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2018年1月23日 (火)

【裁判例の紹介】他人の画像をツイッターで勝手に投稿した人について発信者情報の開示が認められた事例

 当事務所では定期的に所内弁護士による勉強会を行っています。先日その勉強会の中でツイッターの投稿者についてプロバイダに対し発信者情報の開示が認められた事件の裁判例をピックアップしました。近時ツイッターの投稿に関する相談が増えており、私も代理人として発信者情報の開示を行うことも多いので、事務所のブログの方でも取り上げることに致しました。

 今回私が取り上げた裁判例(新潟地方裁判所平成27年(ワ)542号 判例時報2338号86頁)は、原告の写真が、無断でツイッターで投稿されたことから、この投稿者に関する情報の開示を原告の法定代理人(原告の親)が被告(プロバイダ)に対して求めたというものです。ツイッターの投稿の内容は、「投稿者の孫娘が安保法制反対デモに連れていかれたところ熱中症で死んだ」というものでしたが、その「孫娘の写真」として原告の写真が勝手に使われていたのです。

 ツイッターでは実名アカウントを作り投稿している人もいますが、多くの人は匿名での投稿を行っています。その投稿に何の問題もなければよいのですが、人の名誉を棄損したり、プライバシーを侵害するような内容であることもあります。また今回取り上げた裁判例のように、他人の写真を勝手に使った肖像権を侵害する投稿であることもあります。

 投稿を行った発信者に対して直接投稿を行わないよう求めたり、権利侵害に対する損害賠償を請求するには、発信者を特定する必要があります。しかし、ツイッターのアカウントが匿名である場合、表記されている情報だけでは、どこの誰が投稿をしたのか分かりません。 

 その場合、ツイッターに対して発信者情報開示請求を行います。インターネット上の投稿により権利を侵害された場合、投稿者に対して損害賠償を行うなど正当な理由がある場合には、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)という法律により、特定電気通信役務提供者(掲示板やSNSの管理者等)に対して投稿者の情報の開示を求めることができます。

 しかし、ツイッターの運営会社は投稿者の実名などの情報を有していないため、発信者の特定のために投稿がなされたときのIPアドレスの開示を求めることになります。IPアドレスが判明すれば、投稿者がどのプロバイダを利用してインターネットに接続したのか分かるからです。そして、IPアドレスから判明したプロバイダに対して、ツイッターの投稿がなされた時間にIPアドレスを利用した利用者の氏名や住所等を開示するように求めることになります。

 ただしプロバイダが必ず発信者の情報を開示するとは限りません。プロバイダは発信者情報の開示請求があったときに利用者に対して情報を開示して良いかどうか確認を取りますが、利用者が情報の開示に承諾しない場合、情報開示を行わないという判断に至ることが多いからです。その場合には本裁判例のように発信者情報の開示を求めてプロバイダを相手取り裁判を提起する必要があります。

 今回取り上げた裁判例では、結論として裁判所はツイッターの投稿により原告の肖像権が侵害されているとして、原告の言い分を認め、被告であるプロバイダに対し投稿者の発信者情報の開示を命じました。

 被告は「本件画像は既にWEBで公開されていたものであり(原告の写真は原告の父親が自分のツイッターアカウントでアップロードしていました)、今回問題となっている投稿がなされたからといって、肖像権の侵害がなされたとは言えない」旨の主張をしています。しかし裁判所は、WEBで公開された写真であるといえどもその画像の利用は被撮影者の意思にゆだねられるべきであり、自分の画像を死んだ他人のものとして投稿されることを承諾するということも考え難い等の理由からこの被告の主張を退けました。

 また、被告は、問題となっている投稿では原告の名前があげられておらず、原告の写真かどうかは分からないので、原告の評価は低下しないから権利侵害にあたらない旨の主張も行いました。しかし裁判所は、肖像権はみだりに自己の要望や姿態を公開されない権利なので、社会的評価の低下の有無は肖像権侵害の有無と関係ないという理由からこの被告の主張も退けました。

 なお、本判決で開示された情報に基づき投稿者は特定され、その後原告と投稿者の間で和解が成立しているということです。

 ツイッターや掲示板で匿名の投稿により権利侵害がなされても、泣き寝入りする人は非常に多いです。確かに発信者情報開示には本件の様に裁判上の手続まで必要な場合が多く簡単にはいきませんが、きちんと手続を踏むことによって投稿者を明らかにできることもありますので、お困りの際にはお早めに法律事務所に相談することをお勧めいたします。
                           (弁護士 大窪和久)

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