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2015年7月16日 (木)

大田区議会議員いぬぶし秀一氏に対する抗議と議会に対する申入れをしました

今年は中学校の教科書採択がなされる年です。4年前,大田区の教育委員だった私も当然採択に携わりました。その際の採択で,歴史教科書は多数決の結果育鵬社の教科書に決まりました。

私が推した教科書は別の教科書でしたが,採択自体は公正に行われました。ところが今年の第2回定例区議会の一般質問において,いぬぶし秀一議員は,あたかも私が教科書採択が公正でなかったと言いふらしているかのような発言をしました。

https://www.youtube.com/watch?v=Q4MSkSur-gc&feature=youtu.be (12分01秒~20秒)

これではまるで私が自分の意見が通らなかった腹いせに手続に難癖をつけているかのようです。到底看過することができないので,同議員に対して抗議をし,大田区議会議長に対して申入れをしました。
 申入れの内容は以下の通りです。

申 入 書

拝啓 大田区議会並びに議員各位におかれましては日ごろから地方自治の精神にのっとり大田区民のために尽力されていることと存じ,感謝申し上げます。さてこの度は,去る6月22日の定例会における犬伏秀一議員の一般質問の中に事実に反する誤った発言がありましたので,これに対して事実に反する旨の指摘があったことを議会においてご報告されたく本状をもって申し入れます。

 上記一般質問で,犬伏区議は,育鵬社の教科書の評価について質問を行った際に,「『公正な教科書採択を求める大田区民の会』なる名称の団体が,あたかも前回の教科書採択は公正でなかったかのようなチラシや講演会を開催しており,当時採択に携わった教育委員までが公正でなかったというような発言を繰り返しています。」と述べているのを知り,驚きました。ここにいう「当時採択に携わった教育委員」は私を指すと思われるところ,全く事実に反するからです。

前回の中学校教科書採択のとき,私は大田区の教育委員を務めていました。社会科の歴史教科書について,私は帝国書院を推しましたが,他の委員の方々は全員育鵬社を選ばれたため,大田区の歴史教科書は育鵬社に決まりました。その採択は,教育総務部長が明確に回答された通り,公正を疑われるようなものではなく,どの委員に対しても,どこからも,圧力などがかかることはなく,それぞれの委員がそれぞれの考えで意見を述べ,公正に行われたものでした。私は,自分が推した教科書が採択されなかったことは残念に思いますが,だからと言って採択が不公正だなどと思ったことはありませんし,そのような発言をしたこともありません。

私はその年の12月で教育委員の任期を終え,退任しましたが,その翌年の春に,「公正な教科書採択を求める市民の会(以下「市民の会」と略称します。)」の方から講演の依頼を受けました。
私はこの依頼に対して,「育鵬社に反対したという趣旨ではなく,『中学校教科書を選ぶ時に考えたこと』というテーマでならお受けします。」とお断りして依頼を受けました。
聴衆の中には,どこからか不当な圧力がかかったとか,何らかの画策がされたなどという話を期待した人もいたかもしれませんが,そのような誤解は解きたかったので,「どこからか見えやすい圧力がかかったということはありませんし,制約もありませんし,外からいろんなことを言われることもなくて,各自が考えたところを述べていたという感じです。議論をして結果的には決まったということなんです。」と説明しました。そして,「教育委員がフリーに議論して,その結果そういう風になったということは,世の中全体の雰囲気をよく表していることなのかも知れないという風に思っています。」と述べました。
採択の手続きに関して私が述べたのは以上の事実です。その後何度か教科書の内容についての講演を依頼されましたが,採択が公正でなかったなどということは一度も,一言も言っていませんし,もともとそのようには考えていません。

そして講演の内容の本題は,私が推した帝国書院の教科書と育鵬社の教科書とを比較して,私が帝国書院を推した理由について21か所の記述を例にとり,解説したものです。その解説も適切なものだったと思います。現に,帝国書院が優れている例として挙げた,「ルネサンスを説明するための三美神の変遷の図版」は今回そっくりそのまま,今年の育鵬社の教科書に掲載されました。また,同じく帝国書院が優れている例として挙げたアイヌオムシャの錦絵も,今年の育鵬社の教科書に掲載されるようになりました。さらに,前回の育鵬社には「帝国主義」の語が一言も載っていないことも指摘しましたが,これも,今年の教科書には載ることになりました。育鵬社が私の講演録をご覧になったとは思いませんが,私が指摘した21項目のうち3項目も取り入れられ,改善されているわけです。

 以上の次第ですから犬伏議員の「当時採択に携わった教育委員までが公正でなかったというような発言を繰り返しています。」という発言は全く事実に反するものであるに止まらず,元教育委員である私が事実に反する発言をして教育委員会を貶めているかのような印象を議員各位はじめ広く大田区民に与えるもので,誠に遺憾です。
 よって,犬伏議員の発言が根拠のない誤ったものであることを指摘させていただくとともに,この指摘があったことを議会においてご報告いただきたく,本申入れに及ぶ次第です。
 
末筆ながら大田区議会並びに議員各位のますますのご活躍を祈念いたします。
敬具

(櫻井光政)

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