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2014年7月16日 (水)

弁護士「先生」

弁護士は,業務を遂行するなかで,相談者,依頼者との間で,メール,手紙を交わす機会が多いです。
そして,その冒頭,宛名書きには,「○○さん」,「○○先生」,「○○弁護士」,「○○様」,「○○弁護士様」,という風に実に多様な敬称が用いられています。この中で最も多く目にする敬称が「先生」です。ここで,弁護士が「先生」と呼ばれる理由について考えてみました。

辞書を引くと,「先生」という言葉には,以下のような意味があるようです。

①先に生まれた人
②学問,技術,芸能を教える人
③親しみやからかいの意を含めて呼ぶ称

 それぞれの意味について,検討を試みると,①については,年上の依頼者や弁護士が年下の弁護士のことを先生と呼ぶ場面は多いですよね。
②については,弁護士という職業は,本来的には,教師のように物事を教える立場の人ではなく,言葉(弁)で人の権利を護る仕事をする立場の人だと考えます。したがって,後輩弁護士が先輩弁護士のことを先生と呼ぶ点については,②の意味はあてはまりますが,お客さんである市民の方との関係ではあてはまりません。
③については,現在においても,(残念なことではありますが)市民の方の弁護士に対する「高い・恐い・遠い」というイメージがあることに照らすと,この意味もあてはまるとは言い難いです。

私は,メールや手紙で自らが「先生」と呼ばれることに少なからず疑問を持っていました。ある日,依頼者の方と雑談をする中で,「なぜ弁護士のことを先生と呼ぶのでしょうか?」と率直に聞いたことがあります。その方は,少し悩まれた末に,「やはり弁護士は知識が豊富で,一般の人が持っていないような能力があるからだと思います。」という回答をしてくれました(なお,弁護士に対するイメージについても聞いたところ,「(敷居が)高い」,「恐い」という回答でした。)。

実は,辞書には,もう一つの意味が記載されています。

④医師,弁護士など,指導的立場にある人に対する敬称

依頼者の方の回答は,概ね④の意味を指しているものと思われます。

弁護士が豊富な知識を要求されていることはその通りですが,このことは弁護士に限らず民間企業に勤めている社会人一般にもあてはまると考えられます。そうすると,豊富な知識を駆使して,指導や助言をする点に,弁護士が「先生」という敬称を用いられる所以となりそうです。

弁護士による指導や助言の内容は,それまでに蓄積された経験によって影響を受ける側面もあります。そして,その経験こそ,依頼者の抱えている事情や事件から学んで得た産物なのです。そうすると,依頼者の方も,ある意味では,先生と位置付けることができるのではないでしょうか。このように考えると,依頼者も弁護士と対等の立場であるべきで,上下関係の意味合いを含む④の意味にも疑問が生じます。

私は,「あなたは,なぜ先生と呼ばれるのでしょうか?」と問われたら,沈黙してしまうでしょう。そして,「○○さん,と呼ばれる方が嬉しいです。」と自分の気持ちを素直に伝えると思います。

(池田征弘)


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