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2021年2月

2021年2月28日 (日)

ダウンロードの違法化について

皆さんは違法にアップロードされた、漫画、動画、映像、音楽等を誤ってダウンロードしたことはありませんか。知らず知らずのうちに、違法な行為をしてしまっている人も少なくないかもしれません。今回は身近な問題であるダウンロードの違法化について取り上げたいと思います。

令和3年1月1日に改正著作権法が施行され、違法にアップロードされた著作物全般のダウンロードが違法とされました。著作権法は、一般に私的に利用する目的でのダウンロードを適法としていますが、違法にアップロードされた音楽や、映像のダウンロードについては、私的使用を目的とする場合であっても違法と定めています(3013号)。今回の改正では、音楽、映像だけでなく違法にアップロードされた著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)に規制対象が拡大されました。(30条1項4号)

但し、私的利用の場合の禁止の対象は、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみとされました。違法にアップロードされたと知らないことに重大な過失があったとしても、禁止の対象にはなりません。(302項)

漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」や、②二次創作・パロディ③「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードについても規制の対象外とされています。

刑事罰については、違法であることに加えて、正規版が有償で提供されていること、反復、継続してダウンロードを行うことが要件とされました。(119条第3項第2号、第5項等)法定刑は2年以下の懲役・200万円以下の罰金です。すべて親告罪であり、権利者による告訴が必要です。

先日、違法に漫画のアップロードを行っていたサイトの運営者が逮捕されたのは記憶に新しいと思います。情報化社会が進み、誰もがインターネットで簡単に著作物をアップロード、ダウンロードできるようになりました。悪質な違法アップロード、違法ダウンロードは後を絶ちません。これらの違法行為により、著作権者は、大きな被害を被っています。著作権法の改正は、こうした社会状況を背景に、著作者の権利を守るため、違法の対象、刑事罰を科す範囲を拡大する方向でされてきました。

しかし過剰な規制は人々の自由な情報収集、表現活動を委縮させることにもなります。

twitter、Instagram等のSNSでアニメ、漫画の画像や芸能人の写真をアップしたり、ダウンロードしている人も多いでしょう。権利者が承諾している場合には違法となりませんが、そうでなければ違法となる場合もあります。実務上、これらの行為が問題とされることはしばしば起こりますが、規制の存在は人々の表現活動を委縮させます。また、作品が伝えられることによって、作品の知名度や、人気が高まっていく面もあり、規制に消極的な意見もあります。

最近、スタジオジブリが、公式サイトで作品の場面の画像を無料ダウンロードできるように公開し、「常識の範囲内で」使用することを許可しました。反響はとても大きかったようです。

元の画像を無断で使用して利益を得ることは、権利者を害することになります。しかし「常識の範囲内で」、仲間内で楽しむために画像を使用することについてまで規制対象とするのは行きすぎのようにも思います。

法律により規制対象範囲を拡大することが抜本的な解決には繋がるかは疑問です。何より利用者一人一人に、著作権者を害するような行為には加担しない、という意識を持つことが求められています。

 (北浦)

2021年2月25日 (木)

健康第一

 

 

 つい最近のことです。椅子に座っていたら、腰に激痛が走りました。何かが神経に触れたような強烈な痛みでした。その翌日、父に運転してもらい、車で病院に行くと、医師に1週間は湿布を貼って動かないでくださいと言われました。どうやら筋肉を傷めたようでした。

 健康や健康を保つための休息は大切です。これは当たり前のことです。一方で、「あなたは健康に注意して生活し、意識的に休息を取っていますか」と聞かれると、黙り込んでしまう方が多いのではないでしょうか。私は黙り込みます。

 私は、人に「なぜ疲れているのに休まないのか」と聞かれたら、「仕事があるから」「あの人の方が頑張っているから」「まだ若い(と思う)から」休まないと答えると思います。

 しかし、体力、健康状態、疲れの感じ方は人それぞれです。人ではなく、自分の体調と相談し、休息をとることが大切です。私も頭ではわかっているのです。

 それでも、忙しいとなかなか休めません。どうすればいいのでしょうか。私は休めるときにしっかり休むしかないと思っています。忙しい時期が続いたら、そのあと少しゆっくりする時期を設けましょう。

 多少の無理なら誰でもできますが、無理を重ねるとどこかで必ず限界が来ます。その段階では健康にも大きな影響が出ているでしょう。健康第一です。適度に休みましょう。腰痛で1週間外出できなかった私は強くそう思います。

 皆様も健康第一で、適度に休息をとってください。

(弁護士 小林 竜也)

 

 

 

2021年2月16日 (火)

企業のクレーム対応(1)

 昔、欠陥自動車の裁判を何件も手掛けた。運輸省(当時)のメーカーに対するチェックが今ほど厳しくなかったこともあり、自動車の欠陥が原因で起きた事故でも、ユーザーの過失とされることが少なくなかった。

 しかし欠陥がある場合、大事故に至らぬまでも小さな事故や不具合はしばしば生じるものである。車の不具合を感じたユーザーは当然ディーラーに不調を告げる。そしてディーラーはその情報をメーカーに上げる。

 ここで大切なのは、そうした顧客からの苦情やクレームにどう対処するか、である。

実際、苦情やクレームは玉石混交だ。極端な話、難癖や、時には強請かと思われるようなクレームもある。正当なクレームであっても極めて不快な伝え方をしてくる顧客もいる。そうしたクレームばかりを目にしていると、何とか黙らせたいという方向にばかり目が向いてしまうこともあるだろう。しかしそれでは大事なところを誤ってしまうことになる。

 

かつて、あるメーカーの高級乗用車が走行中に走行不能になってしまうという欠陥の相談を受けたことがあった。ディーラーに見せても異常はないとされ、オーナーはクレーマー扱いされた。オーナーはやむなくディーラーを相手に訴訟を提起した。当該車両に対する構造や設計などの情報量は圧倒的にディーラーが勝る。ディーラーは当該メーカーの工場の品質管理がいかに優れているかを滔々と述べ立て、欠陥はないと断言した。原告の立証は困難を極めた。

そこで、代理人だった私は賭けに出た。欠陥現象は一定の条件下で生じていた。ならばその条件を整えて欠陥現象を再現し、それを検証の手続によって裁判官に見てもらおうと考えたのだ。

検証は、ある夏の暑い日に実施された。運転は私が行い、助手席に原告、後部座席には裁判官と被告代理人に同乗してもらった。そして裁判所の周辺道路を1周することにした。

結果は、半周したあたりで欠陥現象が生じた。エアコンの吹き出し口から水が噴き出し、エンジンが停止したのだ。惰性で動く車を道路端に寄せ、検証を終えた。

この事件の判決は、水戸地方裁判所日立支部で平成9年1月27日に言い渡された。判例データベースには、「自動車の瑕疵が認められ、売買契約の解除が肯定された事例」として紹介されている。

 

クレームに対して真摯に向き合うことの重要性を痛感させる判決だったと思う。因みにこのメーカーは、当時、消費者の声に耳を傾ける姿勢が他のメーカーに比べて著しく欠けていた。その後経営不振に陥り、外国の自動車メーカーの社長をトップに迎えざるを得なくなったのは、そうした姿勢で客にそっぽを向かれたからだと思っている。(櫻井)

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