面会妨害
去る11月13日、東京地検特捜部が被疑者を任意に取調べ中、面会に訪れた弁護士の来訪を被疑者に取り次がず、面会を妨害した事件の国家賠償請求訴訟の判決がありました。その弁護士は外ならぬ私で、裁判所は国に慰謝料10万円の支払を命じました。
私が国賠にまで踏み切ったのは、誰よりも刑事訴訟法を熟知しているはずの特捜検事が、「弁護士には任意取調べ中の被疑者に面会する権利はなく、検察官はその来訪を取り次ぐ義務もない。」と言い放ったからです。
刑事訴訟法39条1項は、「身体拘束を受けている」被疑者被告人の接見交通権を定めています。検察官の理屈は、「身体拘束を受けていないから」接見交通権の保障はないのだというものでした。
取調べに応じていたAさんは、私の留守中、事務所に電話をかけてきて、桜丘法律事務所の誰でもいいので助言を受けたいと言っていました。ですから私の来訪を知れば必ず会いたいと希望したはずです。そうした事情を説明しても妨害は続きました。
被疑者と弁護人の接見交通権が重要な権利であることはいくつもの判例で確認されています。それを真っ向から否定するような言動をされては弁護人として引っ込むわけには行きません。検察官との議論は平行線で、時間稼ぎをされるだけだと思ったので、司法の場で明らかにしましょうと言って会話を終えました。
コロナが災いして期日の間隔があいてしまったことは残念でしたが、迅速な裁判を求め、2回の期日で弁論を終結し、判決を得ました。
公権力が理不尽な権利侵害を、それも目の前で行うとき、見過ごさないのが弁護士の矜持だと思います。
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