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2015年2月10日 (火)

成年後見と死後事務~ご遺体の引取~

成年後見人として人の死後の事務に関わることがあります。

成年後見は被後見人の死亡によって終了します。それ故、亡くなった瞬間に後見人ではなくなるのでそれまで有していた財産管理権、法定代理権がなくなることになります。

そして、元後見人に明文上残された義務は、管理の計算(民法870条)と相続人への財産引き継ぎ事務という限られたものになります。

しかし、実際には様々な場面で悩ましいことがあります。そのひとつがご遺体の引取ではないでしょうか。

被後見人が亡くなった場合、親族がいれば、死亡診断書の入手から始まり、役場への死亡届、葬儀・荼毘の手続き一切をお任せするのが一般的です。ご遺体の引取や搬送も手続きのひとつとして親族の方が手配等してくれます。元後見人が基本的に一連の手続きに関与する必要はありません(もちろん長くお付き合いした者として手を合わせに行くことはあります)。

 ただし、そのようにすみやかに一連の手続きを行ってくれる方が親族にいない場合は、元後見人が関係者から事実上手続きを求められることがあります。特に至急の対応を求められるのが病院からのご遺体の引取りです。というのは、病院によっては霊安室が必ずしもあるわけではなく、亡くなった方のために病室を確保しておくのは物理的に困難であることが多いからです。病室に余裕があったとしても冬ならばともかく夏は長時間置いておくのは望ましくありません。

 それ故、すぐに親族にすぐ連絡がとれない、対応してくれないなどの時は、昼夜問わず元後見人が病院から対応を迫られます。病院にとってみれば、入院時の契約や様々な支払いの対応をしてくれていた後見人が本人死亡により急に何もやってくれなくなるというのは納得・理解し難いでしょう。無下に対応すれば、今後後見人がついていても身寄りがない患者を引き受けてくれない可能性もあります。それは社会にとっても困ることです。

 また、墓地・埋葬等に関する法律によれば、死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市長村長が行わなければならないと定められていますが、現実には自治体がすみやかに遺体の引取をしてくれるとは思えません。そのような交渉をやっている時間もありません。

 では、どうするか。

正解がある話ではありませんが、病院では患者が亡くなった場合に遺体の搬送をよくお願いしている葬儀業者があるはずなので、そういった業者を聞いて、まずはその葬儀業者に搬送を依頼するというのが適当と思われます。搬送先は、元後見人の自宅や事務所というわけにいきませんから、近くの斎場等の安置所になることが多いと思います。業者の方も慣れていて休日や深夜でも対応してくれるのが一般的です。

もちろんその場合費用が発生します。当該費用を亡くなった本人の財産から支出するのか、いったんは元後見人が個人で立て替えるのかという問題が生じますが、民法上の応急処分義務(民法654条)と解する余地があり、そうであれば本人の財産から支出することができるといえます。常識的に考えても必ず発生するものであり、本人にとっても相続人にとっても必要有益な支出です。仮に元後見人が一時的に立替支出したとしても、財産を相続人に引き継ぐ時に精算することもできます。

そして、平行して親族の方に連絡をとり、ご意見を聞きながらその後の手続きを行っていくことになります。本当に身寄りがない方の場合には、やむを得ず元後見人が喪主として最低限の葬儀を行うこともあります。このあたりになるとどこまでやるべきかというのはさらに悩ましく、専門職によっても意見は分かれるかもしれません。結局ケースバイケースの対応をそれぞれの判断で行っているというのが実状です。家庭裁判所も明確なことはなかなか言いませんが、基本的には常識に従った対応であれば許容しているものと理解しています。

いずれにしても、死後事務で大事なのは、「もう権限も義務もない」と言って何もしないことが通用するわけではないということです。

高齢化社会が進むにつれて後見申立も増加し、数年前に比べれば社会での後見制度の認知度は明らかに高くなっています。しかも昨今は親族後見人選任率よりも専門職後見人(弁護士や司法書士など)選任率が上回っています。そうであれば必ず生ずる死後事務については、法律でもう少し明確なルールを定めるべきと思います。それまでは元後見人が悩みながらもひとつひとつ誠実に対処していくほかありません。

(亀井真紀)

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