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2017年11月13日 (月)

【裁判例の紹介】名義貸しがなされた場合においても割販法によるクレジット契約取消が認められる場合があるとした最高裁判例

 私は2011年から2016年までの間北海道の名寄市で弁護士業務を行っておりましたが、その間に発生した消費者事件の弁護団(旭川弁護士会の有志中心に道内道外の弁護士により活動していました)に入っています。この度この消費者事件が解決し、また事件の裁判例も紹介されております(平成29年2月21日最判 判例タイムズ1437号40頁等)ので、本ブログでも取り上げさせていただくことにしました。

 事件の内容としては次の様なものです。

1 平成21年8月から平成23年11月にかけて、呉服店の代表者が顧客らに対して「クレジットを組めないお年寄りがいる。絶対に迷惑をかけないので名前を貸して欲しい」等といって名義を貸すよう求めました。
 顧客らは、呉服店とつきあいが長いこともありこれを断れず、代表者の求めに応じて名義貸しを行ってしまい、呉服店との間で架空の売買契約(実際にはクレジットを組めないお年寄りはいませんでした)を結ぶと共に、信販会社との間で立替払契約を行いました。
 信販会社は、顧客らに対して購入確認の電話をかけましたが、顧客らは予め呉服店の代表者から言われていた通り、自分で購入したという応対をしました。

2 信販会社から代金相当額の支払を受けていた呉服店は、当時経営が苦しく、これを運転資金に回していたようです。呉服店は顧客らの口座に毎月分割支払金相当額を入金していました。ところがこれが続かなくなり、平成23年11月に営業停止してしまいました(なおこの呉服店については平成24年4月に破産開始決定が出されています)。

3 信販会社は、呉服店の顧客らに対し、立替金残金の支払請求を行いました。

 呉服店の倒産後顧客らから消費生活センターの方に相談が殺到する状況となりました。消費生活センターの方でも仲介を行いましたが、信販会社は名義貸しを行った顧客は呉服店と同じ責任を持つという姿勢をとっており、解決に至りませんでした。その後、旭川弁護士会の有志で弁護団を組むことになりました。ただ弁護団の方で信販会社と交渉を行うも信販会社の姿勢は変わらず、信販会社から数十名の顧客が提訴されるに至りました。

 本件の主な争点は、割賦販売法という法律により、呉服店の顧客らが信販会社の請求を拒めるか否かという点でした。この法律では、販売業者が不実告知(うその説明)により事実誤認をさせて契約をさせた場合には、信販会社との契約も取り消すことができる旨を定めています(割賦販売法35条の3の13第1項)。名義貸しの際「クレジットを組めないお年寄りがいる。絶対に迷惑をかけないので名前を貸して欲しい」という説明が不実告知にあたるかどうかというのが問題になりました。

 訴訟においては、第一審の旭川地裁(顧客側の主張を認める)と第二審の札幌高裁(信販会社側の主張を認める)で判断が分かれ、最高裁で判断されることとなりました。

 最高裁は、名義貸の場合であっても、それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うことになるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要な事項について不実告知があった場合には割賦販売法によって契約取消を認めたとしても法の趣旨に反しないとして、札幌高裁の判決を破棄差戻しました。

 これまで名義貸しの同種事件については、下級審の裁判例でも考え方が分かれていましたし、本件でも地裁と高裁で考え方が分かれてしまいましたが、本件で初めて名義貸しの場合でも消費者の保護を認められうるという最高裁の判断が出されたことになりました。

 なお、差戻審においては和解期日が設けられ、結果顧客らと信販会社の間で和解が成立し、本件は解決しています(和解内容については非公開)。

 本件では、信販会社から請求を受けた顧客を泣き寝入りさせることなく、消費生活センターと連携し弁護団として解決できたことがとても良かったと思います。消費者事件は一人の被害者だけだと訴訟に応じるだけの資力もないため泣き寝入りしてしまうということも多いのですが、弁護団を組めれば一人当たりの負担も少なくなり解決の道も見えてきます。今後も同様の取り組みを続けていければと思います。
                           (弁護士 大窪和久)

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