとして流行っているそうです。友人を紹介すればキャッシュバックがもらえるので、生活が苦しい若者は、自らが詐欺の片棒を担ぐだけでなく、友人も詐欺に引きこむことになるのです。

 このような詐欺には加担しない、勧誘しないのが一番ですが、もしも詐欺師に依頼してしまった場合、まずは決して手数料を支払わないでください。手元に1020万円程度しか残っていなくても、100万円の返還義務はあなたにかかってくるからです。公序良俗に反する手数料の契約は無効ですから、詐欺師に手数料を支払う義務はあなたにはありません。また、現在、受け取ってしまった100万円を返還する窓口はないのですが、返せないからと言って使ってはいけません。経済産業省が受け取りを拒否した場合は、供託という方法もあります。100万円が振り込まれてしまった時点で詐欺は既遂になってしまいますが、経済犯は利益を全額返したかどうかで大きく量刑に差が出ます。既に先日、19歳の少年が持続化給付金詐欺で逮捕されていますから、捕まらないだろうと高をくくってはいけません。

石丸 文佳

2020年7月25日 (土)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について

 新型コロナウイルス感染症に伴い、収入が減少してしまったという方は多いですが、そのような弱みにつけ込んだ悪質商法が後を絶ちません。

 国民生活センターによれば、受給資格のない人に持続化給付金の不正受給を持ちかける勧誘が多数報告されているとのことです。持続化給付金の受給申請の為には自らが事業を行なっていることが必要ですが、「サラリーマンでも無職でも100万円の持続化給付金が受け取れる」「事業をしていることにして、申請を代わりに行なう会社にお願いすれば持続化給付金がもらえる」などといって、本来であれば受給資格の無い人に勧誘をかけます。その上で、勧誘に乗ってしまった人から受給した持続化給付金の何割かを手数料として受け取るというものです。

 このように、受給資格が無いにも関わらずあたかも事業者を装い受給資格があると偽って持続化給付金の給付申請を行なうことは詐欺罪に該当しますし、誘いを持ちかけた方が逃れてしまい、申請者のみが犯罪の責任を問われるということは十分あり得ます。まったく割に合わない行為ですので絶対に誘いに乗らないようにしてください。

 また、東京都消費生活総合センターによれば、「新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減ったため、副業や内職を探していたらトラブルにあった」という相談が増加しているとのことです。パターンとしては、動画サイトの広告やランキングサイト等をみて事業者のサイトでSNS登録をするよう促され、やりとりをする中で高額な情報商材を売りつけられるといったもののようです。以前から情報商材として、最初は安い1万円から数千円程度のものを売り、興味を持った人に数十万円以上の価格のもの(内容は宣伝とはかけ離れた物であることが多いです)をカードを使わせるなどして売りつけるというトラブルはありますが、新型コロナウイルスで収入が減少したところを狙われているようです。情報商材で「簡単に稼げる・儲かる」と言われて実際に儲かるものは皆無といっても過言ではありません。通常であればそのような話には引っかからないところ、現在のような状況ではつい引っかかってしまうということもあるでしょう。

 紹介してきた悪質商法については最初から関わらないのが一番ですが、取引に応じてしまった様な場合については、少しでも被害を少なくするために早めに消費者センターや法律事務所に相談して、問題を解決するようにすることを強くお勧めいたします。

弁護士 大窪 和久

2020年7月20日 (月)

自筆証書遺言書保管制度が始まりました

7月10日から、法務局で手書きの遺言書(自筆証書遺言書)を保管する新たなサービスが始まりました。預ける際に法務局へ支払う手数料は1件あたり3900円です。費用面からしても利用しやすいものとなっています。

これまでは、自筆証書遺言書は自宅内で保管することが一般的でした。そのため、せっかく遺言書を作っても、相続人が発見できなかったり、発見されたとしても遺言書の改ざんの有無を巡って相続人間で争いになることもありました。そこで、相続手続きをスムーズに進めていくことができるように、法務局で自筆証書遺言書を保管するサービスが始まりました。

自筆証書遺言書の保管は、遺言を作成した本人だけが申請することができます。申請先は、住所や本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。そして、相続人は、被相続人(遺言書を残した人)が死亡した後には、法務局に遺言の有無を照会することができます。このように、自筆証書遺言書を作った後はそれを法務局に預けておけば、亡くなった後も相続人に発見してもらいやすくなります。また、遺言書の改ざんを巡って相続人間で争いになることもありません。

ただ、このサービスは、法務局が、預かった遺言書の内容に問題がないことを保証するものではありません。また、法務局は遺言書の内容に関する事柄については一切相談に応じられません。たとえば、遺留分といって、一定範囲の相続人には、遺産から最低限受け取れる権利というものがあります。特定の相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言であっても、遺言の形式面に問題がなければ、申請があれば法務局は遺言書をそのまま預かることになります。そのため、遺言書の内容面に問題がある場合は、このサービスを利用したとしても、結局、相続人間の争いを招いてしまいます。

そのため、法務局のサービスを利用する場合でも、遺言書の内容に問題がないかどうか、弁護士に相談されることをお勧めします。

(弁護士 小堀 惇)

2020年7月 3日 (金)

新型コロナウイルス感染症に便乗した詐欺について

 新型コロナウイルスに便乗した詐欺事件が増加しています。朝日新聞の報道によれば、新型コロナウイルスに便乗した詐欺事件(未遂を含む)の被害は今年の3月上旬から517日までの間に、16都道府県で39件確認されており、被害額は約3550万円にのぼっているとのことです。

 典型的な手口としては、特定定額給付金の手続の代行を行なうのでATMに手数料の振り込みを求めるであるとか、申請手続のために口座番号・暗証番号等個人情報を聞き出すなどです。そもそも特定定額給付金の申請は市町村から各世帯へ郵便で送付される申請書に記入し申請するか、「マイナポータル」によるオンライン申請のいずれかしかありません。また、役所の担当者が申請手続のために手数料の振り込みを求めるであるとか、個人情報を聞き出すということは絶対にありません。

 上記のような電話やメールなどが来た場合、まず間違いなく詐欺ですので警察や消費生活センター等に相談することをお勧めいたします。また、仮に実際に手数料の振り込みを行なってしまったりした場合でも、早期の段階であれば振り込め詐欺救済法による銀行口座凍結等により、被害回復ができる場合もありますので、なるべく早めに相談にいくことをお勧めいたします。

 また、給付金等の支給を受けられると騙った偽サイトにも注意が必要です。既に行政機関を騙った偽サイトが多数存在しているようです。また、サイトだけではなく偽の申請アプリ等が出現する可能性も否定できません。これらのサイト等はクレジットカード情報等を取得した上でそれを盗用するためにつくられているものです。給付金の支給のためにクレジットカード情報を入力する必要はありませんので、絶対に入力しないで下さい。仮に入力してしまった場合でも、早期であればカード会社によるチャージバックの手続などにより被害を防げる場合もありますので、なるべく早めに警察や消費生活センター等に相談することをお勧めいたします。

 上記の手口以外にも、新型コロナウイルスに便乗した詐欺の発生することが懸念されています。不審な電話やメールがきたり、不審な人物が自宅に訪問してくるような場合には、その場で何かを決めるのではなく、家族、知人、あるいは消費生活センター等に相談しましょう。

弁護士 大窪和久

2020年3月18日 (水)

消滅時効の期間が変更されます

 2020年4月1日より改正民法が施行されます。今回の改正は大規模改正であり多くの点が変わっておりますが、その中でも特に気をつけておく必要のある消滅時効の期間の変更について簡単に説明致します。

 1 消滅時効期間の変更

 消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度です。これまでは、原則として「権利を行使することができる時から10年」経過した場合に消滅時効が成立することになっていました。但し、例外が多数定められていました。例えば飲み屋のツケは1年で時効が成立したり、弁護士報酬については2年で時効が成立するということになっていたのです。

 改正後は、シンプルに統一化し、消滅時効期間は原則として「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年」となりました。例えば貸金の場合、契約上返済期限は定まっているのが通常ですから、返済期限がきてから5年間経過してしまうと消滅時効が成立してしまい貸主が返済を求めることができなくなってしまいます。

2 生命・身体の損害による損害賠償請求権の時効期間の特則

 法改正により、生命・身体の損害が生じた場合の損害賠償請求については、通常より時効期間を延長させる(消滅時効期間を「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」とする)という特則が設けられました。詳しくは下記の通りです。

(1)契約責任に基づく損害賠償請求の場合

 例えば、会社で従業員が過労死し、会社は過大な労働をさせたとして契約上の安全配慮義務違反があったとして従業員の遺族に損害賠償しなければならないとします。前記の通り法改正後の消滅時効期間は原則「権利を行使するができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年」ですが、このケースのように契約上の義務違反により生命・身体の損害が生じた場合には、「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」の間は消滅時効が成立しないことになります。

(2)不法行為に基づく損害賠償請求の場合

 例えば、自動車事故により被害者が亡くなり、運転者側が被害者の遺族に対し損害賠償しなければならないとします。自動車事故のような不法行為の損害賠償請求の時効期間は原則「権利を行使することができることを知った時から3年、または権利を行使することができる時から20年」ですが、生命・身体の損害が生じた場合には、法改正により上記契約責任の場合同様「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」の間は消滅時効が成立しないことになります。

 3 消滅時効については、2020年4月1日の法施行日の前に生じた債権、および施行日以後に生じた債権でもその原因である法律行為が施工日前になされていたものについては、改正前の民法の時効期間が適用されることになります。

 よって2020年4月1日以降、消滅時効期間がどうなるかについては契約時期等により異なることになりますので注意が必要です。

 

桜丘法律事務所 弁護士 大窪 和久

2020年2月24日 (月)

応召義務に関する新たな通知が発出されました

医師の「応召義務」という言葉は、よく耳にする割には、その義務の範囲がはっきりせず、言葉が一人歩きしているところもあったように思います。

 

ところで、昨今の働き方改革では、医師についても労働時間の規制が議論されています。もし、応召義務を「いつでも、誰からでも、診療を求められたらそれに応じる義務がある」というような理解をしてしまうと、医師に無制限の労働の義務を課すことになり、働き方改革の考えと抵触してしまいます。そのため、医師の応召義務をどのように整理するかが問題となっていましたが、昨年12月に厚生労働省より応召義務に関する新たな通知が発出されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

 

新たな通知では、診療を求められた時間帯や、患者の容態等の緊急性の有無といった観点から場合分けをして応召義務の有無を検討していますが、注目されるのは、「医師と患者間との信頼関係の有無」という観点からも応召義務の有無を整理した点です。

一般的に信頼関係がこじれる場面として想定されているのは、患者側の態度(迷惑行為)とお金に関して問題が生じた場面です。患者の迷惑行為を理由とした診療の拒否ができる場合の例としては、患者側が診療内容そのものとは関係のないクレームを繰り返し行う場合をあげています。

他方、単に過去の医療費に不払いがあるだけでは、それのみを理由に診療を拒否することはできないとしています。医療費の不払いを理由に診療を拒否できるのは、支払い能力があるのに悪意を持って支払いを拒否したり、支払い能力がないのに医学的な治療を要さない保険適用外の診療を求めるような場合等、正当化される場面を限定的に整理しています。

 

ただ、中には、問題の原因が複合的になっていて、医師側としては診療を拒んでも問題がないケースなのか否かが判別し難いということもあると思います。医業は、法律による規制だけでなく、厚生労働省の種々のガイドラインとの適合も求められるため、最近は、常勤の弁護士を院内においている医療法人も徐々に増えてきました。

クリニック・病院のガバナンスの相談相手としても、弁護士を利用されることをお勧めします。

(小堀 惇)

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