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2021年7月 2日 (金)

あるオーバーステイ事件(1)

国選の刑事事件で初めて外国人事件を受任した。オーバーステイ、偽造在留カード行使の事案だった。

被告人は、外国人技能実習生として来日したが、職場で何度も暴力を受け、耐えきれず逃走した。給料も低額だった。在留延長の手続もできぬままオーバーステイとなった。インターネットで仕事を探し、ネット上で知り合った人から言われるまま偽造在留カードを買い受けた。その後警察に職務質問をされた際、偽造在留カードを示し、逮捕された。

外国人技能実習制度は奴隷制度だと揶揄されることもある。技能実習のため、技能実習生は、本国の送出機関に手数料を支払う。日本円で約60万円の費用を借金してまで用立てる。彼らは、家族に仕送りをしたい、と夢や希望に溢れて来日する。しかし実情は厳しい。多くの技能実習性は最低賃金でこき使われる。時には規定労働時間を超えた深夜労働、時間外労働に従事させられる。月々の給料は手取りにして僅か10万円前後である。適切な残業代等が支払われないケースも多い。彼らは給料のほとんどを家族への仕送り、借金返済に費やす。

受け入れ企業の質も低い。就労は団体管理型(管理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で実習をする態様)が大半を占める。受け入れ先の業種は製造業、建設業、一部の農林水産業等に限定される。技能実習制度発足以降、時間外手当等の不払い、最低賃金法違反、賃金の不当控除等の事案が多く見られるようになった。それにとどまらず暴言、暴力、セクハラ、パワハラ等の人権侵害、在留カードの取り上げ、強制貯金、強制帰国といった人権侵害も問題となってきた。入管法の改正等により管理責任が強化されるなどの措置が取られてきたものの状況は改善していない。酷使、暴力、賃金の不払いなどはもとより、与えられる仕事も誰でもできる肉体労働等であり、技術を習得させることなど予定されていない。外国人技能実習制度は表向き外国人の技能の習得、これを通じた日本の技術の海外移転を目的とすると謳っているが、実体は人手不足を補う安価な労働力確保のための制度として利用されている。

あまりの過酷な労働環境、給料の低さから外国人技能実習生の失踪は後を絶たない。毎年5000~9000人の実習生が失踪している。組合等に相談しても実習先の変更はできない。ひとたび失踪してしまうと、入国管理局に出頭しても国に強制送還され、借金だけが残る。そのため失踪後、借金を返すまでは、と不法就労に従事したり、オーバーステイとなり、逮捕される技能実習生も多い。

 裁判では彼が職場で暴力を受け逃走に追い込まれたことを、当時相談を受けていた友人の証言等から立証した。しかし、裁判所は、事情はどうあれ日本の法律を軽視し、罪を犯したのであり悪質であると判示した。彼は審理中、法廷で終始震えていた。最終陳述で何度も頭を下げ、ごめんなさい、私が全部悪かったです、許してください、と拙い日本語で謝った。

 日本が作った制度で追い詰められたのではないか、と思った。このような制度が恥ずかしく申し訳なかった。

(北浦結花)

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