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2014年3月 6日 (木)

森元首相の発言から「反省」とはなにかを考える

1 森元首相の「必ず転ぶ」発言

 東京五輪・パラリンピック組織委員会会長である森喜朗元首相が、ソチオリンピックフィギュアスケート日本代表の浅田真央選手が「大事なときは必ず転ぶ」等と発言したことが大変話題になりました。この発言は、前後の文脈からは、団体戦に出場させずに個人戦に集中させてあげればよかったというような趣旨のように解釈できました。しかし、それでも浅田選手を傷つけてしまうような軽率な発言であったように思います。

 その後、森元首相は、この発言について、「反省しなければならない。思いを正しく伝えられなかったことは残念だ。」と発言したのですが、さて、皆さんはこの発言を聞いて森元首相が反省したと思いますでしょうか?

2  「反省」とは何か?

 刑事事件の弁護人をしていると、被告人が罪を認めている所謂自白事件を多く担当します。自白事件においては、被害者の被害回復や、被告人の反省をいかに深めるかが大切です。そこで、自白事件の弁護人をする度に、被告人と一緒に反省とは何かを考え、他の弁護士や裁判官、法律家以外の人たちとも意見交換をする中で、自分なりに反省とはこんなものではないかという以下のような考え方に辿り着きました。

反省していると評価されるための要件は、①自分がしてしまったことの意味(どんな人にどんな被害を与えるのか等)を理解し、②自分がなぜそんなことをしてしまったのかという原因を探り、③二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な防止策を実行することであると考えます。ここまでして初めて、この人はもうやらないなと思ってもらえるのではないでしょうか。

自分で「反省しています」と言えば反省していると評価してもらえるというような単純なことではないと思うのです。逆に、安易に「反省しています」という人ほど反省などしていないとすら言えるでしょう。

3 森元首相は反省していると言えるでしょうか?

 では、森元首相は反省していると言えるでしょうか?

まず、①自分がしてしまったことの意味を理解していると言えるでしょうか?浅田選手が「大事なときに必ず転ぶ」という発言をすることは、浅田選手個人の心を傷つけるだけでなく、浅田選手を応援する人達やオリンピック関係者全体からの信用を失いかねない発言と言えるでしょう。

しかし、森元首相は「思いを正しく伝えられなかったことは残念だ」と述べるのみなので、発言だけを見れば、そんなつもりじゃなかったと弁解しているだけのように見えます。それを言われた浅田選手がどう感じたかや、他の関係者達がどのように感じたかについてまで考えが及んでいないように見えます。

この時点で既に①の要件すら満たしていないのですから、森元首相が反省していると評価することはできないでしょう。

4 森元首相の失言の原因と防止策

 既に反省はしていないという結論が出てしまいましたが、森元首相の度重なる失言の連続の原因はどこにあるのでしょうか?

 これはおそらく、自分の置かれている立場と、自分の発言の持つ影響力を理解していないということと、何よりも言われた人がどう思うか何も考えずに発言をしているからであると考えます。

 しかし、この原因を排斥して再発を防止するためには、森元首相に自分の置かれている立場と発言の影響力を理解させ、なおかつ言われた人の心情に配慮しながら発言させなければなりません。これは極めて困難な作業です。

5 結論

 反省だけなら猿でもできるなどというフレーズが流行ったこともありましたが、本当に反省していると評価されるためには、実は非常に難しい作業を要求されるものです。少なくとも、「反省」とは何かを考えることもなく、安易に「反省」という言葉を使うべきではないでしょう

(高木良平)

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