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2014年7月 7日 (月)

市民裁判傍聴と開廷表の事前開示問題

私は、第二東京弁護士会の法教育委員会の委員として、中高校等の生徒に加えて、社会人の皆さんの裁判傍聴の引率を月に1~2回程度のペースで行っています(無料ですので、興味のある方は第二東京弁護士会のWEBサイトをご覧下さい。
http://niben.jp/manabu/service/saiban.html)。

近時、市民の皆さんの裁判傍聴は、以前と比べて随分普及してきたように思います。裁判は公開のものですから、誰でも自由に傍聴することができますし、お金もかかりません。裁判員裁判制度も始まって、市民にとって司法というものが少しずつ身近なものになってきていると言えるのかもしれません。

ただ、中高生たちは勿論のこと、多くの市民の皆さんは法律の素人です。訴訟手続のことなど知らないという人がほとんどでしょう。そして、法的知識がないと、せっかく裁判傍聴をしても、何が行われているか理解できず、雰囲気だけを味わって、「なんか難しい話をしていたな~」で終わってしまいかねません。そうなると、傍聴をすることで、かえって司法を自分とは別世界のものと感じてしまい、司法を身近に感じてもらうためには逆効果ということになってしまうでしょう。そこで、ボランティアの引率弁護士を募り、傍聴前後に解説と質疑応答などをしながら、市民裁判傍聴会の引率を行っているのです。

ところで、裁判傍聴というものは、日によってかなり当たり外れがあるということを皆さんはご存知でしょうか?もし、皆さんが傍聴に行ったとしても、その日に皆さんが見たい事件をやっているとは限りません。仮に見たい事件があったとしても、傍聴席が満席で、傍聴できないということもよくあります。運よく傍聴席に座れたとしても、急に被告人が犯罪事実を否認したりして、その日の手続きが5分くらいで終わってしまうなんてことも決して珍しくありません。

そこで、我々法教育委員としては、「従来は」、傍聴予定日の1週間前に開廷表を閲覧し、傍聴予定日にどんな事件の公判が行われているのかを書き写し、事前に参加希望者の希望を聞いた上で、傍聴を希望する事件に優先順位をつけて、移動しやすい法廷の事件を選び、当日不測の事態があってもすぐに別の事件を傍聴できるように計画を練って裁判傍聴引率当日に臨んでいました。

ところが、2014年4月26日から東京地方裁判所が開廷表開示の運用を突然変更してしまい、当日にならないと開廷表を閲覧することができなくなってしまいました。先日の裁判傍聴引率の際は、仕方がないので8時20分の開門と同時に東京地方裁判所に行って、開廷表を大慌てで書き写してその場で傍聴の計画を練ったのですが、偶々事件数が極端に少なかったため、参加者の一部しか傍聴をすることができませんでした。もし、事前に開廷状況がわかっていたなら、日程を変更するなど、柔軟な対応をすることができたでしょう。

私は、なぜ突然開廷表の事前開示を止めてしまったのか、その理由を知りたくて、東京地方裁判所の広報課に直接聞きに行きました。しかし、その回答は以下のような非常に残念なものでした。

問: 「今、刑事事件係で広報課に行けば事前に開廷表を見せてもらえると聞いたのですが」
答: 「4月27日以降のものはお見せできません」
問: 「どうして突然見られなくなったんですか?何かあったんですか?」
答: 「サービスとしてやってきた開廷表事前開示の運用を変えたということです」
問: 「いえ、そうではなくて、運用を変えた理由を教えて下さい」
答: 「理由は、裁判所が必要性がないと判断したからです。」

運用に関する裁量権を持たないであろう窓口の人と議論をしても仕方がないので、それ以上は聞きませんでした。法教育委員会に報告をして、弁護士会から東京地方裁判所に運用改善の申し入れをしようということになりました。

ただ、市民が必要としているサービスを取りやめる理由が裁判所の側に必要性がないことという裁判所の態度はいかがなものかと思います。
確かに、裁判傍聴自体を拒否したわけではないので、裁判公開の原則に違反しているとまでは言えないかもしれません。

しかし、裁判を市民に対して開かれたものにすることには、公正な裁判を確保するために広く市民にチェックをしてもらうというのみならず、司法を市民に身近なものにして、裁判所で行われていることは決して市民生活と別世界のものではなく、自分たちと関わりのあることなのだということを実感してもらうという側面があると考えます。司法を自分たちに身近なものと感じることができれば、司法が抱えている問題が、法律家だけにまかせておけばいいものではなく、国民全体で改善していくべき問題であると認識することができるでしょう。
国民全体で改善していくことで、司法は市民にとってよりよいものとなっていくことができるんではないでしょうか。

そう考えれば、裁判所は、より一層市民による裁判傍聴を促進する運用をしていくことが望ましいといえます。今回の運用変更は、市民に開かれた裁判所とは真逆の方向に行ってしまいました。東京地方裁判所が考え方を改めてくれることを切望致します。

(髙木良平)


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