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2018年4月

2018年4月25日 (水)

面会交流は強制できるか

  先日の所内勉強会で、面会交流に関する裁判例を取り上げました。皆さんのお役に立つと思いますのでご紹介します。

 

  ご存知の通り、面会交流とは、親権を持たない親が、離婚後も子どもと会うなどして交流をもつことを指します。離婚前に別居している間でも面会交流は可能です。

 

  せっかく面会交流について決めても守られない場合にこれを強制する手段として、間接強制という方法があります。

  間接強制とは、「履行しない場合には1か月あたり何万円を支払う」等として義務者に心理的な圧力をかけて義務の履行を促す方法です。

 

もっとも子どもの心情にも配慮しなければならない面会交流に間接強制が使えるかどうかについては議論の余地があります。この点について平成25年3月28日に出された最高裁決定は、調停や審判で、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法などが具体的に定められているときには間接強制ができる場合があることを明らかにしました。

  つまり、義務の内容に着目し、「給付の特定に欠けるところがない」場合には間接強制が肯定されるとしたものです。

 

  これに対して今回ご紹介する裁判例(大阪高裁平成29年4月28日決定)は、面会交流をなすべきことについて審判で定められた場合において、給付の特定に欠けるところはないとした上で、義務の履行可能性に着目し、次のように述べて間接強制をすることができない旨の判断を示しました。

 

  「間接強制をするためには、債務者の意思のみによって債務を履行することができる場合であることが必要であるが、幼児のような場合であれば、子を面会交流所に連れていき非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが、未成年者(筆者注:当時満15歳3か月)のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上、未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ、未成年者は平成29年××月より高等学校に進学しており、その精神的成熟度を考慮すれば、抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり、却って未成年者の福祉に反するということができる。したがって、本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。・・・以上によれば、抗告人らの本件債務の不履行に対しては間接強制決定をするのは相当でない。」

 

  本裁判例が「給付の特定に欠けるところはない」としながら間接強制を否定したのは、

①未成年者が15歳3か月の高校生であること

②義務者らが、その後、権利者に対し、再度の面会交流禁止の調停を申し立て、家裁調査官の意向調査において、未成年者が権利者との面会交流を明確に拒否し、その拒否の程度も強固であること

③未成年者は抗告人らの意向も踏まえ自らの意思で面会交流を拒否しており、これを本心でないか、抗告人らの影響を受けたものとして軽視することが相当でないこと

④未成年者の精神的成熟度

を考慮したものと思われます。

 

先に触れた最高裁決定の事案では、子の年齢が7歳に満たなかったという事情がありました。それに対し、本裁判例の事案では、子の年齢は15歳余と比較的成熟していますので、子の意向を十分に汲むべきであると考えられたのだと思われます。

最高裁判例と今回の裁判例を併せて検討すると、要件を備えている場合には原則として間接強制が可能だけれど、精神的にある程度成熟している子が自身の意思で拒んでいるような場合には間接強制が許されないということになりそうです。

成熟したお子さんの面会交流に関するトラブルを考える上で参考になると思われますのでご紹介した次第です。

もし、このブログを見られている方で、お子さんの面会交流についてお困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。

                  (弁護士 馬場大祐)

2018年4月 6日 (金)

触らない痴漢

1.「触らない痴漢」なるものが話題になっています。

http://news.livedoor.com/article/detail/14536541/

  記事は「女性のにおいを嗅いだだけで痴漢」と不安感を煽っています。

  また、痴漢事件に詳しい弁護士の見解として、迷惑防止条例の解釈次第では、「満員電車で顔が近づいただけ、電車で後ろに立っただけでも、女性から感じが悪いと主張されれば、検挙される可能性があります」とのコメントを紹介しています。

  他にも、「『匂いを嗅いだかどうか』や『いやらしい目で見たかどうか』が裁判の争点になった場合、お互いにどう立証することになるのか」について、「女性側は『匂いを嗅がれた』という主張だけで戦えるでしょうが、男性側は『嗅いでいない』ということを立証しなければならず、至難の業だと思います。」との弁護士のコメントを紹介しています。

  ただ、ここまで言うのは、やや過剰反応であるように思われます。

  記事の執筆者が弁護士のコメントを正確に紹介しているのかには疑問もありますが、別の意見を持つ弁護士もいることをご紹介させて頂きます。

2.東京都迷惑防止条例で、規制対象になるのは、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」であって「卑わいな言動」に該当する行為です(迷惑防止条例の内容は概ねどの自治体も似たようなものです)。

  北海道の迷惑防止条例の解釈に関して、最高裁は「卑わいな言動」を「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう」と定義しています(最三小判平20.11.10刑集62-10-2853参照)。

  いくら「女性から感じが悪いと主張」されたとしても、事実関係が真に「満員電車で顔が近づいただけ」「電車で後ろに立っただけ」なのであれば、それが「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな…動作」に該当するというのは解釈論として相当に無理があります。

解釈次第で「満員電車で顔が近づいただけ」「電車で後ろに立っただけ」でも検挙されるというのはミスリーディングだと思います。仮に検挙されることがあったとすれば、それは単に「満員電車で顔が近づいただけ」「電車で後ろに立っただけ」ではなく、不審な動きをしながら女性の体を犬のようにクンクンと嗅ぎまわるなど、何らかの付加的な事情があるからだと思います。

3.また、犯罪の立証責任を負っているのは検察官です。

  男性側で「『嗅いでいない』ということを立証しなければなら」ないことはありません。ただ呼吸をしていただけであれば、そう言えばよいだけです。問題は、検察官が、「ただ呼吸をしていたただけ」という男性側の弁解を排斥できるような証拠を提示できるかどうかの一点だけです。「ただ呼吸をしていただけ。」である可能性が排除されなければ、普通は起訴されませんし、起訴されても有罪になることはありません。そういう意味では、男性側が無茶な立証を強いられることはありません。

検察側、女性側にしても「匂いを嗅がれた」という主張だけでは戦うことは無理だと思います。「卑わいな言動」にあたるというためには、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな…動作」がなされたと言える必要があるからです。単なる呼吸とは外形的に区別可能な形で「下品でみだらな」嗅ぎ方(動作)がされたことが具体的かつ詳細に供述できなければ、そもそも起訴には至らないでしょうし、起訴されても公判を維持することも凡そ無理だと思います。「いやらしい目で見たかどうか」に至っては、匂いを嗅いだか以上に動作の立証が難しく、実務的な感覚として、そういう争点設定がされる事案は相当限定されてくるのではないかと思います。

4.単に「匂いを嗅がれた」「いやらしい目で見られた」といった抽象的な供述だけで真実「満員電車で顔が近づいただけ」「電車で後ろに立っただけ」でしかない人が検挙されることは、考えづらいと思います。刑事司法の実務は、もっと緻密に運用されているというのが私の実感です。

  万一、事件に巻き込まれたとしても、近時では否認していても裁判所が勾留を認めない事案が増えており、昔に比べれば痴漢冤罪を争いやすい環境も整ってきつつあります。

  「触らない痴漢」なるものに過剰に怯える必要はないと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

2018年4月 2日 (月)

桜丘の逮捕弁護

2018年1月から3月までの第1四半期に当事務所が逮捕後勾留決定前に依頼を受けた刑事事件は8件ありました。

上記8件の勾留決定前の弁護活動-当事務所では「逮捕弁護」といいます-の成果については次の通りです。

3件は,検察官に対する働きかけで,勾留請求を防ぎました。

2件は,勾留請求されましたが,勾留裁判官に対する働きかけで,勾留請求が却下されました。

1件は,一旦勾留決定されましたが,直ちに準抗告を行い,これが認められた結果勾留決定が取り消されました。

残る2件のうち1件は,勾留は阻止できませんでしたが,勾留期間満了時に不起訴処分となりました。

逮捕弁護の活動の重要性を益々認識させられる結果となりました。

桜丘法律事務所では今後一層逮捕弁護に力を入れて行く所存です。

逮捕弁護は逮捕されてから勾留請求までの最長3日間が勝負です。もしご家族やお知り合いが逮捕されたときは,できるだけ早くご一報ください。

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