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2018年1月

2018年1月31日 (水)

公務員の労働問題(懲戒処分)

 福島県の職員が勤務時間中に職場の公用パソコンから900回以上にわたって懸賞に応募していたとして、減給処分を受けたとのことです。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20180130-OYT1T50151.html

 回数を見ると、処分が軽いという印象を持たれる方がいるかも知れません。

 しかし、公務員の懲戒処分には自治体内部で何等かの基準が定められていることが多くみられます。やったことの類型と科される処分とが結びつけられているため重すぎる処分や軽すぎる処分が下されないようになっています。

 国家公務員に関しては、人事院が「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68 人事院事務総長発)という基準を示しています。

http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.htm

 これによると、「職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。」とされています(第2 標準例 2 公金官物取扱い関係(10)コンピュータの不適正使用 参照)。

 自治体の基準は人事院の「懲戒処分の指針について」に準じて作られている例が比較的多くみられます。

 福島県の基準がどうなっているのかは良く分かりませんが、国家公務員のコンピュータの不適正使用の懲戒処分の標準例との関係で言えば、重ための処分が下されていることが推測できます。

 弁護士が懲戒処分の効力を争う場合、先ずは懲戒処分の基準との関係で標準例を逸脱しているのかどうかを検討することになります。

標準例を逸脱して重い処分が科されている場合、それを正当化するだけの個別的な事情があるのかどうかを検討して行くことになります。それが見当たらない場合、審査請求などの法的措置をとって懲戒処分の効力を争ってゆくことになります。

 また、処分が標準例の枠内にある場合でも、悪性が極めて低いなど標準例通りの処理をすることが不適切な場合には、それを考慮していないことを理由に懲戒処分の効力を争えないかを検討することになります。

 公務員の労働問題は弁護士業界として手薄な領域の一つですが、書籍の執筆にあたり研究したことがあるため、普通の弁護士よりは詳しいと自負しています。

 もし、お困りの方がおられましたら、ぜひ、一度ご相談ください。

(弁護士 師子角 允彬)

 

2018年1月26日 (金)

交通事故の範囲~降車時の怪我は交通事故にあたるか

自動車を運転する方は、交通事故に遭った場合に備えて、強制加入である自賠責保険のほかに、任意の自動車保険に入っていることが多いと思います。任意の自動車保険では、様々な特約をつけることができますが、その一つとして人身傷害補償特約というものがあります。人身傷害補償特約の特徴は、単独で交通事故を起こした場合や、自分の過失により交通事故を起こしてしまった場合でも、保険金が支払われることです。交通事故に遭ったときの備えになりますので、大変便利な特約です。

ところで、自動車保険を使える典型的な場面は、走行中の車が人や物にぶつかったときというものですが、それ以外の場合でも保険を利用できることがあります。

自動車保険の利用の可否を判断する場面においては、交通事故か否かを「自動車の運行に起因する事故」にあたるかどうかにより判断します。「運行に起因する事故」という言葉を見ると、自動車が走行している場面に限定されるような印象をもちますが、エンジンが動いていなくても、ブレーキやハンドルなど何らかの装置を操作していれば、自動車の「運行」に当たると考えられています。

ところで、先日の事務所内の勉強会で、自動車からの降車した時に怪我をした場合に、人身傷害補償特約に基づく保険金の請求ができるか否かが争われた裁判例(大阪高裁平成23720日判決)を取り扱いましたのでご紹介いたします。

事案は、夜の午後9時ころ、タクシーから降車して1、2歩程度歩いたところで、道路の段差でつまずいて転倒し、足を骨折したというものです。転倒したときには、同乗者がタクシーの車内で支払いをしていたところであり、タクシーのドアもまだ開いていた、という事情がありました。

転倒された方は、自身が契約していた自動車保険の会社に対して、任意保険に人身傷害補償特約をつけていたことを理由に、保険金の支払いを求めました。しかし、保険会社が、今回の転倒事故は、自動車の「運行に起因する事故」にはあたらない(つまり交通事故にはあたらない)という理由で支払いを拒んだため、訴訟となりました。

裁判所は、降車後の転倒事故が「運行に起因した事故」にあたると判断して、保険会社に保険金の支払いを命じました。その理由として、何らかの操作をしている場合は、停車中であっても、自動車の「運行」に当たる場合がありうるとしたうえで、今回の転倒時には、タクシーのドアが開いたまま同乗者が支払いをしていた最中であったことに着目し、タクシーが目的地で乗客を降車させるために停車する場合は、運転手が座席のドアを開け、乗客全員が降車し終わってドアを閉じるまでの間は、自動車の運行中にあたると判断しました。

このように、典型的な交通事故ではない場合でも自動車保険を利用できる場合がありますが、保険の契約・約款は複雑ですから、ご自身で調べることには大変労力がかかります。保険に関する困りごとについても、お気軽に弁護士にご相談ください。

2018年1月23日 (火)

【裁判例の紹介】他人の画像をツイッターで勝手に投稿した人について発信者情報の開示が認められた事例

 当事務所では定期的に所内弁護士による勉強会を行っています。先日その勉強会の中でツイッターの投稿者についてプロバイダに対し発信者情報の開示が認められた事件の裁判例をピックアップしました。近時ツイッターの投稿に関する相談が増えており、私も代理人として発信者情報の開示を行うことも多いので、事務所のブログの方でも取り上げることに致しました。

 今回私が取り上げた裁判例(新潟地方裁判所平成27年(ワ)542号 判例時報2338号86頁)は、原告の写真が、無断でツイッターで投稿されたことから、この投稿者に関する情報の開示を原告の法定代理人(原告の親)が被告(プロバイダ)に対して求めたというものです。ツイッターの投稿の内容は、「投稿者の孫娘が安保法制反対デモに連れていかれたところ熱中症で死んだ」というものでしたが、その「孫娘の写真」として原告の写真が勝手に使われていたのです。

 ツイッターでは実名アカウントを作り投稿している人もいますが、多くの人は匿名での投稿を行っています。その投稿に何の問題もなければよいのですが、人の名誉を棄損したり、プライバシーを侵害するような内容であることもあります。また今回取り上げた裁判例のように、他人の写真を勝手に使った肖像権を侵害する投稿であることもあります。

 投稿を行った発信者に対して直接投稿を行わないよう求めたり、権利侵害に対する損害賠償を請求するには、発信者を特定する必要があります。しかし、ツイッターのアカウントが匿名である場合、表記されている情報だけでは、どこの誰が投稿をしたのか分かりません。 

 その場合、ツイッターに対して発信者情報開示請求を行います。インターネット上の投稿により権利を侵害された場合、投稿者に対して損害賠償を行うなど正当な理由がある場合には、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)という法律により、特定電気通信役務提供者(掲示板やSNSの管理者等)に対して投稿者の情報の開示を求めることができます。

 しかし、ツイッターの運営会社は投稿者の実名などの情報を有していないため、発信者の特定のために投稿がなされたときのIPアドレスの開示を求めることになります。IPアドレスが判明すれば、投稿者がどのプロバイダを利用してインターネットに接続したのか分かるからです。そして、IPアドレスから判明したプロバイダに対して、ツイッターの投稿がなされた時間にIPアドレスを利用した利用者の氏名や住所等を開示するように求めることになります。

 ただしプロバイダが必ず発信者の情報を開示するとは限りません。プロバイダは発信者情報の開示請求があったときに利用者に対して情報を開示して良いかどうか確認を取りますが、利用者が情報の開示に承諾しない場合、情報開示を行わないという判断に至ることが多いからです。その場合には本裁判例のように発信者情報の開示を求めてプロバイダを相手取り裁判を提起する必要があります。

 今回取り上げた裁判例では、結論として裁判所はツイッターの投稿により原告の肖像権が侵害されているとして、原告の言い分を認め、被告であるプロバイダに対し投稿者の発信者情報の開示を命じました。

 被告は「本件画像は既にWEBで公開されていたものであり(原告の写真は原告の父親が自分のツイッターアカウントでアップロードしていました)、今回問題となっている投稿がなされたからといって、肖像権の侵害がなされたとは言えない」旨の主張をしています。しかし裁判所は、WEBで公開された写真であるといえどもその画像の利用は被撮影者の意思にゆだねられるべきであり、自分の画像を死んだ他人のものとして投稿されることを承諾するということも考え難い等の理由からこの被告の主張を退けました。

 また、被告は、問題となっている投稿では原告の名前があげられておらず、原告の写真かどうかは分からないので、原告の評価は低下しないから権利侵害にあたらない旨の主張も行いました。しかし裁判所は、肖像権はみだりに自己の要望や姿態を公開されない権利なので、社会的評価の低下の有無は肖像権侵害の有無と関係ないという理由からこの被告の主張も退けました。

 なお、本判決で開示された情報に基づき投稿者は特定され、その後原告と投稿者の間で和解が成立しているということです。

 ツイッターや掲示板で匿名の投稿により権利侵害がなされても、泣き寝入りする人は非常に多いです。確かに発信者情報開示には本件の様に裁判上の手続まで必要な場合が多く簡単にはいきませんが、きちんと手続を踏むことによって投稿者を明らかにできることもありますので、お困りの際にはお早めに法律事務所に相談することをお勧めいたします。
                           (弁護士 大窪和久)

2018年1月 5日 (金)

1月,2月の神山ゼミ

神山ゼミを以下の要領で行います。

【1月】
日時:1月16日(火)午後6時から午後8時頃まで
場所:伊藤塾東京校521B教室
http://www.itojuku.co.jp/keitai/tokyo/access/index.html

【2月】
日時:2月8日(木)午後6時30分から午後8時30分頃まで
場所:伊藤塾東京校132教室(渋谷協栄ビル3階の132教室(東京都渋谷区桜丘町17-6))
※通常の開始時刻とは異なりますのでご注意ください。
※通常の521B教室とは異なりますのでご注意ください。

【備考】
法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。
特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。
方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。
なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨伝えていただけると助かります。
参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を澤田若菜(sawada@sakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。
※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。
[件名]1月の神山ゼミ(2月の神山ゼミ)
[内容]
・氏名:
・メールアドレス:
・持込相談の事件がある場合にはその旨

皆様のご参加をお待ちしています。

2018年1月 3日 (水)

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

桜丘法律事務所はこの1月19日に設立満20周年を迎えます。司法過疎の解消の鍵は若手弁護士を育成して任期を定めて派遣することだとの信念から,刑事弁護の指導役として畏友神山啓史弁護士と,私が初めて修習指導を担当した加藤真美弁護士の協力を得て設立したのがちょうど20年前でした。

最も優秀な人材を最も必要とされている地に送りたいという私たちの願いは,かなりの程度達成されたと自負しています。そして,各地で力をつけて来た若い弁護士たちが,任期後にそれぞれの課題を見つけ,あちこちで活躍していることは,私たちにとって大きな喜びです。

桜丘法律事務所は,これからも司法アクセスの改善-それは弁護士の人数不足の改善に止まらず,必要な能力を備えた弁護士へのアクセスを容易にすること,今後必要とされるサービスを適切な価格で提供することなどを含みます-を目指して行きたいと思います。

また,事件の解決に当たっては,「良い事務所とは依頼者にとって最も良い結果をもたらす事務所である」ことを忘れずに行きたいと思います。桜丘法律事務所では,毎月,民事,刑事のゼミや判例ゼミを行うなどして研鑽を怠らぬ努力をしているほか,困難な事件については問題意識を共有し,相互に意見交換を行うなどしてより良い解決を目指しています。

今年も,依頼者の皆様にとって最良の結果をもたらすことができるよう,尽力してまいります。

本年も,何卒よろしくお願い申し上げます。

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