民事事件

2019年1月 6日 (日)

5年無期転換ルールは人手不足のご時世に5年で人を辞めさせざるを得ないおかしな悪法か?

1.労働契約法18条1項は、有期労働契約が更新されて5年をこえたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できるとするルールを定めています(以下「無期転換ルール」といいます)。

  無期転換ルールに対しては「人手不足のご時世に5年で人を辞めさせざるを得ないおかしな悪法」として揶揄する見解もみられます

https://www.mag2.com/p/news/375000)。

 記事は、無期転換権の発生を阻止するため、有期労働契約の更新をしない企業があることを念頭に、

「企業も辞めさせたくないのに働きたい人を辞めさせないといけない、人手不足の時代にアンマッチングが起こる、ヘンで理不尽な法改正」

と無期転換ルールを批判しています。

  しかし、問題視されるべきなのは、無期転換ルールの適用を免れるために有期労働契約の更新をしない企業側の姿勢なのであって、議会や政府、無期転換ルールを批判するのは筋違いであると思われます。

2.そもそも、無期転換ルールは「辞めさせたくないのに働きたい人を辞めさせないといけない」法律ではありません。

  企業としては、辞めさせたくないのであれば、無期雇用にするなり、無期転換権が発生することを前提に有期労働契約を更新することが可能だからです。

  5年以上も必要性が認められ続けている類の業務であれば、すぐにすぐ仕事がなくなるということも考えづらく、担当者を無期雇用にしたところで、それほどの実害があるとは思われません。

また、本邦では整理解雇がそれ自体違法とされているわけでもありません。一定の要件さえ充足すれば、仕事がなくなった時に余剰人員を整理解雇することも可能です。無期雇用になったところで、本当に不必要な人員が生じてしまったときは、企業は整理解雇の要件にきちんと従って解雇できるのです。

3.記事は、

「長く働きたい人が辞めざるを得なくなる法律っておかしい」

ということを言うために、

「女性が20年働いた職場を雇止めされたケースでした。大手企業だから早くに対応も始めていて、法改正時の今から5年前、2013年の契約更新時の新しい契約書に『4月以降の通算契約期間は5年を超えないものとする』と今までなかった文言を追加したそうです。会社側は、当然のように『法律が変わって、5年を超えて更新できなくなった』と説明をして、『ここでやめるか、ハンコを押すかの二択だ』と言ったらしいです」

 との事例を引用し、

「大手企業としては、そういわざるを得ないんでしょうね。理想の方法とは違うけど、あながちやり方が間違いとも言えないし…」

 と無期転換ルールを批判しています。

4.しかし、これは明らかに間違ったやり方です。

  法は雇止め(有期労働契約の不更新)だからといって全く自由に行えるという建付けにはなっていません。

 ① 有期労働契約が過去に反復して更新され、期間の定めのない労働契約と社会通念上同視することが可能な場合、

 や、

 ② 契約更新への期待に合理的な理由がある場合、

 には、雇止めにあたって、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要とされています(労働契約法19条参照)。

  20年も有期労働契約を反復して稼働しているというケースである場合、①、②いずれの観点からみても、雇止めを行うにあたっては、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になります。

「法律が変わって、5年を超えて更新できなくなった」というのは無期転換ルールの説明として明らかに誤っています。

更新はできるけれども、無期転換ルールが適用されるというのが正確な説明になります。法の内容を誤解させて意思決定を迫るような手法は明らかに間違っています。

5.では、無期転換ルールの適用を避けたいからだと正直に説明しさえすれば、契約不更新が認められるかといえば、それも法の趣旨に照らすと疑義があります。

  厚生労働省は、無期転換ルールについて

 「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、 こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものであること。」

 との解釈を示しています(基発0810第2号 平成24年8月10日 厚生労働省労働基準局長「労働契約法の施行について」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/141128d.pdf 参照)。

  また、平成27年8月7日には厚生労働省大臣官房地方課長・厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長名で「労働契約法の『無期転換ルール』の定着について」という通知が出されています。

  ここでは参議院厚生労働委員会の附帯決議を指摘したうえ、

「政府は『無期転換ルールの本格的な適用開始に向けて、労働者及び事業主双方への周知、相談体制の整備等に万全を期すとともに、無期転換申込権発生を回避するための雇止めを防止するため、実効性ある対応策を講ずること』を求められている」

との認識が示されています。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2180&dataType=1&pageNo=1

 無期転換申込権発生を回避するための雇止めは防止されるべきものだとするのが議会の意思ですし、行政解釈でもあります。

  法の趣旨を普通に理解すれば、無期転換ルールを免れることを目的とした雇止めに客観的な合理性や社会通念上の相当性が認められる可能性は著しく低いだろうと思われます。

6.社会保険労務士の方がどのような対応をとるのかは不分明ですが、所掲のような事案に直面した場合、企業側の弁護士であれば、少なくとも法の趣旨について誤った説明を行うことは間違いだと言うでしょうし、20年働き続けた女性側から相談を受けた弁護士であれば、雇止めの理由が無期転換ルールを免れることだけにある場合、そんなことでは首にならない可能性が高いと励ますところだと思います。

  立法の経緯や趣旨を正確に説明せず、所掲のような不更新条項付きの契約書の取り交わしを迫ることに対しては、理想の方法とは違うし、やり方としても間違っていると言うのが法専門家としての一般的な見解だと思います。

  所掲のような事態が法的に問題ないものだとの誤解が招かれないよう、本記事を執筆しました。

(弁護士 師子角 允彬)

 

2018年12月26日 (水)

マタハラによる慰謝料

1.男女雇用機会均等法は、妊娠・出産を理由とする女性労働者に対する解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています(男女雇用機会均等法9条3項、同施行規則2条の2)。また、育児・介護休業法10条は、労働者が育児休業の申出をしたり、育児休業をしたりしたことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています。

  しかし、妊娠、出産を機会に仕事を辞める方は珍しくありません。第一生命経済研究所の試算によると、出産を機に仕事を辞める女性正社員やパート・派遣労働者は年間で20万人にのぼるといいます。

https://www.fnn.jp/posts/00344160HDK

 その中には法の趣旨に反する形で退職を余儀なくされた方も、多数含まれているのではないかと思います。

2.近時、女性歯科衛生士に対する産休後退職扱いの有効性が問題になった事案が公刊物で公表されました(東京地判平29.12.22労判1188-56)。

  これは、女性に退職の意思もそれを表示する言動もなかったにもかかわらず、不快感を抱いた理事長が、出産後の女性を強引に退職扱いにしてしまったという事件です。

退職扱いになった女性は、理事長や同僚職員に対し、「育児休業を取得した上、職場復帰する意思を表示」したり、被告や社会保険労務士事務所に「育児休業取得の手続を進めるための必要書類」を求めたりしていました。被告法人は随分と無理のあることをやったと思います。

  こうした扱いは当然違法であり、裁判所は女性からの地位確認請求、育児休業給付金相当額の損害賠償、慰謝料などの請求を認めました。

  その結論自体は普通の判断ですが、注目されるのはその慰謝料の高さです。

  裁判所は

「労働契約上の権利を有する地位及び賃金、育児休業取得その他の権利」

に対する侵害について、

「原告には労働契約上の権利を有する地位の確認、賃金及び育児休業給付金相当額等の損害賠償に関する請求が別途認容されても回復しえない重大な精神的損害が発生している」

として、200万円もの慰謝料を認めました。

  その理由として、裁判所は

「職そのものを直接的に奪っていること、原告には退職の意思表示とみられる余地のある言動はなかったこと、A理事長に故意又はこれに準じる著しい重大な過失が認められること、判決確定後も専ら使用者側の都合による被害拡大が見込まれること」

のほか

「いわゆるマタニティ・ハラスメントが社会問題となり、これを根絶すべき社会的要請も平成20年以降も年々高まっていること」

を指摘しています。

3.これだけ高額の慰謝料が認定される可能性があるとなると、嫌がらせをするような会社には戻りたくない・職場復帰(地位確認)までは望まないというケースであったとしても、訴訟提起することに相応の経済的な合理性があります。

  もし、理不尽な目に遭って悔しい思いをされている方がおられましたら、ぜひご相談にいらしてください。一人一人が声を上げることは、社会問題としてのマタニティ・ハラスメントの根絶にも繋がってゆくのではないかと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

 

2018年12月24日 (月)

「明日から会社に行かない」は許されるか?(退職に当たっての予告期間の要否)

1.近時、退職代行を謳うサービスが流行しているようです。

https://www.j-cast.com/2018/07/21334344.html?p=all

記事によると「明日から会社に行かなくてOK!」なる売り文句が使われることもあるとのことですが、そのような煽情的な宣伝文句を一般化することに対しては、少し疑問を感じます。

2.退職に関するルールは民法で規定されています。

  期間の定めのない雇用契約に関していえば、いつでも解約の申入れをすることができます。この場合、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了します(民法627条1項)。

  解雇予告期間とされている2週間に関しては、就業規則や合意等で1か月程度までであれば延長することも可能とする見解と、片面的強行規定であって合意による予告期間の延長が労働者を拘束することがないとする見解と、大雑把に言って二通りの理解があるように思われます(野川忍『労働法』〔日本評論社,第1版,平30〕356頁等参照)。

  いずれにせよ、「明日から会社に行かなくてもOKか?」と聞かれた場合には、最低2週間、就業規則の体裁により1か月程度は引継ぎに従事する必要があるというのが法律家としての一般的な回答ではないかと思います。

3.ただ、明日から会社に行かなくても良くなる方法は絶対にないのかと言われれば、そうとも限りません。以下の二つの場合には、明日から会社に行かなくても良いという判断を下せるのではないかと思います。

  一つは有給休暇を利用できる場合です。

「解雇予定日をこえての時季変更は行えない」とした解釈例規(昭49.1.2基収5554号)に準拠し、退職予定日までの勤務日を有給休暇で埋めてしまえる場合です。

  もう一つは、多忙かつ長時間の深夜にも及ぶサービス残業を余儀なくされていたり、会社代表者が高圧的な態度で罵声を浴びせていたりするなど、予告期間中の勤務を要求することが妥当でない事由が認められる場合です。

  民法628条は「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。」と規定しています。期間の定めのない場合にも、この規定が適用されて、やむを得ない事由がある場合に即時退職できるかは、法文上定かではありません。しかし、「労働者は、期間の定めの有無を問わず、やむを得ない事由があるときは予告期間を設けることなく、直ちに労働契約を解除して退職することができる(民法628条)。この『やむを得ない事由』は当該労働関係に関する全ての事情を考慮して解除の前に予告期間を要求することが妥当でない事由を指すものと解される。」と判示したうえ、予告期間を置かない即時退職を認めた下級審裁判例があります(東京地判平30.3.9労経速2359-26)。

  著しいサービス残業を強いられていたり、パワーハラスメントを受けていたりする場合には、予告期間を置かない即時退職も適法になる余地があります。

  一般に退職代行を利用したくなるようなのは後者のような場合だと思われます。ただ、そもそも期間の定めがない雇用契約に民法628条が適用されるという理解が一般性を有するのかといった問題があるほか、予告期間を置かずに出勤しないことが適法となる「やむを得ない事由」があるといえるかどうかに関しては裁判例の集積がそれほど進んでいないため、個別の事案で予告期間を置く必要があるかどうかに関しては、弁護士でも判断が難しいと思います。

4.退職代行を謳う業者の中には、交渉を行うわけではないから弁護士法72条で禁止されている非弁行為には該当しないと主張するものもあるようです。

  しかし、きちんとした法的判断を伴わず退職の意思表示だけ取り次いで、勤務先から反論が寄せられた場合に交渉も行わないといったことをして、本当に大丈夫なのかと心配に思います。

損害賠償請求を受けることは実務上あまりないにせよ、無断欠勤を理由とする懲戒解雇や退職金不支給等の報復行為に及ばれることは考えられないわけではないからです。実際、データ消去や在庫持ち出しを伴う集団退職に関する特異な例ではあるものの、退職の意思表示から一斉に出社しなかった労働者に対する懲戒解雇・退職金不支給を肯定した裁判例もあります(東京地判平18.1.25労判912-63等)。また、退職金不支給の判断に対しては、当方から退職金請求訴訟を提起する労をとらなければどうにもなりません。

  個人的には、非弁行為に該当しないことについて、工夫や説明をしなければならないサービスを利用することは推奨していません。

  法律が絡むことには、法専門家である弁護士に相談・依頼するのが安全だと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

2018年12月18日 (火)

求人広告と話が違う(残業代との関係)

1.法は、労働契約の内容について、できる限り書面による確認をするものとしています(労働契約法4条2項)。また、使用者に対しては、労働者に対し、賃金、労働時間その他労働条件を書面で明示することを義務付けています(労働基準法15条、同法施行規則5条3項)。

  しかし、労働関係の法律相談をしていると、雇用契約書を作っていない、労働条件明示書面の交付も受けていないという方が結構おられます。

  法律関係を明確にする書面がないと、使用者と労働者との間での認識の齟齬が生じやすく、紛争が発生する危険も高まります。

2.近時、労働契約書も労働条件明示書面も作成されていなかった事案において、時間外勤務手当の請求の可否が問題となった事案が公刊物に掲載されました。東京地判平30.3.9労経速2359-26です。

  被告となった会社は、

 「月給25万円~40万円」

 「※ 年齢・経験・能力などを考慮の上、給与額を決定します。」

 「9:30~23:00(実働8時間/シフト制)」

 「4週6休」

 などという労働条件を公開して募集をかけました。

  原告2名はこれを見て応募し、被告会社に採用されました。原告らの賃金は、それぞれ40万円、34万円と定められました。

  通常、求人広告は申込の誘引と理解されており、そのまま労働条件になるわけではありません。応募者に対しては、求人広告とは別に、改めて労働条件明示書面が渡されることになっていて、労働条件になるのは、この労働条件明示書面や労働契約書に書かれていることです。

  しかし、この事案では、労働契約書も労働条件明示書面も作成されなかったことから、原告らは40万円、34万円というのを基本給だと考えました。

  これに対し、会社は40万円、34万円を、基本給、家族手当、技能手当、皆勤手当、定額残業手当、普通残業手当、深夜残業手当、休日勤務手当に区分して支給しました。

  こうした扱いに対し、原告らは40万円、34万円を基礎賃金として時間外勤務手当が支払われるべきだとして会社を訴えました。

結論から申し上げると、裁判所は、時間外勤務手当の基礎賃金を、それぞれ40万円、34万円を基礎に算定すべきと判示しました。残業代に当たる部分の存在、金額、計算方法を示すことなく、給与明細書を交付する段階で一方的に内訳を決定しても、そのようなことは認められないとしています。

3.俗にブラック企業と言われる遵法意識の希薄な会社には、法を無視しても、既成事実を積み重ねて行けば済し崩し的に何とかなるといった発想を持つ傾向があるように思われます。

  しかし、現実には何ともなりません。裁判所に事件が係属する事態になってしまうと、法を順守していない側が圧倒的に不利です。

  求人広告を見て応募・採用されたものの、労働条件について事前に書面で明示されることもなく、入社してから突然「あれは残業代込みでの給料だ。」などと言われて理不尽さをお感じになられている方がおられましたら、ぜひ、一度相談にいらしてください。

  残業代に関する事件は争点や検討対象が似通っていることが多く、原告となる方の数が増えても比例的に手間が増えるわけではありません。今回ご紹介させて頂いた裁判例の事案のように複数の方で同時にご依頼を頂けると、スケールメリットから一人あたりの着手金の負担を減らすこともできるかと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

2018年10月18日 (木)

面前虐待

あまり聞きなれない言葉ですが、児童相談所で「面前虐待」を理由に保護されるケースが増えていて、良くご相談を受けます。

 面前虐待とは、子どもの面前で父親と母親が大喧嘩をすることが子どもにとって精神的な虐待に当たるので、児童相談所に保護される理由になるというものです。

喧嘩をするほど仲が良いなどというのは昔の話のようです。もともと他人同士なのですから、意見が違うことは仕方がありませんが、相手の人格非難や、無理矢理自分の言うことを通そうとすると、激しい言い争いになり、それを子供の前で見せてしまうと、子どもが恐怖心を抱いたり、自分が悪かったのではないかと罪悪感を持ったり、怒号や、罵り合いがまた起こるのではないかというトラウマに捉われるということが分かって来ています。

たかが夫婦喧嘩だと大人は思うかも知れませんが、子どもにとって、目の前で大声で叫ばれる、母親が殴られる、包丁を片方が持ち出す、どれも大きな恐怖です。大喧嘩の果てに警察を呼んだりすると、警察が児童の面前虐待であるとして児童相談所に通報することになっています。

 そして度重なると児童相談所は、この環境に子供を置いておくことは出来ないと考えて児童施設に保護する手続きを開始します。

 その段階で相談に見える方は虐待という意識がありません。子供を虐めたわけではないのに相談所は訳も言わずに子供を連れて行った、と言います。

 弁護士は、子どもを返してくれない、会わせてもくれない、という不満をお聞きすることになります。確かに説明しない相談所もどうかと思うのですが、この場合、何が問題で、返してくれないのかを、しっかり把握することが大事であり、弁護士であれば、児童相談所に話を聞いてその理由をご説明することが可能です。

 一般的には、児童相談所は、子どもを安心して返せる環境があるかどうかを重視して考えています。夫婦のどちらが悪いとか、夫婦喧嘩の原因は何かというご両親の訴えを一応は聞きますが、それを判断したり裁定したりすることはいたしません。夫婦が今後、子どもの前でひどい喧嘩をしないと安心出来て初めて子どもを返すことを考える方向に向かいます。

 そのことを理解しないと、いつまでも子どもを返して貰えないことになります。こういうケースでは、弁護士が役に立つことがあると感じております。

(弁護士 神山 昌子)

2018年10月 3日 (水)

非弁行為を行うネット削除業者にご注意ください

 近年インターネットの誹謗中傷の被害が増えていますが、その一方でインターネットの投稿・記事の削除請求を代行する業者も存在しています。

 しかしながら、昨年2月に東京地方裁判所は、ネット削除業者の行った「削除代行」は弁護士以外に行うことが法律上禁じられている「非弁行為」に該当することから、依頼者との間の契約は無効となるとした上、ネット削除業者に対して依頼者に代金全額の返還を命ずる判決を下しました(平成29年2月20日東京地裁判決 判例タイムズ1451号237頁。なおこの判決は確定しています)。

 弁護士法72条では、弁護士でないものが報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うこと(非弁行為)を禁止しています。そしてこれに違反した場合には弁護士法77条3号により犯罪行為をしたものとして2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることとなっています。

 法律上非弁行為が禁止されているのは、法律上の専門知識が担保されていない非資格者が法律問題を扱うことにより、不適切な処理がなされ関係者が被害を受ける危険があるとともに、紛争自体さらに複雑化をしてしまうことがあるからです。私が地方に赴任していた際に取り扱った事件でも、相談に来る前に弁護士資格を有さない者が法律紛争を取り扱ったために紛争が深化してしまっていたケースは多々ありました。そのような事態を防ぐため、法律は厳しい罰則をもって非弁行為を禁じているのです。

 上記裁判において被告のネット削除業者は、ネット記事などの削除代行はウェブサイトに対して情報を提供して削除を依頼するという単純かつ画一的な行為であり、専門的知識も不要であるから、法律事件に関する法律事務にはあたらないという主張をしていました。しかし裁判所は、削除依頼は投稿者の権利を行使することによって、ウェブサイト運営者の表現の自由と対立しながらも記事の削除を行い投稿者の権利を守るという効果をもたらすものであるとして、被告のネット削除業者の言い分を全面的に否定しました。

 この判決以降、ネット削除業者も表立って自ら削除を行うということを宣伝することは少なくなってきたように思われますが、中には専門家を紹介するなどといってみたり、専門家の名前を借りて削除を行うなどという業者もいますので注意が必要です。上記裁判の被告のネット削除業者も、依頼者に対して難易度の高いものはパートナーの行政書士において削除申請を行わせるなどといっていたようです(なお行政書士も報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことは禁じられております)。

 非弁行為を行うネット削除業者に対して依頼を行うことは自ら不利益を被る可能性があるばかりではなく、非弁行為という犯罪に加担することにもなりますので絶対にしてはなりません。ネット上の誹謗中傷の被害にあった場合には専門家である弁護士に直接相談して、説明を受けたうえ納得のいくやり方で依頼するのが良いでしょう。 

(弁護士 大窪 和久)

2018年9月 5日 (水)

まとめサイト上の誹謗中傷の投稿への対処について

インターネットに関する相談の中で、近年良く受けているのがいわゆるまとめサイトに誹謗中傷の投稿が掲載されているというものです。

まとめサイトとは、匿名掲示板等やSNSの投稿をまとめて記事にして掲載しているサイトのことをいいます。したがって、例えば誹謗中傷の投稿が匿名掲示板に書かれていった場合にまとめサイトでもその誹謗中傷の投稿が掲載されることになります。

検索エンジンなどで人名を検索した場合、元となった匿名掲示板やSNSの投稿よりもまとめサイトの投稿の方が上位に来ることも良くあります。匿名掲示板やSNSについては読む人も利用者に限られますが、まとめサイトは匿名掲示板やSNSの利用者以外にも読者があるからです。まして有名なまとめサイトに投稿が掲載された場合には読者が爆発的に増えることにもなります。

匿名掲示板やSNSの場合、誹謗中傷の投稿削除要望に対応する窓口が作られており、(曲がりなりにも)削除対応されるためそれで投稿が削除されることもあります。ただまとめサイトの場合、そもそも運営主体がどこなのかサイト上で明記されていないものがほとんどですし、連絡先とされているメールアドレスへ連絡しても無視されることも良くあります。そのため掲載元の匿名掲示板やSNSよりも投稿削除が難しいということになりがちです。

ただ、このような運営主体が不明なまとめサイトであっても、どこかのサーバーを利用します。そこでサーバーを管理する会社を特定した上、そのサーバー管理会社を相手にしてプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)により投稿削除を請求することができます。弁護士が投稿削除の依頼を受けた場合も、サーバー管理会社に対して削除請求を行って投稿を速やかに削除させるのが通例です。

まとめサイト上の投稿削除だけではなく、まとめサイトにより誹謗中傷の投稿が広められたことについての損害賠償責任をとってもらいたいという思いもあるでしょう。この点近時まとめサイトの行ったまとめ投稿に対し、不法行為に基づく損害賠償が認められた裁判例(大阪地裁平成29年11月16日判決 判例時報2372号59頁)の事案が参考になるかと思いますのでご紹介いたします。

この事案では、匿名掲示板の投稿をまとめサイトに掲載したことにより原告の権利を新たに侵害したかどうかが争点となりました。この点被告(まとめサイトの運営)側は、仮にまとめサイト上に問題がある投稿の掲載があったとしても、原告の権利はあくまで掲載元の匿名掲示板の投稿により侵害されたにすぎず、まとめサイト上の掲載が新たに原告の権利を侵害したとはいえないと主張しています。

ただ裁判所は、サイト上の掲載では表題の作成や表記文字の強調等が行われていることや、まとめサイト上に多数のコメントが掲載されており多くの読者がいること等からすると、まとめサイト上の投稿は引用元の匿名掲示板の投稿とは異なる新たな意味合いを有するものであるとして、被告の主張を排斥し、まとめサイト上の掲載が新たに原告の権利を侵害したと認めました。なお、地裁での判決の後本年6月に大阪高裁で本件の控訴審判決が出されていますが、地裁の判断を維持しています。

上記裁判例の考え方に従えば、まとめサイト上の投稿に対してまとめサイトの運営者に対しても損害賠償請求を行うこともありえることになります。

まとめサイト上の誹謗中傷の投稿については運営者がどこの誰だか分からないこともあって泣き寝入りする人も多いですが、弁護士に依頼すれば投稿削除や被害回復へ繋げていくこともできますので、まず弁護士に相談されることをお勧めいたします。

                                    (弁護士 大窪 和久)

2018年8月 9日 (木)

定年後再雇用で不当な労働条件(賃金・給与)を提示された方へ

1.年金の受給開始年齢(65歳 国民年金法26条、厚生年金保険法42条1号)に達するまでの高齢者福祉を代替させるため、法は事業主に対して高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するための措置を講じることを義務付けています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項)。

  具体的には、① 定年の引き上げ、② 継続雇用制度の導入、③ 定年の廃止 のいずれかの措置をとらなければなりません。

  厚生労働省が発表している「平成29年『高年齢者の雇用状況』集計結果」によると、高年齢者雇用確保措置は従業員31人以上規模の99.7%で導入されています。また、雇用確保措置の内訳は、① 定年の引き上げ が17.1%、② 継続雇用制度 が80.3%、③ 定年制の廃止 が2.6% となっています。

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11703000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-Koureishakoyoutaisakuka/0000182225.pdf

資料を参照すれば分かるとおり、多くの企業は、雇用安定措置として、継続雇用制度(いわゆる定年後再雇用の制度)を採用しています。

2.継続雇用制度で雇い入れられるにあたっては、現役時の給与よりもかなり低い給与水準が示されることが珍しくありません。

  この点に関係して、近時、大幅な賃金引下げを伴う定年後再雇用の提案をすることの適否が問題になった判例が公刊物に掲載されました。福岡高裁平29.9.7労経速2347-3九州惣菜事件です。

  この事案では、定年前に33万5500円の月額賃金(時給換算1944円)をもらっていた労働者に対し、時給900円・月収ベースで月額賃金8万6400円になるような給与水準を示すことの適否が争われました。

  裁判所は、

 「再雇用について、極めて不合理であって、労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し、到底受け入れ難いような労働条件を提示する行為は、継続雇用制度の導入の趣旨に違反した違法性を有する」

 「その判断基準を検討するに、継続雇用制度(高年法9条1項2号)は、高年齢者の65歳までの『安定した』雇用を確保するための措置の一つであり、『当該定年の引上げ』(同1号)及び『当該定年の定めの廃止』(同3号)と単純に並置されており、導入にあたっての条件の相違や優先順位は存しないところ、後二者は、65歳未満における定年の問題そのものを解消する措置であり、当然に労働条件の変更を予定ないし含意するものではないこと(すなわち、当該定年の前後における労働条件に継続性・連続性があることが前提ないし原則となっており、仮に、当該定年の前後で、労働者の承諾なく労働条件を変更するためには、別の観点からの合理的な理由が必要となること)からすれば、継続雇用制度についても、これらに準じる程度に、当該定年の前後における労働条件の継続性・連続性が一定程度、確保されることが前提ないし原則となると解するのが相当」である

 「したがって、例外的に、定年退職前のものとの継続性・連続性に欠ける(あるいはそれが乏しい)労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには、同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要であると解する。」

 との規範を示したうえ、

「本件提案の労働条件は、定年退職前の労働条件との継続性・連続性を一定程度確保するものとは到底いえない。したがって、本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには、そのような大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要である。」

「月収ベースの賃金の約75パーセント減少につながるような短時間労働者への転換を正当化する合理的な理由があるとは認められない。」

と会社側による極端な給与水準の引き下げに違法性を認めました。

 結局、この事案で、裁判所は、会社側に対し、原告への100万円の慰謝料の支払を命じました。

3.定年後再雇用に伴って、給与水準が下がったからといって、直ちに違法性が認められるわけではありません。

  しかし、企業経営的な論理で給与水準を下げざるを得ないとしても、それには一定の限界があります。上述の裁判例は、その限界を画する一例としての意味があります。

  会社側が月収ベースの賃金の75パーセントを減少させた背景には、雇用保険法における高年齢雇用継続給付の仕組み(雇用保険法61条以下参照)と平仄を合わせたことが推察されます。高年齢雇用継続給付とは、60歳以後の賃金が60歳時点の75パーセント未満になった場合に給付金が支給される制度です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000172176.pdf

  ここから逆算して、60歳時点との比較において25パーセントの給与水準を保障していれば合理性は否定されないはずだという思惑があったのではないかと推察されます。

  しかし、上記の裁判例は75パーセントも給与水準を減少させるのは、行き過ぎだと判断しました。もちろん、上記裁判例は減少幅を構成するパーセンテージだけで結論を出しているわけではありませんが、それでも同様の発想に基づいて定年後再雇用者の給与水準を設定している企業に対して、法的な責任を追及する足掛かりとなる判例には違いありません。

4.定年後再雇用に伴って極端に低い賃金水準を提示されて経済的なお悩みをお抱えの方・理不尽さを感じている方は、ぜひ一度相談にいらしてください。

また、その際には、似たようなお悩みをお抱えの方に声を掛けることをお勧めします。この種の制度論を争う訴訟は、原告の数に応じて争点が拡散していく類の事件ではないため、集団訴訟として事件化できれば、原告の方一人あたりの弁護士費用の負担を大幅に薄められる可能性があるからです。

(弁護士 師子角 允彬)

2018年8月 7日 (火)

離婚事件 別居10年で夫が妻に払う額は数千万?

1.「“別居”10年で夫が妻に払う額は数千万円」という記事が掲載されていました。

http://news.livedoor.com/article/detail/15094884/

  記事には、

「婚姻費用。俗に「コンピ」とも呼ばれるこの費用こそが、あなたを破産に追い込む悪魔のコスト。これは『離婚が成立するまでは夫婦の関係が継続しているものとして、稼いでいるほうは相手側にそれまでと同等の生活レベルを保証する義務がある』というもの。」

「たとえ妻が不貞を働き慰謝料を払うほうだとしても、離婚をゴネられれば簡単に婚姻費用でモトを取られてしまうのだ。」

「この婚姻費用は正式に離婚が成立するまで払い続けなければならない。妻が不貞を働いて一方的に家を飛び出していったとしても、である。」

「結局、離婚成立までにどれくらいかかるのか。要は裁判所が裁定を下すか、相手が納得して離婚届に判子を押せばいいわけだ。フルに戦って高裁(2審)まで争えば、ゴネてる側に離婚の原因があったとしても5年、子どもがいれば10年くらいは軽くかかってしまう。」

「これを早めるには5~10年分の婚姻費用(+慰謝料・財産分与)を提示して、和解に持ち込むしかない。星の数ほどもある判例から落としどころは見えているので、裁判官も弁護士も双方をそこに誘導しようとする。」

などと書かれています。

 著者は理論物理学研究者を標榜する方のようです。実務法学とは大分畑違いであるような気がしますが、不正確と思われる部分について真に受ける人がいないよう、情報発信をした方が良いと思い、本記事を執筆することにしました。

2.先ず、婚姻費用で破産したというのは聞いたことがありません。普通に生活していれば、婚姻費用で破産することは理論上も有り得ません。

  婚姻費用の算定には「基礎収入」という概念が使われるからです。

  「基礎収入」とは、「税込収入から公租公課、「職業費」及び「特別経費」を控除した金額」とされています(三代川俊一郎ほか『簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-』〔判例タイムズ〕1111-285参照)。職業費は「給与所得者として就労するために必要な出費(被服費、交通費、交際費等)」(前掲文献)のことです。「特別経費」は「家計費の中でも弾力性、伸縮性に乏しく、自己の意思で変更することが容易でなく、生活様式を相当変更させなければその額を変えることができないようなもの」とされていて、具体的には「住居費や医療費などがこれに該当する」(前掲文献)と理解されています。

  税金などの公租公課、被服費・交通費・交際費等、家賃や医療費などの自分自身にかかってくる生活費を控除した収入を割り付けて行くのが婚姻費用に関する基本的な考え方です。生活費が別枠で留保されているわけですから、破産するほど相手方に生活費を絞りとられることは、家裁で採用されている計算式的にありえません。法は不可能を強いるものではありません、身の丈に合わないようなお金の使い方をしない限り、婚姻費用のせいで破産することはありません。

3.不貞を働いた妻がゴネて簡単に婚姻費用で元を取るだとか、不貞を働いて一方的に家を飛び出した妻に離婚が成立するまで婚姻費用を払わなければならないだとかいった話も、私にはあまり馴染みのない議論です。

このブログで以前にも指摘したことがありますが、専ら分担請求権者である妻側に有責性がある場合、婚姻費用の分担請求は制限されたり否定されたりしています。例えば、東京高決昭58.12.16家月37-3-69は、夫婦の一方が他方の意思に反して別居生活を強行している場合について、子どもの養育費は別として、自身の生活費の請求は認められないとしました。また、市販されている書籍でも、「不貞関係にあるとみられてもやむを得ない」申立人妻からの婚姻費用分担請求について、子どもの養育費相当額を超える請求を認めなかった例は、普通に掲載されています(森公任ほか編著『簡易算定表だけでは解決できない 養育費・婚姻費用算定事例集』〔新日本法規出版,初版,平27〕の243頁以下等)。

4.さらに言えば、離婚事件では、5年も10年も粘れるものではありません。

前提として、弁護士には訴訟遅延を図ることが禁止されています。職務基本規程という日弁連の会規で「弁護士は、怠慢により、又は不当な目的のため、裁判手続を遅延させてはならない。」とされています(職務基本規程76条)。意図的に引き延ばしているのかは素人の方には分からなくても、相手方の代理人弁護士には分かります。無理な引き延ばしを図れば、相手方から懲戒請求されかねません。また、裁判官から「テンポ良く仕事のできないダメな代理人」という烙印を押されても手続上何も良いことはありません。したがって、わざと手続を遅延させるというのは、弁護士にとっては、例え顧客から要請されたとしても、やりたくないことの一つです。

更に言えば、平成15年から「裁判の迅速化に関する法律」という法律が制定され、これに基づいて裁判所は審理期間の短縮のために種々の努力をしてきています。結果、審理期間は一昔前よりも大分短縮されています。

5年も粘ることが無理なことは統計上からも伺えます。

離婚事件は、調停(不成立)→訴訟(第一審)→訴訟(控訴審)といったように手続が流れて行きます。

  現在閲覧できる最新の司法統計である「家事 平成28年度 第16表 婚姻関係事件数-終局区分別審理期間及び実施期日回数別-全家庭裁判所」によると調停不成立で終わった1万1185件の事件のうち、2年を超える審理期間がかかったものは23件しかありません。

  また「民事・行政 平成28年度 第40表 控訴審通常訴訟既済事件のうち控訴提起により受理した事件数-事件の種類及び審理期間(原審受理から終局まで)別-全高等裁判所」によると、一審受理から終局までにかかった期間という括りでも、人事を目的とする訴え1256件のうち、審理期間が5年を超えるものは8件だけです。

 http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

  私自身の実務感覚・経験からすると、婚姻関係の破綻に原因のある相手にゴネられているだけのケースの場合、概ねの事案では1~2年程度で控訴審での判決まで行きついているのではないかと思います。ゴネているだけの場合、話し合いによる解決の見込みがないものとして、早々に調停に見切りを付けて不成立で終わらせ、訴訟提起すれば、5年も10年もかかるということは先ずありません。勿論、相手に非があることが明白なのに当方から5~10年分の婚姻費用を解決金として提示したこともありません。

5.家事調停や人事訴訟の代理業務が法的に許されていない士業の方や、そもそも法律に関係する資格を有していないにも関わらず専門家を自称する方の中には、相談者に過度に厳しい見通しを告げて、裁判外で相談者に不利な合意を結ぶことを後押ししているように思われる方が散見されます。相手方に不貞行為がある場合のように、専ら相手方に有責性があるにもかかわらず、当方から5年~10年分の婚費を支払うような形での離婚を打診すれば、相手方にとっては渡りに船で、協議離婚が成立するのは当たり前です。これを自称専門家のアドバイスのお陰と有難がるのは誤りです。

  一般の方には専門家を自ら標榜する方の発言の信憑性を評価するのは難しいと思います。本ブログで信憑性に疑義のあるネット記事(最近、特に、離婚に関するものが目につくように思います)に対する論評を加えているのもそのためです。個人的には離婚など当事者間に利害対立のある事件に関することは、紛争処理の実務経験のある弁護士に相談することをお勧めします。

(弁護士 師子角 允彬)

2018年7月31日 (火)

ご近所トラブルに遭われた方へ

最近、ご近所トラブルの話を多く聞きます。

 

ペットの鳴き声、テレビ・ラジオなどの騒音、境界線のはみだし、明らかな嫌がらせ行為など、ご近所の方で困ったご経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。

 

一度ご近所トラブルを抱えてしまうと、長期間にわたりかなりのストレスを抱えることになります。

特にそれが持ち家であったり、引っ越してきたばかりですぐに転居することを考えていない場合には、より辛い状況が長く続いてしまうのではないかと思います。

 

当事者間の話し合いで解決できれば大きな問題にはなりません。

しかし、交渉の仕方がまずければ、感情的な対立が大きくなり、もはや話合いのムードではなくなります。

 

こういうとき、誰に相談したらよいのでしょうか。

明らかに身の危険を感じるのであれば、まずは警察に行かれた方がよいと思います。

しかし、危険までは感じない場合、あるいは警察が刑事事件として扱ってくれない場合もあります。

 

そのような場合には、弁護士に相談してみることをお勧めします。

 

数年前、興味深い裁判例がでました。大阪地裁平成27年12月11日判決です。

これは、飼い犬の鳴き声により近隣住民に財産的、精神的損害を与えたとして、飼主に対する損害賠償請求が認容された事例です。

 

この事件では、

・飼主の敷地内で放し飼いにされていた犬は、10年以上にわたり昼夜を問わず吠えることがあった。

・その犬は他の犬と比較すると鳴き声が大きい方である。

・飼主の家から原告の家までは約4m幅の道路を挟んで直線距離で約32.5mである。

・飼主は、原告から犬の鳴き声に対する苦情を言われたり、調停の申立てをされたりした後も、犬の鳴き声を低減させるための適切な措置を執らなかった。

といった事情がありました。

 

そのような中、この事件の原告は、飼主に対し、睡眠障害を伴う神経症を発症するなどしたとして、民法718条1項または同法709条による損害賠償請求権に基づき、治療費及び慰謝料等の支払いを求め、裁判所は請求を一部認容する判断を示しました。

 

今回紹介した裁判例のほかにも、裁判によって決着をつけた近隣トラブルも少なくありません。

 

 

抱え込んでストレスを溜めてしまう前に、身近な弁護士に相談してみてください。

もちろん、当事務所に相談してくださることも大歓迎です。

一度ご相談にいらしてください。



(弁護士 馬場大祐)

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