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2016年7月 1日 (金)

会社役員を辞めたい

 辞めたいのに辞められないというお悩みは、従業員の方だけではなく会社役員(取締役、監査役など)の方にもあるようです。辞められない背景事情により幾通りかの進め方がありますが、今回はオーソドックスな辞め方についてお話します。

 会社役員と会社との関係は委任に関する規定に従うとされています(会社法330条)。

委任契約は各当事者からいつでも解除することができます(民法651条)。

相手方に不利な時期に委任契約を解除した場合、損害賠償義務を負う場合があります(民法6512項本文)。しかし、やむを得ない事由に基づいて契約を解除した場合には、損害賠償義務を負うことはありません(民法6512項但書)。

また、損害賠償義務を負う場合でも、我が国の法制上、賠償額は実損額に限られます。そして、損害が生じたこと及びその額の立証責任は、賠償を請求する側、会社側にあります。

このルールを理解していれば、損害賠償のリスクを抑制しながら辞めることはそれほど難しくありません。

具体的には、一定期間に渡って引継ぎ事務を行うことを申し出ながら辞任の意思表示をすることになります。引継ぎ期間を設けるのは「不利な時期」と言われることを避けるためです。また、引継ぎをしておけば普通は「損害」が生じることはありません。なお、引継ぎを申し出ておけば、仮に会社側が引継ぎを指示しなかったとしても、そのことによって生じた損害は自業自得という言い方をするためでもあります。

辞任した後は、それを会社に登記してもらうことになります。会社が登記をしない場合には、会社を相手取り、辞任登記手続を行うことを求める訴訟を提起することができます。これにより判決が得られれば、会社が登記をしなくても、単独で退任登記をすることが可能になります(ただし、最低員数を欠くことになる場合には仮取締役の選任の申立など更に別途の手続きが必要になります)。

辞めたことを登記上も反映させることができれば、この問題は一件落着です。

(弁護士 師子角 允彬)

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