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2018年12月18日 (火)

求人広告と話が違う(残業代との関係)

1.法は、労働契約の内容について、できる限り書面による確認をするものとしています(労働契約法4条2項)。また、使用者に対しては、労働者に対し、賃金、労働時間その他労働条件を書面で明示することを義務付けています(労働基準法15条、同法施行規則5条3項)。

  しかし、労働関係の法律相談をしていると、雇用契約書を作っていない、労働条件明示書面の交付も受けていないという方が結構おられます。

  法律関係を明確にする書面がないと、使用者と労働者との間での認識の齟齬が生じやすく、紛争が発生する危険も高まります。

2.近時、労働契約書も労働条件明示書面も作成されていなかった事案において、時間外勤務手当の請求の可否が問題となった事案が公刊物に掲載されました。東京地判平30.3.9労経速2359-26です。

  被告となった会社は、

 「月給25万円~40万円」

 「※ 年齢・経験・能力などを考慮の上、給与額を決定します。」

 「9:30~23:00(実働8時間/シフト制)」

 「4週6休」

 などという労働条件を公開して募集をかけました。

  原告2名はこれを見て応募し、被告会社に採用されました。原告らの賃金は、それぞれ40万円、34万円と定められました。

  通常、求人広告は申込の誘引と理解されており、そのまま労働条件になるわけではありません。応募者に対しては、求人広告とは別に、改めて労働条件明示書面が渡されることになっていて、労働条件になるのは、この労働条件明示書面や労働契約書に書かれていることです。

  しかし、この事案では、労働契約書も労働条件明示書面も作成されなかったことから、原告らは40万円、34万円というのを基本給だと考えました。

  これに対し、会社は40万円、34万円を、基本給、家族手当、技能手当、皆勤手当、定額残業手当、普通残業手当、深夜残業手当、休日勤務手当に区分して支給しました。

  こうした扱いに対し、原告らは40万円、34万円を基礎賃金として時間外勤務手当が支払われるべきだとして会社を訴えました。

結論から申し上げると、裁判所は、時間外勤務手当の基礎賃金を、それぞれ40万円、34万円を基礎に算定すべきと判示しました。残業代に当たる部分の存在、金額、計算方法を示すことなく、給与明細書を交付する段階で一方的に内訳を決定しても、そのようなことは認められないとしています。

3.俗にブラック企業と言われる遵法意識の希薄な会社には、法を無視しても、既成事実を積み重ねて行けば済し崩し的に何とかなるといった発想を持つ傾向があるように思われます。

  しかし、現実には何ともなりません。裁判所に事件が係属する事態になってしまうと、法を順守していない側が圧倒的に不利です。

  求人広告を見て応募・採用されたものの、労働条件について事前に書面で明示されることもなく、入社してから突然「あれは残業代込みでの給料だ。」などと言われて理不尽さをお感じになられている方がおられましたら、ぜひ、一度相談にいらしてください。

  残業代に関する事件は争点や検討対象が似通っていることが多く、原告となる方の数が増えても比例的に手間が増えるわけではありません。今回ご紹介させて頂いた裁判例の事案のように複数の方で同時にご依頼を頂けると、スケールメリットから一人あたりの着手金の負担を減らすこともできるかと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

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