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2020年7月

2020年7月30日 (木)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について その3

 昨今、新型コロナウイルスのクラスターになることを恐れて、高齢者宅への訪問が減少しています。もともと、単身独居世帯が増えており、家族も帰省を控えるなどで行き来が減っているところに、ヘルパーも訪問回数を減らすなどしているところがあります。

 さて、これで喜ぶのは、高齢者宅を訪問して悪質商法を持ち掛けようとする詐欺師です。

 最近流行の悪質商法に、高齢者に対する不動産の押し買いというものがあります。不動産の押し買い自体は珍しいものではありません。以前から、高齢者宅を訪れて、自宅マンション等の売却を勧めるというものはありました。もとはひとつの詐欺師集団が、何度も業者名を変えて自宅を訪問し、相場より安価な値段を提示してこれが相場と思わせ、最終的に相場より恐ろしく安い値段で自宅を買い取ってしまうのです。高齢者に対しては、そろそろ終の棲家(施設)を探したほうがいいと言い、施設を購入するには先立つものがいるだろう、施設に入れば自宅はもういらなくなるからこれを売って元手にしよう等と親切ごかしに持ち掛けるのです。あるいは、転居先が見つかるまではリースで住めるから、と言って売らせることもあるようです。

 コロナによってヘルパーらの目が行き届かなくなったのをいいことに、最近このような押し買い商法が複数散見されています。不動産を購入する側であればクーリングオフ制度もあるのですが、売却する側はクーリングオフの対象になっておらず、手付倍返しや違約金による解決しか受け付けない業者もあります。

 判断能力の衰えた高齢者から自宅を奪うような悪質商法が許されていいはずはありません。安易に手付倍返しや違約金による解決を図る前に、弁護士にぜひ相談をするようにしてください。

石丸 文佳

2020年7月27日 (月)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について その2

  前回、本ブログでは、持続化給付金詐欺の話題を掲載しました。サラリーマンなど本来は受給資格のない人に給付金の受給を持ち掛け、手数料を取るというものです。今回は、このような詐欺について、もう少し詳しい話をしたいと思います。

 持続化給付金は、個人の自営業者で一定の収入減少があれば、最大100万円を受け取れます。詐欺師は、説明会場を設けてカモを呼び、架空の確定申告書と税理士を用意して、あたかもカモが自営業者であるかのように見せかけます。そして、カモの口座に100万円を振り込ませる手続を代行するのです。カモは、途中で止めたいと思っても、書類の全てを詐欺師が握っているので、申請を取り下げることもできません。そして、振り込まれた100万円のうち、実に8割以上を手数料と称して支払わせます。支払方法は、直接現金を持参させる方法をとります。昨今の特殊詐欺同様、口座への送金ではその口座が凍結されるかもしれないからです。

 書類に残るのは全てカモの名前と口座情報であり、詐欺師は全く表にあらわれません。カモの手元に残っているお金は20万円もないのですが、詐欺を行ったということで捕まるのはカモだけで、返済義務も100万円全額を負うことになります。

 更に、学生などの間では、これは一種のマルチとして流行っているそうです。友人を紹介すればキャッシュバックがもらえるので、生活が苦しい若者は、自らが詐欺の片棒を担ぐだけでなく、友人も詐欺に引きこむことになるのです。

 このような詐欺には加担しない、勧誘しないのが一番ですが、もしも詐欺師に依頼してしまった場合、まずは決して手数料を支払わないでください。手元に1020万円程度しか残っていなくても、100万円の返還義務はあなたにかかってくるからです。公序良俗に反する手数料の契約は無効ですから、詐欺師に手数料を支払う義務はあなたにはありません。また、現在、受け取ってしまった100万円を返還する窓口はないのですが、返せないからと言って使ってはいけません。経済産業省が受け取りを拒否した場合は、供託という方法もあります。100万円が振り込まれてしまった時点で詐欺は既遂になってしまいますが、経済犯は利益を全額返したかどうかで大きく量刑に差が出ます。既に先日、19歳の少年が持続化給付金詐欺で逮捕されていますから、捕まらないだろうと高をくくってはいけません。

石丸 文佳

2020年7月25日 (土)

新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法について

 新型コロナウイルス感染症に伴い、収入が減少してしまったという方は多いですが、そのような弱みにつけ込んだ悪質商法が後を絶ちません。

 国民生活センターによれば、受給資格のない人に持続化給付金の不正受給を持ちかける勧誘が多数報告されているとのことです。持続化給付金の受給申請の為には自らが事業を行なっていることが必要ですが、「サラリーマンでも無職でも100万円の持続化給付金が受け取れる」「事業をしていることにして、申請を代わりに行なう会社にお願いすれば持続化給付金がもらえる」などといって、本来であれば受給資格の無い人に勧誘をかけます。その上で、勧誘に乗ってしまった人から受給した持続化給付金の何割かを手数料として受け取るというものです。

 このように、受給資格が無いにも関わらずあたかも事業者を装い受給資格があると偽って持続化給付金の給付申請を行なうことは詐欺罪に該当しますし、誘いを持ちかけた方が逃れてしまい、申請者のみが犯罪の責任を問われるということは十分あり得ます。まったく割に合わない行為ですので絶対に誘いに乗らないようにしてください。

 また、東京都消費生活総合センターによれば、「新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減ったため、副業や内職を探していたらトラブルにあった」という相談が増加しているとのことです。パターンとしては、動画サイトの広告やランキングサイト等をみて事業者のサイトでSNS登録をするよう促され、やりとりをする中で高額な情報商材を売りつけられるといったもののようです。以前から情報商材として、最初は安い1万円から数千円程度のものを売り、興味を持った人に数十万円以上の価格のもの(内容は宣伝とはかけ離れた物であることが多いです)をカードを使わせるなどして売りつけるというトラブルはありますが、新型コロナウイルスで収入が減少したところを狙われているようです。情報商材で「簡単に稼げる・儲かる」と言われて実際に儲かるものは皆無といっても過言ではありません。通常であればそのような話には引っかからないところ、現在のような状況ではつい引っかかってしまうということもあるでしょう。

 紹介してきた悪質商法については最初から関わらないのが一番ですが、取引に応じてしまった様な場合については、少しでも被害を少なくするために早めに消費者センターや法律事務所に相談して、問題を解決するようにすることを強くお勧めいたします。

弁護士 大窪 和久

2020年7月20日 (月)

自筆証書遺言書保管制度が始まりました

7月10日から、法務局で手書きの遺言書(自筆証書遺言書)を保管する新たなサービスが始まりました。預ける際に法務局へ支払う手数料は1件あたり3900円です。費用面からしても利用しやすいものとなっています。

これまでは、自筆証書遺言書は自宅内で保管することが一般的でした。そのため、せっかく遺言書を作っても、相続人が発見できなかったり、発見されたとしても遺言書の改ざんの有無を巡って相続人間で争いになることもありました。そこで、相続手続きをスムーズに進めていくことができるように、法務局で自筆証書遺言書を保管するサービスが始まりました。

自筆証書遺言書の保管は、遺言を作成した本人だけが申請することができます。申請先は、住所や本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。そして、相続人は、被相続人(遺言書を残した人)が死亡した後には、法務局に遺言の有無を照会することができます。このように、自筆証書遺言書を作った後はそれを法務局に預けておけば、亡くなった後も相続人に発見してもらいやすくなります。また、遺言書の改ざんを巡って相続人間で争いになることもありません。

ただ、このサービスは、法務局が、預かった遺言書の内容に問題がないことを保証するものではありません。また、法務局は遺言書の内容に関する事柄については一切相談に応じられません。たとえば、遺留分といって、一定範囲の相続人には、遺産から最低限受け取れる権利というものがあります。特定の相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言であっても、遺言の形式面に問題がなければ、申請があれば法務局は遺言書をそのまま預かることになります。そのため、遺言書の内容面に問題がある場合は、このサービスを利用したとしても、結局、相続人間の争いを招いてしまいます。

そのため、法務局のサービスを利用する場合でも、遺言書の内容に問題がないかどうか、弁護士に相談されることをお勧めします。

(弁護士 小堀 惇)

2020年7月 3日 (金)

新型コロナウイルス感染症に便乗した詐欺について

 新型コロナウイルスに便乗した詐欺事件が増加しています。朝日新聞の報道によれば、新型コロナウイルスに便乗した詐欺事件(未遂を含む)の被害は今年の3月上旬から517日までの間に、16都道府県で39件確認されており、被害額は約3550万円にのぼっているとのことです。

 典型的な手口としては、特定定額給付金の手続の代行を行なうのでATMに手数料の振り込みを求めるであるとか、申請手続のために口座番号・暗証番号等個人情報を聞き出すなどです。そもそも特定定額給付金の申請は市町村から各世帯へ郵便で送付される申請書に記入し申請するか、「マイナポータル」によるオンライン申請のいずれかしかありません。また、役所の担当者が申請手続のために手数料の振り込みを求めるであるとか、個人情報を聞き出すということは絶対にありません。

 上記のような電話やメールなどが来た場合、まず間違いなく詐欺ですので警察や消費生活センター等に相談することをお勧めいたします。また、仮に実際に手数料の振り込みを行なってしまったりした場合でも、早期の段階であれば振り込め詐欺救済法による銀行口座凍結等により、被害回復ができる場合もありますので、なるべく早めに相談にいくことをお勧めいたします。

 また、給付金等の支給を受けられると騙った偽サイトにも注意が必要です。既に行政機関を騙った偽サイトが多数存在しているようです。また、サイトだけではなく偽の申請アプリ等が出現する可能性も否定できません。これらのサイト等はクレジットカード情報等を取得した上でそれを盗用するためにつくられているものです。給付金の支給のためにクレジットカード情報を入力する必要はありませんので、絶対に入力しないで下さい。仮に入力してしまった場合でも、早期であればカード会社によるチャージバックの手続などにより被害を防げる場合もありますので、なるべく早めに警察や消費生活センター等に相談することをお勧めいたします。

 上記の手口以外にも、新型コロナウイルスに便乗した詐欺の発生することが懸念されています。不審な電話やメールがきたり、不審な人物が自宅に訪問してくるような場合には、その場で何かを決めるのではなく、家族、知人、あるいは消費生活センター等に相談しましょう。

弁護士 大窪和久

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