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2018年7月22日 (日)

離婚事件 弁護士は、親子を引き離し、関係をこじれさせることで儲けているのか?

1.「親子を引き離し、関係をこじれさせることで儲ける“離婚ビジネス”の実態」なる記事が掲載されています。

https://hbol.jp/171049

https://hbol.jp/171049/2

http://news.livedoor.com/article/detail/15044811/?p=1

http://news.livedoor.com/article/detail/15044811/?p=2

  記事では、

「関係を壊した妻側が、婚姻費用を請求してくる。離婚しないならカネを払え……と。妻側の弁護士はまるで暴力団です」

「子どものためのお金なのに、弁護士がやっていることはピンハネ。月々10万円をとれるクライアントを10人見つければ、10万円が固定収入になる。顧問契約の2件分です。国が作った機関が、養育費から報酬を得られるようにするなんて、離婚を奨励しているようなものです」

 

「弁護士があえて「事件」を作り出し、売上を得る仕組みを「離婚ビジネス」と酷評するのは笹木孝一さん(仮名、50歳)」

などと弁護士のことを随分と悪く言っています。

 ただ、記事が指摘する「実態」なるものは、私の弁護士としての認識とは大分異なります。今回は離婚事件について記事とは異なる認識があることをお伝えさせて頂きます。

2.記事では、「妻が浮気して出て行った場合の妻側弁護士の対応」を引き合いに出し、「関係を壊した妻側が、婚姻費用を請求してくる。離婚しないならカネを払え……と。妻側の弁護士はまるで暴力団です」などと弁護士の活動を批判しています。

 しかし、専ら分担請求権者である妻側に有責性がある場合、婚姻費用の分担請求は制限されたり否定されたりしています。例えば、東京高決昭58.12.16家月37-3-69は、夫婦の一方が他方の意思に反して別居生活を強行している場合について、子どもの養育費は別として、自身の生活費の請求は認められないとしました。また、市販されている書籍でも、「不貞関係にあるとみられてもやむを得ない」申立人妻からの婚姻費用分担請求について、子どもの養育費相当額を超える請求を認めなかった例は、普通に掲載されています(森公任ほか編著『簡易算定表だけでは解決できない 養育費・婚姻費用算定事例集』〔新日本法規出版,初版,平27〕の243頁以下等)。

「妻が浮気して出て行った」というのが単なる思い込みではなく、証拠に基づいて事実として認定できる場合、代理人弁護士がきちんとした仕事をする限り、裁判所で妻側の弁護士の言いなりになるような結論が出る事態になることは、それほど多くはないのではと思います。

3.また、「子どものためのお金なのに、弁護士がやっていることはピンハネ。…国が作った機関が、養育費から報酬を得られるようにするなんて、離婚を奨励しているようなものです」というのも、誤解を招く言い方だと思います。

  法テラス(国が作った機関)が関与する事件について言えば、婚姻費用や養育費が適切に支払われている限り、幾ら弁護士が事件にしようとしたところで事件にはなりません。それは、事件にできるかどうか(契約を結んで良いかどうか)を受任する弁護士が判断するのではなく、法テラスの民事法律扶助審査会という第三者機関が判断することになっているからです。

  家庭裁判所が算定表を公開しているため、婚姻費用や養育費の額が幾らになるのかは、一般の方でも比較的簡単に目星をつけることができます。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

  これに基づいて、子どものために適当な婚姻費用・養育費が支払われている場合、それでも債務名義を取得しておくだけの理由があるだとか、特に算定表で考慮されていない費用の負担を求める必要があるだとか、何か特殊な事情がなければ、民事法律扶助審査会は契約の締結を認めないと思います。公費を投入したり、資力に乏しい依頼者に経済的な負担をさせたりするだけの必要性・相当性が認められないからです。

  そのため、婚姻費用分担・養育費請求事件として弁護士が法テラスに持ち込んでいるものは、「子どものためのお金」の負担を相手方配偶者が合理的理由もなく拒否している場合が多くを占めているのではないかと思います。

  婚姻費用や養育費を踏み倒したい側からすると弁護士に介入されるのが嫌なのは理解できないわけではありません。しかし、一般的な弁護士は、放っておくと法の趣旨に則った婚姻費用・養育費が支払われないからやむなく法的措置をとっているのが実情です。婚姻費用や養育費の踏み倒しを阻止された側が、請求権者側の弁護士が報酬を受領することを「ピンハネ」と揶揄するのは筋が違うのではないかと思います。

4.「弁護士があえて『事件』を作り出し、売り上げを得る仕組み」なるものも、私の実感では存在しません。

  依頼者が弁護士のところに相談に来るのは、殆どが事件や紛争になった後です。自分で話をしようとしても、どうにもならないということで相談に来ます。夫婦生活が円満に行っているところに「離婚しませんか。」などといって事件を作ろうとすれば、依頼を獲得するどころか激怒されるのが関の山だと思います。

  ちなみに、笹木孝一さん(仮名、50歳)はエフピックの利用を強いられることが不満であるようですが、裁判所がこれを条件とするのは、妻がリビングに置いていたとする録音機に、何かよっぽどのことが記録されていたからである可能性が高いと思います。

  裁判官の執筆に係る「実務上、子と非監護親との関係は良好な場合でも、監護親と非監護親との感情的対立がなかなか解消せず、実施に際しての協議等が円滑に進まないケースが散見されるが、このような場合でも、やむを得ない事情がない限り、出来る限り当事者間での努力が求められよう」(横田昌紀ほか『面会交流審判例の実証的研究』判例タイムズ1292-5)との論稿にも記述されているとおり、裁判所は面会交流に第三者を関与させることにあまり積極的ではありません。上記の論稿でエフピックの職員等の立会いのもとでの面会交流の実施を命ずる審判例として紹介されている事例も「同居中に非監護親の監護親に対する暴力が振るわれた」というケースです。

  裁判所の決定の理由をきちんと検証せず、笹木孝一さん(仮名、50歳)の言い分を鵜呑みにするのは、やや早計かなという印象を受けます。

5.一般の方の中には、専門家であれば誰に聞いても大体似たような答えが返ってくるはずだとお考えの方がいると思います。

しかし、私の肌感では、所掲の記事に書かれているような実態認識は当業界ではかなり特異なもので、多くの弁護士が共有している実態認識とは懸け離れているように思います。

  どの業界にもあてはまることだとは思いますが、独特の考え方や事実認識を持った人は一定数いるので、違和感を持ったらセカンド・オピニオンを聞きに行くことが必要です。

(弁護士 師子角 允彬)

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