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2015年8月17日 (月)

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)2

イタリアの航空会社の元契約社員の日本人客室乗務員が妊娠を理由とする雇い止めが違法であることを理由に雇用継続を求める訴えを提起したようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H96_X20C15A6000000/

 また、今年6月24日にはマタハラで係争中の女性5名が記者会見を行い、法整備によるマタハラの根絶を訴えています

マタハラを巡る係争は、秋田では平成25年から平成26年にかけて1.5倍に増加したようです。

 また、鳥取でも平成25年から平成26年にかけて前年比で4割増加したとのことです(https://www.nnn.co.jp/news/150628/20150628004.html)。

 全国的な統計に触れたことはありませんが、係争事例の増加は全国的な傾向ではないかと思われます。

 女性の活躍を進める意味でも政府はマタハラの防止に向けて法整備を検討しています。

ただ、現在の法律でもマタハラには相当程度対抗することができますし、政府もマタハラの防止には力を入れています。

 例えば、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」)9条3項は、
 

「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと…を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」

と明記しています。

 特に解雇に関しては、男女雇用機会均等法9条4項で、

「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」

と非常に強い規制がとられています(ただし、妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを事業者が証明した時は別です)。

不利益取扱いは解雇に限ったことではなく、雇い止め、契約更新回数の引き下げ、契約内容変更の強要、降格、減給、賞与等における不利益な算定、不利益な配置変更、不利益な自宅待機命令、昇進・昇格の人事考課で不利益名評価を行う、仕事をさせない・もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をすることなど広汎に渡ります。そのことは厚生労働省のHPでも広報されています
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089158.pdf)。

男女雇用機会均等法に関する通達は平成27年1月にも改正されています。この改正の中では、妊娠・出産、育児休業等を「契機として」なされた不利益取扱いが原則として違法と解されることが明確化されています。女性の活躍を謳う政府の方針や少子化対策もあいまって、マタハラの防止は国が力を入れている領域の一つではないかと思います。

法整備はより良い制度を構築するための不断の努力の延長であって、現行法に致命的な欠陥があるわけではないように思われます。完全無欠というつもりはありませんが、現行法の枠内でも権利を守るためにできることはたくさんあります。報道から読者が現行法に穴があるかのような誤解を受けないかと気になったため、本記事を執筆することにしました。

問題をお抱えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

(師子角允彬)

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