面前虐待
あまり聞きなれない言葉ですが、児童相談所で「面前虐待」を理由に保護されるケースが増えていて、良くご相談を受けます。
面前虐待とは、子どもの面前で父親と母親が大喧嘩をすることが子どもにとって精神的な虐待に当たるので、児童相談所に保護される理由になるというものです。
喧嘩をするほど仲が良いなどというのは昔の話のようです。もともと他人同士なのですから、意見が違うことは仕方がありませんが、相手の人格非難や、無理矢理自分の言うことを通そうとすると、激しい言い争いになり、それを子供の前で見せてしまうと、子どもが恐怖心を抱いたり、自分が悪かったのではないかと罪悪感を持ったり、怒号や、罵り合いがまた起こるのではないかというトラウマに捉われるということが分かって来ています。
たかが夫婦喧嘩だと大人は思うかも知れませんが、子どもにとって、目の前で大声で叫ばれる、母親が殴られる、包丁を片方が持ち出す、どれも大きな恐怖です。大喧嘩の果てに警察を呼んだりすると、警察が児童の面前虐待であるとして児童相談所に通報することになっています。
そして度重なると児童相談所は、この環境に子供を置いておくことは出来ないと考えて児童施設に保護する手続きを開始します。
その段階で相談に見える方は虐待という意識がありません。子供を虐めたわけではないのに相談所は訳も言わずに子供を連れて行った、と言います。
弁護士は、子どもを返してくれない、会わせてもくれない、という不満をお聞きすることになります。確かに説明しない相談所もどうかと思うのですが、この場合、何が問題で、返してくれないのかを、しっかり把握することが大事であり、弁護士であれば、児童相談所に話を聞いてその理由をご説明することが可能です。
一般的には、児童相談所は、子どもを安心して返せる環境があるかどうかを重視して考えています。夫婦のどちらが悪いとか、夫婦喧嘩の原因は何かというご両親の訴えを一応は聞きますが、それを判断したり裁定したりすることはいたしません。夫婦が今後、子どもの前でひどい喧嘩をしないと安心出来て初めて子どもを返すことを考える方向に向かいます。
そのことを理解しないと、いつまでも子どもを返して貰えないことになります。こういうケースでは、弁護士が役に立つことがあると感じております。
(弁護士 神山 昌子)
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