面会交流は強制できるか
先日の所内勉強会で、面会交流に関する裁判例を取り上げました。皆さんのお役に立つと思いますのでご紹介します。
ご存知の通り、面会交流とは、親権を持たない親が、離婚後も子どもと会うなどして交流をもつことを指します。離婚前に別居している間でも面会交流は可能です。
せっかく面会交流について決めても守られない場合にこれを強制する手段として、間接強制という方法があります。
間接強制とは、「履行しない場合には1か月あたり何万円を支払う」等として義務者に心理的な圧力をかけて義務の履行を促す方法です。
もっとも子どもの心情にも配慮しなければならない面会交流に間接強制が使えるかどうかについては議論の余地があります。この点について平成25年3月28日に出された最高裁決定は、調停や審判で、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法などが具体的に定められているときには間接強制ができる場合があることを明らかにしました。
つまり、義務の内容に着目し、「給付の特定に欠けるところがない」場合には間接強制が肯定されるとしたものです。
これに対して今回ご紹介する裁判例(大阪高裁平成29年4月28日決定)は、面会交流をなすべきことについて審判で定められた場合において、給付の特定に欠けるところはないとした上で、義務の履行可能性に着目し、次のように述べて間接強制をすることができない旨の判断を示しました。
「間接強制をするためには、債務者の意思のみによって債務を履行することができる場合であることが必要であるが、幼児のような場合であれば、子を面会交流所に連れていき非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが、未成年者(筆者注:当時満15歳3か月)のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上、未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ、未成年者は平成29年××月より高等学校に進学しており、その精神的成熟度を考慮すれば、抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり、却って未成年者の福祉に反するということができる。したがって、本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。・・・以上によれば、抗告人らの本件債務の不履行に対しては間接強制決定をするのは相当でない。」
本裁判例が「給付の特定に欠けるところはない」としながら間接強制を否定したのは、
①未成年者が15歳3か月の高校生であること
②義務者らが、その後、権利者に対し、再度の面会交流禁止の調停を申し立て、家裁調査官の意向調査において、未成年者が権利者との面会交流を明確に拒否し、その拒否の程度も強固であること
③未成年者は抗告人らの意向も踏まえ自らの意思で面会交流を拒否しており、これを本心でないか、抗告人らの影響を受けたものとして軽視することが相当でないこと
④未成年者の精神的成熟度
を考慮したものと思われます。
先に触れた最高裁決定の事案では、子の年齢が7歳に満たなかったという事情がありました。それに対し、本裁判例の事案では、子の年齢は15歳余と比較的成熟していますので、子の意向を十分に汲むべきであると考えられたのだと思われます。
最高裁判例と今回の裁判例を併せて検討すると、要件を備えている場合には原則として間接強制が可能だけれど、精神的にある程度成熟している子が自身の意思で拒んでいるような場合には間接強制が許されないということになりそうです。
成熟したお子さんの面会交流に関するトラブルを考える上で参考になると思われますのでご紹介した次第です。
もし、このブログを見られている方で、お子さんの面会交流についてお困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。
(弁護士 馬場大祐)
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