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2018年12月26日 (水)

マタハラによる慰謝料

1.男女雇用機会均等法は、妊娠・出産を理由とする女性労働者に対する解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています(男女雇用機会均等法9条3項、同施行規則2条の2)。また、育児・介護休業法10条は、労働者が育児休業の申出をしたり、育児休業をしたりしたことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています。

  しかし、妊娠、出産を機会に仕事を辞める方は珍しくありません。第一生命経済研究所の試算によると、出産を機に仕事を辞める女性正社員やパート・派遣労働者は年間で20万人にのぼるといいます。

https://www.fnn.jp/posts/00344160HDK

 その中には法の趣旨に反する形で退職を余儀なくされた方も、多数含まれているのではないかと思います。

2.近時、女性歯科衛生士に対する産休後退職扱いの有効性が問題になった事案が公刊物で公表されました(東京地判平29.12.22労判1188-56)。

  これは、女性に退職の意思もそれを表示する言動もなかったにもかかわらず、不快感を抱いた理事長が、出産後の女性を強引に退職扱いにしてしまったという事件です。

退職扱いになった女性は、理事長や同僚職員に対し、「育児休業を取得した上、職場復帰する意思を表示」したり、被告や社会保険労務士事務所に「育児休業取得の手続を進めるための必要書類」を求めたりしていました。被告法人は随分と無理のあることをやったと思います。

  こうした扱いは当然違法であり、裁判所は女性からの地位確認請求、育児休業給付金相当額の損害賠償、慰謝料などの請求を認めました。

  その結論自体は普通の判断ですが、注目されるのはその慰謝料の高さです。

  裁判所は

「労働契約上の権利を有する地位及び賃金、育児休業取得その他の権利」

に対する侵害について、

「原告には労働契約上の権利を有する地位の確認、賃金及び育児休業給付金相当額等の損害賠償に関する請求が別途認容されても回復しえない重大な精神的損害が発生している」

として、200万円もの慰謝料を認めました。

  その理由として、裁判所は

「職そのものを直接的に奪っていること、原告には退職の意思表示とみられる余地のある言動はなかったこと、A理事長に故意又はこれに準じる著しい重大な過失が認められること、判決確定後も専ら使用者側の都合による被害拡大が見込まれること」

のほか

「いわゆるマタニティ・ハラスメントが社会問題となり、これを根絶すべき社会的要請も平成20年以降も年々高まっていること」

を指摘しています。

3.これだけ高額の慰謝料が認定される可能性があるとなると、嫌がらせをするような会社には戻りたくない・職場復帰(地位確認)までは望まないというケースであったとしても、訴訟提起することに相応の経済的な合理性があります。

  もし、理不尽な目に遭って悔しい思いをされている方がおられましたら、ぜひご相談にいらしてください。一人一人が声を上げることは、社会問題としてのマタニティ・ハラスメントの根絶にも繋がってゆくのではないかと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

 

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