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2016年8月

2016年8月30日 (火)

勾留請求却下率の増加について

 少し前になりますが、容疑者の勾留請求却下率が過去10年間で5倍超になったとの報道がありました。

 http://www.sankei.com/affairs/news/160328/afr1603280008-n1.html  

 報道によれば、全国の地裁、簡裁で平成17年に0.47%だった勾留請求却下率は平成26年には2.71%まで上昇し、過去10年間で約5.8倍になったということです。日本では昔から「人質司法」と言われ、裁判官が被疑者被告人の身柄拘束を安易に認めてしまうことが問題とされてきました。ただ、裁判所が身柄拘束を安易に認める傾向は変わってきており、報道にもあるとおり否認事件であっても最高裁が身柄拘束を認めない判断をするようになっています。

 私は11年の間司法過疎地と呼ばれる場所で弁護士をしており、その間地域で刑事事件を数多く担当しました。私が担当した刑事事件で捕まった方から一番多く受けた訴えは「一刻も早く外に出たい」というものでした。刑事事件で結論的には罰金刑や懲役刑の執行猶予がなされる場合であったとしても、その結論が出るまでに何日間もずっと身柄拘束が続くということによって、精神的に相当追い詰められてしまいます。また、身柄拘束で仕事に行けないことによって職場を首になるなどその後の生活にも大きな影響を及ぼすことになります。

 早急に身柄拘束を解くため弁護人が勾留請求の却下を求めたり、裁判官がなした勾留決定に対する準抗告を行うことはとても重要です。前記のように裁判官が身柄拘束を安易には認めないようになっているとはいえ、弁護人が身柄拘束を争わなければずっと身柄拘束されてしまう危険は依然として高いからです。

 被疑者勾留が続きそのまま起訴された後であっても、保釈が認められる場合には身柄拘束は解かれることにはなります。ただ、起訴される前の被疑者勾留だけでも原則として10日間までは身柄拘束されることとなり、その間の不利益は非常に大きいものがあります。

 現在施行されている刑事訴訟法では、死刑又は無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁固にあたる刑の事件の被疑者が勾留され身柄拘束されている場合には、国が弁護人をつけることとされています(被疑者国選制度。なお法改正により、2018年6月までにはすべての被疑者勾留事件まで国が弁護人をつける形に制度が変わります)。私も被疑者の国選弁護人として数多くの事件で被疑者の身柄拘束を争ってきました。ただ被疑者の国選弁護人として活動できるのはすでに勾留されてしまった「後」のこととなってしまいますので、弁護人がベストを尽くしたとしても勾留により身柄を拘束されるリスクそのものをゼロにすることはできません。

 身柄拘束されるリスクを少なくするためには、勾留される前、できれば逮捕される前に弁護人がつくことが本来望ましいです。逮捕される前に弁護人が被害者と示談交渉するなどして、捜査機関に逮捕をさせないようにする活動ができればベストです。

 また、逮捕されてしまったとしても、早急に弁護人がつけば勾留請求の取消を求めることで勾留されることを防ぐことができます。逮捕された直後は前記のように被疑者国選制度は使えませんが、弁護士会で実施している当番弁護士制度を使い無料で弁護士に接見に来てもらうこともできます。

 当事務所では刑事事件に関する相談については無料となっております。前記の通り身柄拘束に対してはいち早い弁護士による対応が重要となりますので、ご家族が警察に捕まってしまった場合であるとか、自分が刑事事件で捕まるか不安に思っている場合などはお気軽にご相談していただければと思います。

(弁護士 大窪和久)

2016年8月23日 (火)

9月,10月の神山ゼミ

神山ゼミを以下の要領で行います。

日時
9月15日(木)午後6時から午後8時頃まで
10月24日(月)午後6時から午後8時頃まで

場所
伊藤塾東京校521B教室

★ゼミ終了後に神山弁護士を囲んでの懇親会を予定しています。

http://www.itojuku.co.jp/keitai/tokyo/access/index.html

備考
法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。
方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。
なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨伝えていただけると助かります。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を鈴木彩葉(suzuki@sakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

[件名] 9月の神山ゼミ(10月の神山ゼミ)
[内容]
・氏名:
・メールアドレス:
・懇親会の出席の有無
・持込相談の事件がある場合にはその旨を。

皆様のご参加をお待ちしています。

2016年8月 7日 (日)

就職活動と前科・前歴

 被疑者、被告人から、警察に捕まったことが就職活動に与える影響について相談を受けることがあります。

 典型は、

① 履歴書の賞罰欄に捕まったことを書かなければならないのか、

② 前科や前歴のことを面接でどのように言えば良いのか、

というものです。

 弁護士によって回答は別れると思いますが、私なりの考え方をお伝えさせて頂きます。

 先ず、①の問題についてお話しします。

 結論から言うと、前歴に留まる限り記載しなくても構わないと思います。他方、前科をお持ちお方の場合、賞罰欄に「なし」とは書けません。この場合、賞罰欄を空欄にしておいたり、賞罰欄のない履歴書を使用したりして対処することになります。

 前歴とは、罪を犯したものの起訴猶予になった履歴や、少年時代に処分を受けたりした経歴などをいいます。前科とは分かりやすく言えば、裁判所で有罪判決を受けたことをいいます。

 履歴書「賞罰」欄の「罰」の解釈について、東京高裁(東京高判平3.2.20労判592-77)は、

「履歴書の賞罰欄にいわゆる罰とは、一般的には確定した有罪判決をいうものと解すべき」

と判示しています。

この判例では上告がされていますが、最高裁でも東京高裁の判断は維持されています(最判平3.9.19労判615-16)。

 この判決を根拠にすれば、「有罪判決を受けたわけではないから『罰』はない」という解釈が成り立ちます。ここから前歴である限り賞罰欄には記載しなくても良いのではないかというアドバイスが導かれます。

 他方、確定した有罪判決を受けている場合、賞罰欄に「なし」と記載することはできません。

 しかし、積極的に告知しないことにはそれほどの問題はないと思います。

 前の職場においてセクハラ・パワハラを行ったとして問題にされたことを告知しなかったことを理由とする解雇の可否が問題となった事案ではありますが、東京地裁(東京地判平22.11.10労判1019-13)は、

「告知すれば採用されないことなどが予測される事項について、告知を求められたり、質問されたりしなくとも、雇用契約締結過程における信義則上の義務として、自発的に告知する法的義務があるとまでみることはできない。」

と判示しています。

 少し大雑把に言えば、要するに積極的に虚偽を述べない限り秘匿しておく分は構わないという理解が成り立ち得るということです。セクハラ・パワハラと前科は異なりますが、これを類推することで、賞罰欄を空欄にしておいたり、賞罰欄のない履歴書を使ったりすることは差し支えないのではないかというアドバイスが導かれます。

 次に、②の問題についてお話しします。

 この問題への回答のヒントも上述の東京地裁の判例にあります。

 尋ねられた場合に積極的に嘘を言うことはできませんが、嘘にならない範囲で回答したり、聞かれない限り黙っているという姿勢で臨んだりすることは差支えないのではないかと思います。

 以上が就職希望者、労働者側の立場に立ったアドバイスになります。

 なお、これとは逆に使用者側から前科・前歴のある人の採用を見合わせる方法を尋ねられた場合には、特定の書式の履歴書の使用を指定したり、面接で明確に尋ねたりしておくといったアドバイスをすることになります。

「採用を望む応募者が、採用面接に当たり、自己に不利益な事項は、質問を受けた場合でも、積極的に虚偽の事実を答えることにならない範囲で回答し、秘匿しておけないかと考えるのもまた当然であり、採用する側は、その可能性を踏まえて慎重な審査をすべきであるといわざるを得ない。」

と判示した判例もあるため(前掲東京地判平22.11.10労判1019-13)、採用側には注意が必要です。

(弁護士 師子角 允彬)

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