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2021年2月16日 (火)

企業のクレーム対応(1)

 昔、欠陥自動車の裁判を何件も手掛けた。運輸省(当時)のメーカーに対するチェックが今ほど厳しくなかったこともあり、自動車の欠陥が原因で起きた事故でも、ユーザーの過失とされることが少なくなかった。

 しかし欠陥がある場合、大事故に至らぬまでも小さな事故や不具合はしばしば生じるものである。車の不具合を感じたユーザーは当然ディーラーに不調を告げる。そしてディーラーはその情報をメーカーに上げる。

 ここで大切なのは、そうした顧客からの苦情やクレームにどう対処するか、である。

実際、苦情やクレームは玉石混交だ。極端な話、難癖や、時には強請かと思われるようなクレームもある。正当なクレームであっても極めて不快な伝え方をしてくる顧客もいる。そうしたクレームばかりを目にしていると、何とか黙らせたいという方向にばかり目が向いてしまうこともあるだろう。しかしそれでは大事なところを誤ってしまうことになる。

 

かつて、あるメーカーの高級乗用車が走行中に走行不能になってしまうという欠陥の相談を受けたことがあった。ディーラーに見せても異常はないとされ、オーナーはクレーマー扱いされた。オーナーはやむなくディーラーを相手に訴訟を提起した。当該車両に対する構造や設計などの情報量は圧倒的にディーラーが勝る。ディーラーは当該メーカーの工場の品質管理がいかに優れているかを滔々と述べ立て、欠陥はないと断言した。原告の立証は困難を極めた。

そこで、代理人だった私は賭けに出た。欠陥現象は一定の条件下で生じていた。ならばその条件を整えて欠陥現象を再現し、それを検証の手続によって裁判官に見てもらおうと考えたのだ。

検証は、ある夏の暑い日に実施された。運転は私が行い、助手席に原告、後部座席には裁判官と被告代理人に同乗してもらった。そして裁判所の周辺道路を1周することにした。

結果は、半周したあたりで欠陥現象が生じた。エアコンの吹き出し口から水が噴き出し、エンジンが停止したのだ。惰性で動く車を道路端に寄せ、検証を終えた。

この事件の判決は、水戸地方裁判所日立支部で平成9年1月27日に言い渡された。判例データベースには、「自動車の瑕疵が認められ、売買契約の解除が肯定された事例」として紹介されている。

 

クレームに対して真摯に向き合うことの重要性を痛感させる判決だったと思う。因みにこのメーカーは、当時、消費者の声に耳を傾ける姿勢が他のメーカーに比べて著しく欠けていた。その後経営不振に陥り、外国の自動車メーカーの社長をトップに迎えざるを得なくなったのは、そうした姿勢で客にそっぽを向かれたからだと思っている。(櫻井)

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