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2015年8月

2015年8月26日 (水)

9月神山ゼミ延期のお知らせ

9月4日(金)神山ゼミを,都合により,下記のとおり延期します。


9月4日(金)18時00分 → 9月11日(金)18時30分

場所の変更はありません。
伊藤塾東京校521B教室

よろしくお願いします。

2015年8月25日 (火)

残業代の未払と会社役員の責任

残業代の時効は2年とされています(労働基準法115条 ただし、不法行為に基づいて3年まで遡れる可能性があります)。

 時効期間が短くて多額の請求ができないようにも思われがちですが、長時間労働と残業代の未払が常態化している企業では、従業員1人あたり100万円を超える残業代が未払になっていることもあります。

 そうした企業で何人かが示し合わせて残業代を請求すると、会社は相当高額な請求を受けることになります。

 企業規模が小さい場合、被告会社には残業代を払えないことがあります。残業代を十分に回収できない場合、労働者の側で被告会社の取締役個人の責任を追及することはできないのか、取締役には個人の責任を追及されるリスクがあるのか、が本稿のテーマです。

 この問題を考えるにあたっては大阪地裁の判例(大阪地判平21.1.15労判979-16)が参考になります。

 この判例の原告は残業代を会社に請求して勝訴したものの支払を受けられなかった労働者達です。原告らは会社の取締役や監査役が任務を怠ったせいで割増賃金相当額の損害を被ったと主張して役員個人に対して損害賠償を請求しました。

 裁判所は、

「株式会社の取締役及び監査役は、会社に対する善管注意義務ないし忠実義務として、会社に労働基準法37条を遵守させ、被用者に対して割増賃金を支払わせる義務を負っているというべきである」「取締役の善管注意義務ないし忠実義務は、会社資産の横領、背任、取引行為など財産的範疇に属する任務懈怠だけでなく、会社の使用者としての立場から遵守されるべき労働基準法上の履行に関する任務懈怠も包含する」

と述べた後、

「代表取締役である被告甲野については、昭和観光が倒産の危機にあり、割増賃金を支払うことが極めて困難な状況にあったなどの特段の事情がない限り、取締役の上記義務に違反する任務懈怠が認められるというべきである」 「被告甲野以外の被告らは、本件で問題とされている原告らに対する割増賃金の未払の生じた後に、昭和観光の取締役ないし監査役に就任している以上、昭和観光をして原告に対し上記未払いの割増し賃金の支払をさせる機会はあったというべきである。したがって、被告甲野以外の被告らが、悪意又は重過失により、取締役ないし監査役として負っている上記1で認定した義務に違反して、昭和観光をして原告らに上記未払いの割増賃金を支払わせなかった場合には、被告甲野の以外の被告らは、商法266条の3(280条1項)に基づき、原告らに対し損害賠償責任を負うことになる」

と判示して各役員の責任を認めました。

 簡単にまとめると、倒産の危機にあって割増賃金を支払うことが極めて困難であったなどの例外的な事情がない限り、割増賃金を支払わないことは原則として取締役や監査役に損害賠償責任を発生させる要件としての「任務懈怠」に該当するということです(判例は旧商法の時代ですが、会社法にも同様のルールが引き継がれています)。

 会社に残業代を請求して回収できない場合、労働者は役員個人を相手に損害賠償の名目で時間外勤務手当を請求することが考えられます。役員の側には、残業代の未払を放置していると個人責任を追及されるリスクがあります。

 残業代を回収できずにお困りの方、適切な労務管理をしたいと考えている経営者の方、当事務所ではいずれの立場の方からのご相談にも応じさせて頂くことが可能です。お心あたりのある方は、ぜひご一報ください。

(師子角允彬)


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2015年8月24日 (月)

残業代は何年前まで遡って請求できるのか

残業代の消滅時効は2年とされています。

これは、労働基準法115条の

「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」

という規定が根拠になっています。

 時間外勤務手当は「賃金…その他の請求権」に該当するという理解です。

 この規定があるため、未払残業代を請求する場合、過去2年分に限定して請求している例が多々みられます。

 しかし、未払残業代の請求は必ずしも過去2年以内に限定されるわけではありません。残業代の未払を不法行為と構成することで、3年分まで遡って請求できる可能性があります(注.民法723条で不法行為に基づく損害賠償請求権は損害及び加害者を知った時から3年間は行使可能とされているからです)。

 この点に関しては、広島高等裁判所で判決が言い渡されています(広島高判平19.9.4判タ1259-262)。

 この判例は掲載紙上で「時間外手当請求権が労基法115条によって時効消滅した後においても、使用者側の不法行為を理由として未払時間外勤務手当相当額の請求が認められた事例」として紹介されています。

 裁判所は消滅時効の完成をいう被告(被控訴人)の主張に対し、「被控訴人は、…時間外勤務手当については、仮に存在しても、本件提訴が平成18年7月14日であることからすれば、労働基準法115条によって2年の消滅時効が完成しているとの主張をする。しかしながら、本件は不法行為に基づく損害賠償請求であって、その成立要件、時効消滅期間も異なるから、その主張は失当である」と判示し、未払時間外勤務手当相当分を不法行為を原因として請求することを認めました。

 法律には「特別法は一般法を破る」という原則があります。

 賃金や時間外勤務手当の不払いは微罪ながら犯罪とされています(労働基準法120条1号、同法24条、同法119条1号、37条)。賃金や時間外勤務手当を支払わないことは常識的に考えれば、不法行為にも該当します。そういう意味では賃金の時効は不法行為一般に対する特別法という見方ができるかも知れません。しかし、広島高裁はそのような見方を否定し、不法行為の成立要件を満たす限り、不法行為を根拠として未払時間外勤務相当分を請求できると判断しました。労働者側にとっては画期的な判例であると思われます。

 もちろん、広島高裁の判例があるからと言って、全ての事案で3年分の請求が可能というわけではないと思います。請求するには不法行為の成立要件を満たす必要がありますし、広島高裁の事例は「出勤簿には、…出退勤の時刻が全く記載されて」いないことが指摘されるなど残業代の未払事件の中でも相当悪質な事案です。広島高裁の判決の論理がどの事案まで適用できるのかは法律家として当然慎重に検討するところだと思います。

 しかし、そうした検討を経ないで流れ作業的に2年分しか残業代を請求しないように思われる場合、依頼人としては他の弁護士にセカンドオピニオンを求めても良いかも知れません。先に述べたとおり、賃金や時間外勤務手当の不払いが(象徴的な意味であるにせよ)犯罪とされていることからすれば、その違法性は強いはずで基本的には不払いは不法行為の成立要件を満たすはずだという視点があっても良いからです。

 請求権が2年分か3年分かは割合にして1.5倍の差があります。決して無視できるような差ではありません。

 お困りの方、ご不安をお抱えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

(師子角 允彬)


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2015年8月21日 (金)

東電旧経営陣強制起訴 検察官役の指定弁護士に神山弁護士が選任されました

既に報道等で明らかな通り,東電旧経営陣強制起訴事件の検察官役の指定弁護士に,石田省三郎弁護士,山内久光弁護士とともに当事務所の神山啓史弁護士が選任されました。

石田弁護士は神山弁護士が師と仰ぐ重鎮,山内弁護士は志を共にする正義感あふれる中堅弁護士と,いずれも困難な任務を担うにふさわしい第二東京弁護士会選りすぐりの弁護士です。

神山弁護士には全力でこの困難な任務に当って頂きたいと願っています。

 さて,指定弁護士に就任したことにより,神山弁護士は,司法研修所教官として講義を担当する以外の時間のほとんどを検察庁での膨大な記録検討に充てることになり,事務所に出所する機会及び時間はきわめて少なくなります。

神山弁護士はもとより携帯電話等の通信手段を持ちませんので,これまで以上に即時の連絡が困難になりますが,担当する職務の重要性に鑑みて,ご了承下さるようお願いいたします。

原発事故で強制起訴、検察官役の弁護士3人指定 東京地裁 http://www.sankei.com/affairs/news/150821/afr1508210012-n1.html
検察官役に神山弁護士ら3人=マイナリさん事件で弁護人―東電旧経営陣、強制起訴で http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150821-00000055-jij-soci

低い基本給と定額残業代が招く紛争について

「定額残業代」とは時間外労働の対価を定額で支払うことをいいます。

 残業代を一律定額で支払うことができるのかは、法律上、明文で規定されているわけではありません。

 この問題について最高裁判所は、
① 支払われた賃金のうちどの部分が通常の賃金で、どの部分が割増部分であるかが判別可能であること、
② 当該割増賃金相当額が法所定の額を満たさないときには、その差額が支払われること、
との二つの条件が満たされる場合には適法だという姿勢をとっています(最判昭和63.7.14労判523-6、最判平成6.6.13労判653-12等参照)。

 近時、この最高裁の判断を逆手にとって人件費節約の手段として定額残業代を利用する企業が増加しています。具体的に言えば、基本給を引き下げ、その部分を定額残業代に転嫁するという手法です。

 例えば、基本給20万円で働いていた人がいたとします。このままだと時間外労働をさせた場合に残業代を支払わなければなりません。これを避けるため、基本給を10万円に減額するとともに、定額時間外勤務手当(残業代)として10万円を支払うように賃金を改定します。そうすると、もともとの基本給が低いこととあいまって、かなり長い時間、賃金月額20万円のラインを動かさずに残業をさせることができるようになります。

 上に述べたのは飽くまでも説明を分かりやすくするための例えです。実際にはもっと巧妙で分かりにくく行われます。定額残業代に関しては形式上最高裁の判断に合致しているように見えることもあり、泣き寝入りをしている方も多いのではないかと思います。

 しかし、当然のことながら、裁判所は上記のような脱法行為を野放しにはしていません。例えば、東京高判平成26年11月26日労判1110-46は、次のような事実関係のもと、使用者から支給された「時間外勤務手当」が基本給と同様に残業代を計算する上での基礎賃金に含まれると判断しました。

 被告会社は元々、原告に対して、①基本給20万円、②住宅手当、③配偶者手当1万5000円、④資格手当2000円、⑤非課税通勤費3360円に加え、⑥毎月数万円程度の時間外勤務手当を支給していました。

 これが賃金の改定を経て、①基本給18万5000円、②営業手当12万5000円に改定されました(内訳 時間外勤務手当8万2000円、休日出勤手当2万5000円、深夜勤務手当1万8000円)。

 裁判で残業代の支払が求められたのは、平成23年3月から平成25年2月までの分ですが(このようになっているのは残業代の時効が2年だからだと思われます)、この時の原告の賃金は、①基本給24~25万円、②営業手当17万5000円~18万5000円となっていました。

 裁判所は営業手当の性質を

「割増賃金の対価としての性格を有すると評価できなくもない」

としながらも、

「上記営業手当はおおむね100時間の時間外労働に対する割増賃金の額に相当することになる。」「100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであることは明らかであるから…恒常的な長時間労働を是認する趣旨で、控訴人・被控訴人の労働契約において本件営業手当の支払いが合意されたとの時事を認めることは困難である」

「さらに、…変更前後の上記内訳、金額に照らすと、上記営業手当には、従前基本給、住宅手当、配偶者手当、資格手当として支払われていた部分が含まれていたと推認することができる。」

と述べて、

「本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有すると認めることはできない」

と判断しました。

 その上で「本件営業手当は、割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確になっていない」(最高裁が提示した条件の②が満たされない)として、定額残業代によって割増賃金の支払義務は消滅したと
の被告の主張を排斥しました。

 その結果、

「本件営業手当は、基本給とともに、割増賃金算定の基礎賃金となる。」

ことになりました。

 この裁判例は労働者の側からも使用者の側からも重要な意味を持っています。

 労働者の側から見ると、基本給が極端に低く抑えられている場合、比較的高額の時間外勤務手当が定められていたとしても、それは適法な残業代の支払とは認められないとして改めて残業代を請求できる可能性があるということです。低い基本給のもと長時間労働を強いられている労働者にとっては画期的な判例といえます。

 使用者の側から見た場合、法の潜脱ととられかねないような賃金体系を構築すると手痛いしっぺ返しをくらうことを意味します。東京高裁の判例は営業手当が割増賃金の対価としての性質を有することを認めています。しかし、営業手当は基礎賃金に含められた上、未払残業代の計算にあたり全く考慮されませんでした。使用者としては、まさに踏んだり蹴ったりで二重の不利益を受けたことになります。

 法の抜け穴は滅多にあるものではありません。一体誰が基本給を極端に低く抑えて定額残業代を活用するという手法を広めているのかは不分明ですが、脱法的なアドバイスを真に受けると酷い目に遭うことがあります。

 極端に低い基本給と定額残業代のせいで長時間・低賃金労働を強いられている労働者の方も、適切な賃金体系の構築にお悩みの経営者の方も、直観的に問題がありそうだなと思ったら、取り敢えず法律家に意見を求めてみることをお勧めします。

 もちろん、当事務所でもご相談はお受け付けします。

(師子角允彬)


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2015年8月20日 (木)

お墓の承継者は誰か?いない場合どうするの

少子高齢化社会、核家族化の影響でしょうか。死後事務やお墓に関する相談を受ける機会が多いように思います。今回はお墓の承継に関してよくある悩みをとりあげます。

●お墓の承継者は誰か?
 お墓という性質上、それを建てた方や管理している方自身がそこに入ることが多いですが、その後誰がそれを引き継ぐのかという問題が常に生じます。生前お墓守をしていても自分自身が入った後に誰も引き継いでくれなければ意味がありません。

 この点、民法では以下の通り規定されています。
民法897条
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

1項にある「前条」とは、民法896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」ですから、お墓の承継は相続の対象となるわけではないということです。
もっとも、民法897条1項の後段でも示されているように、被相続人が指定できるとあるので、その限りでは相続に近い部分もあるといえます。それ故に遺言書において「祭祀承継者は〇〇〇とする」と記載する例も多くあります。問題はそのような指定がない場合ですが、民法は「慣習に従って」としています。
「慣習」?何だそれは?と思われる方もいるかもしれません。確かに曖昧です。慣習は文字通り慣習なので、何かに明記されたルールとは異なります。家や土地にもよりますが、いわば何となく代々行ってきた例にのっとりましょうというということです。実際何となく長男、何となく名前を継いでいる親族という家が多いように思います。
ただ、お墓を承継するということはお墓の管理方法について決定する権利を持つということでもありますが、管理費を支払ったり、事実上お寺などから求められるお布施を負担したり、法要をとりしきる負担も負う(お墓の承継者の絶対的義務というわけではないですが)ということです。それに見合う経済的精神的余裕がない方が承継したとしても十分にお墓を守れないということも生じ得ます。その意味でも、できれば被相続人が生前に諸々のバランスを考えて承継者を指定しておくというのがよいでしょう。

●お墓の承継者がいない場合はどうするの?
被相続人の指定や慣習により、承継者が決まればいいですが、現実には子供がいない、いても経済的・物理的に無理、その他諸事情により承継する者がいないということは珍しくありません。民法897条で家庭裁判所が定めるともありますが、承継しようとする者が誰もいない時に職権で決めてくれるわけでもありません。管理の負担を強いることは誰にもできないのです。
この場合、お墓がどうなるのかについては、墓地や霊園の規則によることになります。多くの場合は無縁仏として整理され、最終的にはお墓も撤去され、合葬(共同墓地に入るなど)されることになるでしょう。縁故者(例えば友人など)の立場で、それは忍びないということで、承継を名乗り出ることもできますが、墓地や霊園によっては親族でないことを理由に容易に承諾しないこともあります。いずれにしても交渉が必要です。
また、古いお寺や墓地によっては、そのような規則がないこともあります。その場合はまた「慣習」という曖昧なもので運用されることになりますが、やはり最終的には墓が撤去され、合葬されることが多いでしょう。
ただ、お寺や墓地側としては、この場合お墓の整理、すなわち改葬となるので、墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条に従い、縁故者などに対して、1年以内に申し出るべき旨を官報に掲載するなど所定の手続きを経た上で、自治体の許可を得なければなりません。いうまでもなくこれはお寺や墓地などにとっては負担です。それ故に承継者がどのような人か、きちんと管理してくれるのか、その後はどうなのかということが大きな関心事になってくるわけです。
今は、予め将来に向けた永代供養や合祀の約束をしておく、共同墓地に最初から入れる、負担を軽くするためにロッカー式の納骨堂を利用する等、供養の仕方も多様になっています。無縁になってしまう前に、供養する側とされる側でコミュニケーションをとり、お互いが安心できるような方法について話し合いをすることが何より大事です。

(亀井真紀)

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2015年8月19日 (水)

障害者支援施設

最近、立て続けに、障害を持った方のご相談を受けています。正確にはご家族の方からとなります。

 現在の法律では、障害を持った18歳以下の児童については、児童福祉法の適用があり、福祉型障害児入所施設に入所し、18歳以上の障害を持った方は、障害者総合支援法に基づく生活介護及び施設入所支援による入所となります。

 ただ、この法律の適用が年齢によって変わるということは、子供のときから障害を発症して、長く施設に入所している方に取っては、とても分りにくく困惑するものになっています。

 ご相談に見えた二件とも、お子様は、もう既に30歳を超えておられます。子供の頃には、親のコントロールが可能であったものが、もう身体も大きくなり、力も強くなり、親が押さえることが出来なくなっています。 知的障害は、改善することもあるようですが、悪化するときには、保護者が自宅で面倒を見ることは不可能な状態になることが多いようです。

 ところが、現在のようになったのは、平成24年4月1日施行の法改正によるものなのですが、それまでは、児童のうちに施設に入所していれば、そのまま成年になっても、同じ施設に入所を継続していられたものが、法改正によって、18歳を超えたら、福祉型障害児入所施設を出て、障害者支援施設を探して移らなければならないことになりました。

 このことにより、保護者は新たな悩みを抱えることになりました。高齢者支援施設でも起きている問題がここでも発生しています。18歳になってあらたな障害者支援施設を探しても、どこの障害者支援施設も希望者であふれ、なかなか入れる施設が見つかりません。

 さすがに次の施設が見つからないときでもすぐに追い出されることは無いようですが、平成30年3月31日には、経過措置の期限が来ます。

その期限が来ても入れる施設が見つからないときには、どうしたらいいのでしょう。

 保護者や障害を持った方たちは、追い詰められています。

 このように施設に置いて貰えなくなるかもしれないという心理状態の中では、預かって貰うだけで有り難いという気持ちになり、施設の支援の仕方について、不服をいうことはなかなか出来ないものです。

 多少の怪我、多少のミスについて、施設に文句を言う人は、本当に少ないのだと聞きました。

 でも、お話しを聞く限り、施設が完璧な支援、介護を行なっているとは思えないケースがあり、それでもやれる限りはやってますという専門家とは思えない言葉が返って来ます。「何回言っても言うことを聞かないのです。」って、彼に理解する能力はあったかな、

 誰かが勇気を持って訴えることをしなければ、障害者支援施設の改善は期待できないのではないかと相談者は言います。

 そのとおりだと思います。でも、七生福祉園溺死事件を見ても、施設および施設職員がどうあるべきだったのかの立証は、なかなか専門外の者には難しそうです。またまた勉強の日々が続きます。

 ちなみに、当職の近況と映像が下記に載っています。
  よろしければ、どうぞ見てください。
   

http://www.bengo4.com/other/1146/1305/n_3344/


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2015年8月18日 (火)

借金が返済できなくなったときの対処法 〜破産って?〜

弁護士が増え、借金問題については無料相談の機会も増えました。

それでも、「どうしてこんなになるまで相談しなかったんだろう…」と思う事件は減りません。特に、借金の問題については、破産という「借金をなくしてしまう」魔法のような手段があるのに、何年も苦しみを抱え、体調も、家族との関係を悪化している方に多く出会います。

改めて、破産、という方法がいかに素晴らしいかを、少しだけ説明させていただきます(わかりやすさを優先しています。細部は弁護士にご相談下さい)。

破産のデメリットは、基本的に次の5つしかありません。戸籍にのったり住民票にのったりするわけではありません。あなたが誰かに話さない以上、友人や知人が気づかないうちに借金はなくなるでしょう。
【デメリット】

・ 向こう10年間、新たに借り入れをすることは難しくなります。ただ、すでに借り入れはできなくなっていませんか?別に借り入れができなくても、生活に困らない方がほとんどでしょう。

・ 「官報」という国の新聞に一度だけ小さく掲載されます。ただ、ほとんどの方は読んだことないですよね?あなたの知人も友人もそうだと思いますよ。私の知る限り、官報から知人に知れてしまった、という例は聞いたことがありません。

・ 一定の資格制限はあります。警備員や、保険の外交員などがこれにあたりますが、ほとんどの人には無関係でしょう。実はこういった制限も、破産手続き「中」だけの場合がほとんどです。

・ 99万円以下の現金を除いて、その他の財産を手放すことになります(県によって運用は異なります)。ただ、財産が手元にないから困っているんですよね?もし処分したくない財産があるときは、弁護士にご相談ください。県ごとの運用で問題にならないこともあります(自動車など)。もちろん、次の月にもらえる給料や年金は問題なく受け取れます。

・ 一度破産すると、7年間破産できません。まあ、別にいいですよね?

【その他】
 破産手続きは、自分の借金と財産を書面にまとめて裁判所に提出する手続きです。普通は数ヶ月で終わります。弁護士費用についても、収入が多くない場合は国の独立行政法人が立て替えてくれます。

 確かに破産、というネーミングへのイメージは悪いかもしれませんが、体調や、家族との関係を壊してまで嫌がるものではありません。ぜひ、大切なものを壊す前に弁護士にご相談ください。

(小口幸人)

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2015年8月17日 (月)

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)2

イタリアの航空会社の元契約社員の日本人客室乗務員が妊娠を理由とする雇い止めが違法であることを理由に雇用継続を求める訴えを提起したようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H96_X20C15A6000000/

 また、今年6月24日にはマタハラで係争中の女性5名が記者会見を行い、法整備によるマタハラの根絶を訴えています

マタハラを巡る係争は、秋田では平成25年から平成26年にかけて1.5倍に増加したようです。

 また、鳥取でも平成25年から平成26年にかけて前年比で4割増加したとのことです(https://www.nnn.co.jp/news/150628/20150628004.html)。

 全国的な統計に触れたことはありませんが、係争事例の増加は全国的な傾向ではないかと思われます。

 女性の活躍を進める意味でも政府はマタハラの防止に向けて法整備を検討しています。

ただ、現在の法律でもマタハラには相当程度対抗することができますし、政府もマタハラの防止には力を入れています。

 例えば、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」)9条3項は、
 

「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと…を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」

と明記しています。

 特に解雇に関しては、男女雇用機会均等法9条4項で、

「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」

と非常に強い規制がとられています(ただし、妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを事業者が証明した時は別です)。

不利益取扱いは解雇に限ったことではなく、雇い止め、契約更新回数の引き下げ、契約内容変更の強要、降格、減給、賞与等における不利益な算定、不利益な配置変更、不利益な自宅待機命令、昇進・昇格の人事考課で不利益名評価を行う、仕事をさせない・もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をすることなど広汎に渡ります。そのことは厚生労働省のHPでも広報されています
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089158.pdf)。

男女雇用機会均等法に関する通達は平成27年1月にも改正されています。この改正の中では、妊娠・出産、育児休業等を「契機として」なされた不利益取扱いが原則として違法と解されることが明確化されています。女性の活躍を謳う政府の方針や少子化対策もあいまって、マタハラの防止は国が力を入れている領域の一つではないかと思います。

法整備はより良い制度を構築するための不断の努力の延長であって、現行法に致命的な欠陥があるわけではないように思われます。完全無欠というつもりはありませんが、現行法の枠内でも権利を守るためにできることはたくさんあります。報道から読者が現行法に穴があるかのような誤解を受けないかと気になったため、本記事を執筆することにしました。

問題をお抱えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

(師子角允彬)

2015年8月14日 (金)

桜丘法律事務所退所並びにMJ法律事務所開設のご挨拶

私こと、この度、法テラス長崎法律事務所への赴任期間も含めると9年間お世話になった桜丘法律事務所を7月末日をもって退所致しました。今年の10月で弁護士登録10年目、年末には第二子を授かる節目を迎え、独立させて頂くこととなりました。
所長を始め、桜丘の皆様には大変お世話になりました。心の底から感謝しております。

8月1日からは新事務所で執務しております。新事務所は、京成曳舟駅から徒歩1分で明治通り沿いです。
今後も、桜丘法律事務所と連携しつつ、桜丘で学んだ経験を活かし、弁護士をより市民の皆様に身近なものとすべく精進して参ります。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

キッズスペースも用意しておりますので、小さなお子様連れも大歓迎です。
お近くにいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお立ち寄り下さい。

〒131-0046
東京都墨田区京島1-42-9 大野ビル3階
MJ法律事務所 弁護士 高木良平
TEL 080-3353-7471
FAX 03-6800-2083
mail tryo18@ybb.ne.jp

189-児童相談所全国共通ダイヤル3ケタ化

皆さんは、児童相談所全国共通ダイヤルというものをご存知でしょうか?これは、虐待かもと思った時などに、すぐに児童相談所に通告・相談をすることができる全国共通の電話番号です。児童相談所全国共通ダイヤルに電話をかけると、お近くの児童相談所につながります。通告・相談は匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は守られます。

児童虐待と思われる事態を見聞きしたときは、児童虐待防止法上の通告義務が生じますが、虐待事案のみならず、自分の子育てについての相談などもできるので、積極的に活用して欲しいものです。

これまでも、児童相談所全国共通ダイヤルはあったのですが、10桁の番号で覚えにくく、あまり市民の皆さんに浸透していませんでした。そこで、子供たちや保護者のSOSの声をいち早くキャッチするために、平成27年7月1日より、「189」(いちはやく)という110番や119番のように覚えやすい3ケタの番号に変更されました。

勿論、児童相談所に通告をしたからといって、常に虐待事案が解決するわけではありません。児童相談所で不適切な対応をされてしまうケースもまま見受けられます。

しかし、児童虐待と思しき事態を見聞きしながら、それを放置してしまうと、虐待を受けているかもしれない児童は救われません。

実は、私自身も、児童虐待の現場を目撃して、児童相談所に通告をしたことがあります。その際に、区をまたいだ場合の縦割り行政に辟易したことは事実ですが、現場で対応されている皆さんはとても親身になって対応をしてくれていました。

もし、皆さんが、虐待かもしれないと思うような事態を見聞きした場合や、子育てに悩んでいる友人知人がいる場合、まずは児童相談所全国共通ダイヤルに電話して下さい。
そして、いつそんな事態になるかわかりませんから、まずは「児童相談所全国共通ダイヤル」「189」を自分の携帯電話にでも登録しておくことをお勧めいたします。

GPSを捜査に使えるか―公権力の行使に対する歯止めを考える

先日大阪地裁で,裁判所の令状を得ないで車両にGPSの発信器を付け行動を監視した捜査を違法とし,この捜査によって得た証拠を採用しない決定が下されました。

一方,今年の1月には,大阪地裁が同様の捜査を適法とした判断を下しました。

 なぜこの2つの裁判で意見が分かれたのかは,判決文を読めていない現時点では言及できませんが,非常に興味深いです。

 憲法においては,現行犯逮捕の場合を除き,令状なしには住居への侵入,捜索及び押収ができないとされています(憲法35条)。これを受けて,刑事訴訟法では,捜査において必要な取調べはできるけれども,その取調べが「強制の処分」に該当するようなら,法律に定めがなければできない,と規定されています(刑事訴訟法197条1項)。

 実際の捜査においては,法律に定めがないことも行います。しかし,その捜査が「強制の処分」に該当するならば,法律上の手続きを踏まないと,違法と判断されます。そこで,捜査が「強制の処分」に該当するか否かが,裁判で争いになることがあります。

「強制の処分」は法律上定義されておりませんが,「個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」だと考えられています(最決昭和51年3月16日 刑集30巻2号187頁参照)。冒頭で掲げた2つの裁判も,きっと上記の枠組みに従って判断し,ただプライバシー侵害の程度をどのくらいと考えたかに差異があるのではないかと,私は推測します。

実際の捜査において力技に出なければならないことがあろうことは,想像に難くありません。しかし,捜査を遂げることばかり重視してしまうと,捜査のためには何をやってもいい,ということになりかねません。捜査という公権力の行使に歯止めをかけるのが,刑事訴訟法などの法律です。そして,どのような歯止めが妥当なのかを理論的な立場から常に考えているのが,刑事訴訟法学者なのです。

最近,一部政治家による,学者軽視の発言が見られます。何かを行っていくうえで,理論より実践が大事だと言いたくなることがあることは,私も否定しません。ただ,だからといって理論を捨ててしまえば,何の歯止めもそこには存在しなくなるのです。理論なき公権力の行使の危険性を,市民一人一人が実感しなければならないのではないかと考える今日この頃です。

(津金貴康)

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