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2016年3月29日 (火)

まずは自筆証書遺言から

 遺言書をどうやって作るか?と問われたら、公正証書で!と弁護士はじめ多くの専門家は回答するはずです。わたしもそのようにアドバイスをしています。

 しかし最近は、そのトーンが少し落ちてきて、必ずしもいきなり公正証書にしなくてもよいのではと思っています。

 そもそも公正証書遺言のメリットとしてあげられるのは、①公証人が作成に関わるので、形式的にも内容的にも無効になる可能性が少ない、②本人が亡くなった後に相続人が検認手続きをする必要がない、③公証役場に原則として20年保管されるので紛失や破棄などの恐れがない、ということです。

 しかし、一方で、①公証役場で作成しなければならない(出張で公証人が自宅や病院に来てくれることもあるが出張旅費が余分にかかる)、②公証役場に手数料を支払う必要があるということになります。

 この点、公証役場は東京であれば45箇所もあり、どこで作成することも可能なので、それほど大きな問題にはなりませんが、例えばわたしが以前赴任していた北海道の紋別市に公証役場はなく(その昔はあったのに!)、最寄りの公証役場は約100キロ離れた北見でした。これは多少極端な例ではありますが、高齢の方などにとっては近所にないということは躊躇する十分な理由になろうかと思います。

 また、それ以上に手数料はどの方にものしかかってくる問題になります。実は公正証書遺言の手数料は一律ではなく遺言の対象となる財産の額によって異なります。仮に「全ての財産を〇〇に相続させる」というごくシンプルな遺言を作成する時でも、自身が保有する預貯金、株式、不動産や株など全ての財産の総評価額(不動産の場合は固定資産評価証明書を提出します)を申告して手数料を決めてもらいます。不動産を複数所有していればそれなりの額になるのは必須で、人によっては手数料だけで10万円くらいになる方もいます。

 もちろん、亡くなった後に財産を誰に譲るのかという重要な法律行為である以上、それくらいの費用や手間はやむを得ないといえばそうなのですが、ご自身がまだ比較的若くてもしかしたら遺言の内容もまだ変えるかもしれないと考えている方にとって、数万円の出費はやはり大きなものです。当然ながら作成し直すときは、修正部分の対象財産に応じて手数料がかかります。

 このように様々な事情でいきなり公正証書遺言を作成することに躊躇を感じる方には、わたしはまずは自筆証書遺言の作成を勧めたいと思います。有効性に問題が生じることがあるというのが自筆証書遺言のデメリットですが、これは自筆証書遺言を作成することが難しいことを意味するわけではありません。例えば、紙を用意して、「遺言書 わたしの財産の全ては〇〇に相続させる。平成〇年〇月〇日 ○○○○(名前) 印」と全て直筆で記載し、押印すればそれは立派に有効な遺言書です。封はしてもしなくてもかまいません。注意すべきなのは、パソコンを利用せずに全部直筆で記載する、日付を書く、押印(認印でもかまいません)をすることです。それでも心配であれば、弁護士に単発の法律相談で見てもらい、チェックしてもらえばより完璧です。内容面でも迷いがあれば、分配方法等アドバイスを受けることもできます。30分の法律相談は一般的に5000円ですから公正証書遺言作成手数料を考えればリーズナブルです。

また、亡くなった後に検認手続きを要するというデメリットも自筆証書遺言ではありますが、これも考え次第といえます。つまり検認手続きの負担を負うのはあくまでも残された相続人らで、自分が生きている間にしなければならないわけではありません。また、検認手続きは家庭裁判所に申し立てをする手続きですが、裁判のように難しいものでも長期になる手続きではありません。必ずしも大きなデメリットともいえないということです。

自筆証書遺言も、十分に効果的だし、安価に簡単に作成できるというメリットはあるといってよいでしょう。むしろ、形式的にも費用的にもハードルの高い公正証書遺言の作成に躊躇している間に遺言書作成の機を失ってしまい、結局、相続人らに紛争を巻き起こすくらいなら、まずは今現在の自分の信念に従って手書きの自筆証書遺言を作成しておくというのはとても大事なこととだと思います。

 とは、いえ何からどのように記載すればよいか分からない・・そういう方向けには最近合宿での遺言セミナーもあるみたいですが、単純にまずは弁護士にご相談頂ければと思います。内容面、形式面のアドバイスをさせて頂きます。実際、何を書くか決めていなかった方でも、色々と家族のお話をする中で、お考えを整理されていく方が多いようです。

(亀井真紀)

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