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2018年1月26日 (金)

交通事故の範囲~降車時の怪我は交通事故にあたるか

自動車を運転する方は、交通事故に遭った場合に備えて、強制加入である自賠責保険のほかに、任意の自動車保険に入っていることが多いと思います。任意の自動車保険では、様々な特約をつけることができますが、その一つとして人身傷害補償特約というものがあります。人身傷害補償特約の特徴は、単独で交通事故を起こした場合や、自分の過失により交通事故を起こしてしまった場合でも、保険金が支払われることです。交通事故に遭ったときの備えになりますので、大変便利な特約です。

ところで、自動車保険を使える典型的な場面は、走行中の車が人や物にぶつかったときというものですが、それ以外の場合でも保険を利用できることがあります。

自動車保険の利用の可否を判断する場面においては、交通事故か否かを「自動車の運行に起因する事故」にあたるかどうかにより判断します。「運行に起因する事故」という言葉を見ると、自動車が走行している場面に限定されるような印象をもちますが、エンジンが動いていなくても、ブレーキやハンドルなど何らかの装置を操作していれば、自動車の「運行」に当たると考えられています。

ところで、先日の事務所内の勉強会で、自動車からの降車した時に怪我をした場合に、人身傷害補償特約に基づく保険金の請求ができるか否かが争われた裁判例(大阪高裁平成23720日判決)を取り扱いましたのでご紹介いたします。

事案は、夜の午後9時ころ、タクシーから降車して1、2歩程度歩いたところで、道路の段差でつまずいて転倒し、足を骨折したというものです。転倒したときには、同乗者がタクシーの車内で支払いをしていたところであり、タクシーのドアもまだ開いていた、という事情がありました。

転倒された方は、自身が契約していた自動車保険の会社に対して、任意保険に人身傷害補償特約をつけていたことを理由に、保険金の支払いを求めました。しかし、保険会社が、今回の転倒事故は、自動車の「運行に起因する事故」にはあたらない(つまり交通事故にはあたらない)という理由で支払いを拒んだため、訴訟となりました。

裁判所は、降車後の転倒事故が「運行に起因した事故」にあたると判断して、保険会社に保険金の支払いを命じました。その理由として、何らかの操作をしている場合は、停車中であっても、自動車の「運行」に当たる場合がありうるとしたうえで、今回の転倒時には、タクシーのドアが開いたまま同乗者が支払いをしていた最中であったことに着目し、タクシーが目的地で乗客を降車させるために停車する場合は、運転手が座席のドアを開け、乗客全員が降車し終わってドアを閉じるまでの間は、自動車の運行中にあたると判断しました。

このように、典型的な交通事故ではない場合でも自動車保険を利用できる場合がありますが、保険の契約・約款は複雑ですから、ご自身で調べることには大変労力がかかります。保険に関する困りごとについても、お気軽に弁護士にご相談ください。

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