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2018年2月14日 (水)

パワーハラスメントの類型(不正行為の強要)

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されています。(厚生労働省 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html 参照)。

 上記報告は、パワーハラスメントの行為類型として、①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)を掲げています。ただ、これらは「職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではないことに留意する必要がある」とされています。

 円卓会議で掲げられている行為類型で概ねの事案が網羅されるため、時折、円卓会議の報告以外にどのようなパワーハラスメントの類型があるのかという疑問が寄せられることがあります。

 この問の答えとして、本記事の副題として掲げさせて頂いた不正行為の強要が挙げられるのではないかと思います。

 居宅介護等を業とする会社(被告)が従業員(原告)に対し業務命令として大阪市に提出する書類の改ざんという不正行為を命じたという事案において、「書類の改ざんという不正行為を命じたこと、そのために労働基準法所定の労働時間を優に超える労働を強いたこと、また改ざんした書類に基づく虚偽の報告をするよう指示したことは、被告による違法な業務命令として、原告に対する不法行為にあたるというべきである」とした判例があります(大阪地裁平18.9.15労判924-169参照)。この事案は労働時間的な意味での「過大な要求」を含むものですが、不正行為の指示が従業員に対する不法行為を構成し得ることを明示的に指摘した点に意味があります。

 不正行為の指示には、行政に対する不正行為ではあっても労働者に対する不法行為になるわけではないとした事例もあります(静岡地判平26.7.9労判1105-57参照)。ただ、これは労働者自身も作業に従事している間は、その違法性に気付いていなかったという事実認定を前提にしているため、もともと不正行為の強要があったとは言いにくい事案であるように思われます。

 嫌々ではあっても、不正行為に加担したことを認める形になることから、この種のパワハラは表に出にくい性質があります。代表的な行為類型に書かれていないのは、そのためではないかと思われますが、実際にはそれなりの件数が眠っているのではないかと思います。

(弁護士 師子角 允彬)

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