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2016年2月23日 (火)

賃料削減・賃料減額を標榜する会社・コンサルの問題点、トラブルをお抱えの方へ。

 電子メールを利用していると、様々な迷惑メールが送られてきます。

 比較的多く送られてくるメールの中に賃料の削減を勧誘するものがあります。

メールの文面には「テナント賃料を80%の確率で最大45.7%減額」「賃貸物件の『80%が賃料の適正化ができる』」などとうたい、「完全成果報酬型」で「賃料の値下げ交渉を御社に代わって行います。」「当社は6年・11000件実績」「今まで貸主様とトラブルになった例はひとつもありません。」などと、耳ざわりの良い言葉が並んでいます。

 しかし、こうした事業には適法性に疑義があります。

 弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者」が「報酬を得る目的」で「業」として「法律事務を取り扱」うことを禁止しています。

 「法律事務」とは「法律上の効果を発生変更する事項の処理を指す」と理解されています(東京高判昭和39・9・29高刑集17-6-597参照)。

 一旦合意された賃料は、基本的には、家主と改めて合意をし直すか、賃料減額請求(借地借家法32条)という手続をとらない限り減額されることはありません。

 賃料減額の交渉は家主との法律関係を変更する事項の処理にほかならず、「法律事務」そのものではないかと思われます。

 これを株式会社が報酬を得ながら1万件以上も反復継続して行っていたとすれば、非弁行為(弁護士法72条違反)が強く懸念されます。

 また、弁護士としての実務経験に照らすと、法的手続(調停・訴訟など)をとらないで賃料の減額を実現することは困難です。それは家主の側に任意の減額に応じるメリットがないからです。家主側は法的手続をとられない限り従前通りの賃料を請求できるのが基本です。法的手続を前提とした賃料減額請求を受けない中で交渉のテーブルに着くことは普通ありません。少なくとも、家主側から相談を受けた弁護士は、賃借人が余程大事な顧客でもない限り、丁重に断った上で法的手続がとられるまで放置しておけばよいと回答するのが一般的ではないかと思います。

 メールには「『80%以上』が適正賃料ではなく、“払い過ぎ賃料”が発生している可能性がある」「賃貸物件の『80%が賃料の適正化ができる』」と記載されています。しかし、こういったことを記載している業者との取引をしようとする場合には、その統計の取り方をきちんと確認する必要があります。また、仮に、80%もの賃料減額の交渉を実現できているというのであれば、何らかの非合法活動によって無理矢理家主に言うことを聞かせていないかどうかも確認する必要があります。家主とのトラブルが一件もないとの表示に対し、業者が「トラブル」をどう定義しているのかも回答してもらう必要もあると思います(どんなに懇切丁寧な商売をしていても、1万件以上の交渉案件を処理してトラブルが1件もないという事態は常識的に考えられません)。

 メールには、「当方ではBtoB向け・事業を営む方向けに配信をさせていただいており」と記載されています。

 事業者同士の取引は、消費者保護を目的とした法律の多くが適用されません。しかし、一口に事業者といっても、紛争解決の経験にはかなりの差があります。小規模な会社の経営者様の中には弁護士が持つ違和感には気付かない方がいるかも知れません。

 賃料削減相談に応じますと言ったうたい文句を信じて契約を結んだものの、相手方会社の対応に疑義があるといったお悩みをお抱えの方は、ぜひ一度ご相談にいらしてみてください。

 弁護士法違反に基づき契約の無効を主張し、返金を請求する余地がないかなどを検討させて頂きます。

(弁護士 師子角 允彬)

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