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2019年1月 8日 (火)

5年無期転換ルールは人手不足のご時世に5年で人を辞めさせざるを得ないおかしな悪法か?(続)

1.過日、無期転換ルールに対して「人手不足のご時世に5年で人を辞めさせざるを得ないおかしな悪法」として揶揄する見解を紹介させて頂きました。

https://www.mag2.com/p/news/375000)。

 同記事の不適切だと思われる点は既にブログに掲載させて頂いたとおりです

http://sakuragaokadayori.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/post-6d73.html)。

 本日は記事の中で引用されていた、

「女性が20年働いた職場を雇止めされたケースでした。大手企業だから早くに対応も始めていて、法改正時の今から5年前、2013年の契約更新時の新しい契約書に『4月以降の通算契約期間は5年を超えないものとする』と今までなかった文言を追加したそうです。会社側は、当然のように『法律が変わって、5年を超えて更新できなくなった』と説明をして、『ここでやめるか、ハンコを押すかの二択だ』と言ったらしいです」

との事例への対応についてお話しします。

2.このような場合、基本的には判を押さないという対応が正解だと思います。

  20年以上も有期雇用契約を反復していれば、雇い止めにあたり、客観的に合理的な理由や社会通念上の必要性が認められなければならないことは明らかだからです。

  会社との関係をどのように調整するのかは問題になりますが、不更新条項付きの雇用契約書に署名・押印しなかったとしても、法的には同一の労働条件で契約が更新された扱いとなる可能性が高いと考えられます。

  更新回数・勤続年数が少なく、労働契約法19条所定の雇止めを制限するルールが適用されるかが読みづらい時には、目先の雇用の確保をとるかどうかで判断に悩むことはあります。しかし、本件はそのようなケースではありません。

3.では、記事で、

「有期雇用の女性は、『おかしい』と思いながら、5年経てば、社会情勢や経営環境もまた変わって、残ることもできるかもしれない…とハンコを押したそうです」

 と続けられているように、判を押してしまったらどうでしょうか。

  この場合、次期で雇止めを争うことは不可能になるのでしょうか。

  結論から申し上げると、そのようなことはありません。

  確かに、不更新条項付きの契約書に署名・押印してしまったことは、雇止めの効力を争うにあたって不利な材料になることは否定できません。

  しかし、二者択一を迫られた時の労働者の立場は、裁判所も理解していて、不更新条項付きで有期労働契約を更新してしまったら直ちに雇止めが有効になるといった硬直的な判断はしていません。

  例えば、東京地決平22.7.30労判1014-83は、「不更新条項を保留して、本件労働契約の更新はできないか」と質問したところ「そのような契約はできない」と断られた為、不更新条項付きの契約書に署名・押印したという事案において、「雇用調整を行うことの合理性を窺わせる事情が想定できない」と述べたうえ「本件不更新条項を付した労働契約時の事情を考慮しても、本件雇止めの正当性を認めることはできない。」と判示しています。

  裁判官による著作の中にも、

 「労働者としては署名を拒否して直ちに契約を終了させるか、とりあえず署名して次期の期間満了時に契約を終了させるかの二者択一を迫られるため、労働者の自由意思に基づいた意思表示といえるか疑問があり、不更新の合意を含む契約書に署名押印したことをもって、それまでに生じた更新の合理的期待を放棄する意思表示又は消滅をさせる意思表示をしたといえるかについて、慎重な検討を要する」

 「不更新条項による合理的期待の減殺を認めつつも、なお雇用継続にたいする 合理的期待が認められる場合があると考えらえられる」

 「更新時に不更新条項が付された事実は、期間満了時の合理的期待の有無を判断するための重要な要素とはいえるが、あくまで一要素にとどまる」

 としたものがあります(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務』〔青林書院,初版,平29〕294-295頁参照)。

  20年以上に渡って雇用が継続している中、法の趣旨について誤った説明を受け、やむなく不更新条項付きの契約書に署名・押印してしまったという場合であれば、救済される可能性も決してなくはありません。

  不更新条項付きの契約書に署名・押印してしまったとしても、何とかなるケースはあります。釈然としない方は、諦めることなく、一度弁護士に法律相談されることをお勧めします。

(弁護士 師子角 允彬)

 

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