遺言の作成・保管方法が変わる!
遺言作成するなら公正証書遺言にするべき!と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。弁護士としてもそのようにアドバイスをすることがほとんどです。
理由としては、自筆証書遺言だと紛失の恐れがあったり、実際に誰がどのような状況で作成したかが不明確で有効性について疑義がもたれたりするリスクがあるかららです。また、死亡後に相続人らが家庭裁判所で検認の手続きをする必要もあります。
確かに公証人の前で本人が口述をして作成し、公証役場で保管もしてくれる公正証書遺言は自筆証書遺言に比べれば安心です。
しかし、一方で公正証書遺言は、公証役場に手数料を支払うこと、証人が必要となること、公証人との間で作成日や作成場所(公証役場又は自宅など)について調整する必要があることなど仰々しいところもあり、費用や手間の点でやや難点があります。
そういうわけで、いざとなるとなかなか公正証書遺言作成に踏み切れず、結果的に相続について意思を伝えることができないままに亡くなってしまう方が多くいるようです。
それは本人にとっても親族にとってもよいことではありません。
もう少しライトにかつ確実に遺言を作成・保管できないものか・・・わたしもご相談に関わる中でよく思案していたことです。
この点に関し、最近、重要な法律改正がありました。
<もう全文自筆でなくていい>
自筆証書遺言は偽装を防ぐため、全文と日付を必ず本人が書き、署名・捺印することなどが民法で定められています。また、財産の一覧を記した財産目録も自筆する必要がありました。ただ、資産のすべてを正確に記載するにはかなりの労力を要し、もし誤字があれば、その部分が無効になる可能性もあるというリスクもありました。
この点に関して、平成30年7月6日に成立した民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成31年1月13日から施行)が成立しました。
これにより、不動産の地番や面積、預貯金の口座番号など、財産を特定する記載については自筆でなくてもよく、パソコンなどで作成した財産目録や登記事項証明書等を添付し、その目録全頁に遺言者が署名・捺印すれば有効となります。
とはいえ、要件を本当に充たしているか等は弁護士に確認してもらうことをお勧めします。
<法務局で保管できる>
自筆証書遺言の保管についても、平成30年7月に法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立しました(施行は2年以内)。
当該法律により、法務局において自筆証書遺言を保管してもらえることになりました。
具体的には、遺言者が法務省で定める様式(別途定めるとのこと)で作成した封をしていない自筆証書遺言を遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局の遺言保管所に自ら出頭して申請をします。
保管の申請がされた遺言書については,遺言書保管所の保管官が,遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言書に係る情報を管理することとなります。
遺言者は,保管されている遺言書について,その閲覧を請求することができ,また,遺言書の保管の申請を撤回することができます。保管の申請が撤回されると,遺言書保管官は,遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します。
遺言者の生存中は,遺言者以外の方は,遺言書の閲覧等を行うことはできませんが、死亡後は、自己(請求者)が相続人,受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。遺言者の相続人,受遺者等は,遺言者の死亡後,遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
遺言書保管官は,遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは,速やかに,当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人,受遺者及び遺言執行者に通知します。
そしてこの場合は検認手続きも不要になります。
手数料も公正証書で作成する場合には相続財産額に応じて負担することになりますが(数万円~10万円以上になることもあります)、法務局での保管手数料は一律でこれに比べれば負担は軽くなるはずです。
このように各法律が施行された暁には、必ず「遺言は公正証書で!」というべきケースばかりではなくなりますね。
遺言作成の選択肢が広がりつつある現在、改めて作成の検討をされてみてはいかがでしょうか。
(弁護士 亀井 真紀)
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