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2014年3月

2014年3月20日 (木)

教育委員会改革の方向性に異議あり

 今朝、泉佐野市の教育委員会が今年1月、原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を市内の小中学校の図書館から回収していた旨の報道がありました。

 この報道に接して一番初めに私が考えたのは、本当に教育委員が協議を重ねた上での決定なのだろうかということでした。というのも、教育委員会の決定とされるものの中には教育委員の審議を経ずになされているものが多いからです。

 現に、昨年問題になった明石市教育委員会の「はだしのゲン」の閲覧制限は、教育長が委員会に諮らずに行ったものでした。同市教育委員会は、後にこの点が手続きの適正を欠いたとして決定を取り消し、改めての閲覧制限はしませんでした。このような前例があることから、今回も同様に、教育長の暴走ではないかと疑ったのです。
 
 そこで泉佐野市の教育委員会に電話して事実の確認をしました。結果は案じた通り、教育委員会の審議や議決を経たものではないとのことでした。教育長が独断で回収を指示したのです。
 
 どうしてこんなことが起きるのか、教育委員会の決定とは何なのか。一般の人にはなかなかわかりにくい話なので、少し説明します。
 
 下の図は文科省のホームページから転載した教育委員会組織のイメージ図です。大きな四角で囲まれているのがいわゆる教育委員会、広義の教育委員会です。この大きな四角の中の上の方に委員長以下の委員が並んでいて、これまた小さな四角で囲まれています。これが委員による委員会、狭義の教育委員会です。そしてこの狭義の教育委員会の長が教育委員長、そして教育委員の中から選ばれる教育長が教育の事務全般を掌握します。教育長が教育委員の中から選ばれる、と言いましたが、この人選は最初から事実上決まっています。というのも、教育長のみが自治体の常勤職員(比較的多くは校長経験ある教員、他は生え抜きの自治体職員)で、他の委員は非常勤の各界有識者だからです。

Photo


 そのような仕組みの下、教科書選定など主だった重要事項は狭義の委員会が決定し、日常の事務は教育長以下の事務局が決定しています。そしていずれの決定も「教育委員会」の決定とされるわけです。
 
 そこでしばしば問題になるのが、今回のように、教育長がことの重要性に気付かず、あるいは故意に無視して、委員会に諮らないで決定をしてしまうケースです。明石の「はだしのゲン」閲覧制限もそうでしたし、一昨年の大津のいじめ自殺事件についての同市教育委員会の初期の対応も教育長が独断で行ったものでした。
 
 教育長の判断に信用が置けないというつもりはありませんが、有識者を交えた合議を行えば、より慎重な結論を出すことができたのではないかと思います。今回の泉佐野市の例では市長の強い意向が働いたとのことです。確かに、収入の全部を市に依存している教育長では市長に異を唱えることは難しいでしょう。しかし外部の教育委員も交えて審議をすれば、市長の意に反する結論を出すことも可能だったと思われます。
 
 同市教育委員会は、市内の校長の抗議などを受け、いったん回収した「はだしのゲン」を各校に返還するようですが、その後の対応も注視する必要があります。
 
 なお、このような事態を見るにつけ、この3月13日に発表された「教育委員会制度の改革に関する与党合意」は改革の方向性に疑問があると言わざるを得ません。合意は次のようにいいます。
教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者(新「教育長」)を置くこととし、首長が議会の同意を得て任命・罷免する。「教育委員長=教育長」とすることで、新「教育長」が、迅速かつ的確に、教育委員会の会議の開催や審議すべき事項を判断できるようにする。
 
 しかしこれではますます今回のように教育長が暴走しやすくなるのではないでしょうか。この教育委員会制度改革の方向性には大いに異議があります。

(櫻井光政)


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2014年3月12日 (水)

3月11日に願うこと

東日本大震災・原発事故が起きた2011年3月11日から3年が経過しました。たくさんの方が3年という節目に思うことを綴っているようです。

わたし自身、色々な方とあの日を思い出し、早いような長かったようなという話をしています。しかし、被災者・被害者の方にとっては昨日も今日も明日も何かが変わるわけではありません。ある避難者の方は、あの日からずっと船に乗って酔っているようだと話していました。

区切りとか節目とか言うのは被害にあっていない第三者だから言える言葉なのかもしれません。原発事故に関して言えば、事故そのものが終わったのは一体いつなのでしょうか。そもそも今現在終わったといえるのでしょうか。一瞬で何かを奪ってしまう交通事故などとは大きく異なります。

残念ながら放射線の放出は1日や2日で終わったわけではありません。全ての地域の避難指示が完全に解除されるのが一体いつになるのか見当もつかない状態が続きます。人によっては放射線被ばくの不安は一生続くのかもしれません。そういう意味で3年という経過に実はあまり意味はないのでしょう。

 初期の避難所相談、弁護士会の都内企画相談、福島県内の仮設等での相談、原発被災者弁護団の活動での相談などを通じて、おそらく300名近くの被害者の方の話を聞いてきました。

故郷に帰りたい人、帰りたくない人、帰還の意思について問われることすら辛いという人、避難区域による賠償の格差に不満を持つ人、子供を被ばくさせた不安で自責の念にかられている人、健康や精神状態を悪化させてしまった人、仕事のやりがいを失った人、趣味や楽しみを失った人、狭い仮設での人間関係に悩んでいる人、家族の別離により関係が悪くなってしまったという人、東京電力や国を恨んでいる人、もう何も信用できないという人、福島から来たということを隠したい人、福島を捨てたと言われ苦しんでいる人、もう何も考えたくないという人・・・ただただ話を聞くばかりで具体的な救済の道筋を示せないはがゆさをたくさん味わってきました。

それぞれの価値観や選択を第三者がいい悪いと言うことはできません。私ができることは、目の前の被害者の方が今言われたら少しは楽になるかもしれないことは何だろうと考えること、そして慎重に言葉を選びながら話をすることだけです。それは時にはもはや法律相談ではないこともあります。ただ正直そんなことはどうでもいいのです。重要なのは、話をしてよかった、相談をしてみてよかったと僅かでも思ってくれるかどうかです。最近特に、弁護士の役割をそんな風にシンプルに考えています。

できれば多くの被災者・被害者の方がそう思える弁護士に出会えますように。自分もその一人になれますように。そして多くの方が早く、船酔いの状態から地に足のついた生活ができますように。

(亀井 真紀)

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精神発達遅滞の被告人への無罪判決が示唆すること

平成25年8月30日、京都地方裁判所で重度精神発達遅滞(田中ビネー知能検査ⅤでIQ25)の被告人に対して無罪判決が言い渡されました(判例時報2204-142)。

精神発達遅滞とは要するに知的障害のことです。侮蔑的な意味が含まれるとして現在はあまり好まれる表現になっていませんが、「知恵遅れ」などと言われることもあります。

被告人は普通乗用自動車1台を盗んだとして常習累犯窃盗罪で起訴されていました。常習累犯窃盗罪という言葉は法律家以外の方にとって馴染みのない犯罪だと思いますが、簡単に言えば過去10年以内に窃盗で3回以上服役した人が更に盗みを働いたときに成立する犯罪です(盗犯等ノ防止処分ニ関スル法律3条参照)。

この件でも自動車を盗んだとされているのは平成24年9月27日ですが、被告人は平成15年ころから既に3回も窃盗罪で服役していました。

 重度精神発達遅滞の事例は心神喪失を理由に不起訴となる例が多く、起訴された後に裁判で心身喪失と認定される例は極めて稀です。本判決は重度精神発達遅滞の場合につき責任能力を否定した数少ない判例として実務上注目を集めました。

 この判決は、事例として珍しいだけではなく、二つの点で重要な示唆を含んでいると考えています。

 一つ目は知的能力に問題のある被告人の表面的な言葉に惑わされてはならないという点です。

 最初に述べたとおり、常習累犯窃盗という犯罪は簡単に成立する犯罪ではありません。過去に少なくとも3回は刑事裁判を受けているはずです。何度となく機会がありながら被告人の責任能力は適切に評価されてきませんでした。

 被告人の責任能力を見抜けなかった理由の一つには、被告人が捕まる度に謝罪や反省の弁を述べていたことがあるようです。こうした言葉が述べられると「悪いことだと認識できているのだから責任能力を問うことに支障はないはずだ。」という発想に陥りがちです。

しかし、本件の被告人は「車を盗むのはいいことかわるいことか」という問いかけに対して「悪いこと」と答えはするものの、「なにがどう悪いの」と問いかけても応答できていませんでした。盗みが悪いことだという漠然とした認識はあったとしても、なぜそれをしてはいけないのかが全く理解されていなかったのです。

従前の裁判が被告人の更生に寄与できなかったのは、法曹関係者がこの点を看過していたからだと思われます。誰かがおかしいと思って責任能力の有無を慎重に調べていれば、裁判はより意味のあるものになっていたはずです。

 二つ目は司法と福祉とが適切に連携していれば、過去に罪を重ねた知的障害者であっても、罪を犯すことなく社会生活を営むことができるという点です。

 この被告人は窃盗だけではなく強制わいせつ(未遂)での前科も有しています。しかし、強制わいせつでの再犯は窃盗での再犯とは異なりきちんと自制できていました。

 判決文を読むと、この差が生じた理由が、福祉による支援が得られていたかどうかにあることが分かります。

 被告人は平成23年2月に刑務所を出た後、京都市東部障碍者地域生活支援センターの介護福祉士から支援を受けていました。この介護福祉士は強制わいせつ未遂での前科等を考慮し、再犯を起こさせないように留意しながら被告人を支援してきました。結果、被告人は強制わいせつが悪いことをある程度理解し、自制できるようになりました。

このことは窃盗の場合について尋ねられた時の受け答えとの対比から読み取ることができます。強制わいせつについては「いいことか悪いことか。」という問いかけに対して「悪いこと。」と答えた後、「どうして悪いことなの。」という問いかけに対して「かわいそうやからや。」と応じることができています。

 しかし、この介護福祉士は被告人の生活範囲に鍵を付けたままの自動車が多くあるということを認識しておらず、自動車盗は十分に警戒していませんでした。

 結果、自動車盗と強制わいせつとで、被告人の悪いことの認識や理解度には差がつくことになりました。そのことは被告人による本件犯行を許すことへと繋がりました。

 ただ、ここで私が指摘したいのは介護福祉士の職務の適否ではありません。重要なのはIQ25の重度精神発達遅滞の人であっても、適切なケアさえ受けられていれば、悪いことを悪いと認識した上で、罪を犯すことなく社会生活が営めるということです。この判決は福祉が知的障害者による累犯を阻止する希望となり得ることを示しています。

 もっと早く責任能力について適切な評価がなされ、福祉からの支援を受けていれば、被告人の人生は変わっていたかも知れません。犯罪の被害に傷つく人も生まれなかったかも知れません。最初に捕まった時点で、確かな知見を持った弁護人が、被告人に違和感を覚え、鑑定を請求し、十分な申し送り事項とともに被告人を福祉と結びつけていれば、被告人を含め不幸になる人はずっと少なかったと思います。

 責任能力が問題となる事件に限らず、知識・経験の十分な弁護人の関与は、裁判を意義のあるものにするために欠かすことができません。

 当事務所は刑事弁護に特に力を入れています(http://keiji.sakuragaoka.gr.jp/)

 刑事事件に関してお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

(師子角允彬)

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2014年3月11日 (火)

出会い系サイトによる詐欺被害-サクラを使っていることの立証

悪徳商法の一種にサクラサイト商法という言葉があります。

サクラサイトとは「サイト業者に雇われた“サクラ”が異性、芸能人、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまして、消費者のさまざまな気持ちを利用し、サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、その度に支払いを続けさせるサイト」を言います(独立行政法人 国民生活センターHPより引用 
http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/sakurasite.html)。

 典型的なのは芸能人を騙るケースです。

手口としては、先ず「私は◯◯のマネージャーをやっています。彼女は悩みを抱えています。相談相手になってあげてくれませんか?」
などというメールが送られてきます。

 受け取った人がこれに応じると、メール交換にお金がかかる仕組みの出会い系サイトに誘導されます。そこで自称芸能人とのメールのやりとりが始まります。数多くのメールのやりとりを通じて被害者はお金を毟り取られて行きます。

 芸能人以外にも資産家が騙られるケースもあります。

 この場合には「私は年商◯億円の会社を経営する女性です。利害関係なしで話が出来る男性と会う機会がありません。会って話をしてくれたり、性交渉の相手になってくれたりすれば、謝礼としてお金を払います。」などというメッセージになります。これに応じると有料系の出会い系サイトに誘導され、やはりメールでのやりとりを通じて被害者はお金を搾り取られることになります。このタイプでのお金の搾り取り方は、女性から「会いたい」というメールがしきりに送られてくる割に、いざ約束を取り付けると「急な予定が入った。」などと連絡が入り、結局会えないことから「出会えない系サイト詐欺」と揶揄されることもあります。

 冷静に考えれば分かることですが、トップアイドルや有名な俳優がネットで適当に相談相手を選ぶことはありません。資産家の令嬢が話し相手や性交渉の相手をネットで見付け出そうとする可能性もないと断言して差し支えないと思います。メールは芸能人や資産家になりすました運営業者の職員、いわゆる“サクラ”が送受信しています。しかし、被害者は自分が芸能人や資産家とメールを交わしていると思って、せっせとメールを送信し、有料出会い系サイト運営業者からお金を搾り取られて行きます。

 こうした詐欺がはびこる背景には、詐欺であることの立証が困難であることが挙げられていました。

 詐欺だからお金を返して欲しいと請求する場合、詐欺であることは被害者の側に立証責任があります。言い換えれば、メールの相手方が運営業者の息のかかったサクラであることは被害者の側で立証しなければならないということです。しかし、メールの相手方がサクラであることを立証するのは、内部告発者でもいない限り殆ど不可能ではないかと解されていました。立証責任の壁はサクラサイトの被害者の救済を大きく阻んできました。

 しかし、近時、サクラサイト被害の問題に対して画期的な裁判例が出ました。東京高裁平25・6・19です(判時2206-83)。

 この件では「ファイナンス系会社を経営する社長」「財務管理事務局」「セレブな処女姫」「年商100億円の会社経営者」「精子バンク医療科学研究所の職員」「グローバル投資銀行頭取婦人」「IT企業取締役」「外科医」「SE」「銀行員」など様々な肩書きを持った女性が登場します。

 被害者は有料のポイントを購入してこれらの女性達とメールを交わします。被害者は女性達と会う約束を取り付けるところまでは行くのですが、いざ会うとなると女性達は何かと理由を付けて約束を反故にします。こうした手口で被害者は2000万円以上ものお金を利用料金等の名目で騙し取られていました。

 本件は詐欺を理由に被害者がサイトの運営業者に対して支払ったお金を返すよう請求した事件です。

 裁判所は先ず「見も知らない控訴人(※ 被害者のことです)に対し、指示に従えば数百万円ないし数千万円という多額の金員を供与する、面談や実験対象となってくれれば相当の対価を支払う等」の話について「あり得ない不自然な話で、そのいずれについても全く実現していないのであり、本件相手方等がこれを実現する意思、能力を有していないことは明らかである」とメールの内容自体から申し向けられた事実が虚偽であることを認定しました。

 その上で「専用回線を用いさせ…るなどして、通常の送受信以外に高額なポイントを消費させていること」「際限なく…手続の繰り返しを要求していること」「面会や金員の手渡しを約束してはキャンセルすることを繰り返し、極めて多数の送受信を余儀なくさせていること」などを指摘し、「これらの指示に合理性は見出しがたく、その目的は、いずれも控訴人にできるだけ多くのポイントを消費させ、被控訴人(※ サイト運営業者のことです)に対し、高額の金員を支払わせることにあることは明らかである。」とメールの相手方の意図を認定しました。

 そして、「高額な利用料金を支払わせることによって利されるのは被控訴人をおいてほかにない」にもかかわらず、「本件各相手方が控訴人に利用料金を支払わせようとしている事実」から「本件各相手方に利用料金の負担義務が課せられてない事実」「本件各相手方が被控訴人の利益を意図して行動している事実」を推認し、「控訴人が本件各サイトにおいてメール交換した本件各相手方等は、一般の会員ではなく、被控訴人が組織的に使用している者(サクラ)であるとみるほかはない。」と問題のサイトがサクラサイトであることを認定しました。

 結果、被害者から利用料名下に多額の金銭を支払わせた行為は詐欺に該当するとして、サイトの運営業者に利用料等の支払を命じました。

 この裁判例が画期的なのは、メールの文面や態様、出会い系サイトの課金システムなど、被害者側にある(あるいは被害者側で入手可能な)資料をもとに経験則を活用しながら詐欺被害を立証する途を開いたことです。こうした立証方法を認めたことは、同種の被害に遭っている方の救済や、悪質業者の撲滅に大いに役立つと思われます。

 課金のルールが書かれた利用規約や送受信したメールさえ残っていれば、騙し取られたお金は返してもらえる可能性があります。

 お悩みの方は諦めずに、ぜひ当事務所にご相談ください。

(師子角允彬)

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2014年3月10日 (月)

携帯騙し取る、「あさひ信販」型詐欺に注意

融資の信用調査名目で高価な通信機器を騙し取る詐欺が流行っているようです。今日相談に来た方(仮に「Aさん」と呼びます)は、ネットで知ったあさひ信販(新宿区西新宿8-11-13、電話03-4283-8441)に教育ローンを申し込んだところ、信用調査の意味で携帯電話の購入をできるかどうか確かめたいと言われ、機器を指定の上携帯電話契約をするように指示されました。

 Aさんは指示に従って携帯電話契約を済ませたところ、更には確認のためそれを指定先に送るようにと指示されました。Aさんは指示通り、あさひ信販の指定送付先であるセキュリティサービスセンター(新宿区西新宿4-32-13-102、電話03-4283-8441)に携帯端末を送付しました。そしてそれ以降、あさひ信販とは連絡が取れなくなってしまいました。確かに携帯電話の新規契約が出来るかどうかは信用の目安になります。あさひ信販は、そこを逆手にとって携帯端末を騙し取る詐欺だったのです。

 Aさんは城東警察署に相談に行きましたが、「あなたも悪いから」と言われて取り合ってもらえませんでした。このように警察の動きが悪い場合は同種の詐欺事犯が長期間はびこることが予想されます。「あなたの信用を見たいから、携帯の契約をして来てくれ」などと言われたら100%詐欺会社です。くれぐれも騙されないように注意して下さい。

(櫻井光政)

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2014年3月 7日 (金)

弁護士も大変です。

やっと、大好きなスキーに行きました。予定をして日を空けておいても、他の日が一杯になれば、結局、空けて置いたはずの日に裁判の期日や、打合せの約束が入ってしまいます。なので、延び延びになっていた計画でした。
 
 青空の下、スキー場の頂上ロッジで、深呼吸をしていたら、肌身離さず持ち歩いている携帯が鳴りました。「はい」「先生、僕の執行猶予何年だった?」「えっと、君は、私が弁護した人かな?」「そうです、3年前」

困った、執行猶予が何年かまで全部は覚えていない。結局、事務所の保管倉庫の中に記録が残っているはずなので、戻ってから調べて上げることになりました。それから、借金の話しになり、債務整理の相談に事務所に来るという約束をしました。 

でも、来るかしら、3年前に、自分の刑事裁判の日に来なかった人です。そうだ、彼だ。

被告人が来ないと弁護士は大変です。裁判官に「なぜ来てないのですか」と責められて、上から下まで汗びっしょり、・・・「来ると約束したのですが」・・・「次は、家に迎えに行って、一緒に来ます。」 

 後で聞くと、裁判が怖くて怖くて堪らないので、お酒を飲んでしまって朝起きることが出来なかったそうです。気の小さい人なんです。 やっぱり今度の約束も来ないかもしれません。

 弁護士になってから、事件から解放される日は1日もありません。いつでも、事件のことを考えています。何か良い解決方法はないのか、どういう言い方をすれば、納得して貰えるだろうか。また、どこかに遊びに行っても、携帯が通じてしまう昨今、依頼人からの連絡はどこでも受けることが出来ます。情報社会で、なんでもスピーディに答えが手に入る現在では、いつでも相談出来るということが、依頼者の安心のために必要なことのように思います。 

だから、弁護士の方も、自分の携帯が通じなかったり、メールが読めないという場所にいると、留守の間に何かのっぴきならないことが発生しているのではないかと心配になって落ち着きません。

 弁護士の休暇は、弁護士が早死にしないために絶対に必要なことなのですが、
なかなか難しいことのようです。

(神山昌子)

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2014年3月 6日 (木)

森元首相の発言から「反省」とはなにかを考える

1 森元首相の「必ず転ぶ」発言

 東京五輪・パラリンピック組織委員会会長である森喜朗元首相が、ソチオリンピックフィギュアスケート日本代表の浅田真央選手が「大事なときは必ず転ぶ」等と発言したことが大変話題になりました。この発言は、前後の文脈からは、団体戦に出場させずに個人戦に集中させてあげればよかったというような趣旨のように解釈できました。しかし、それでも浅田選手を傷つけてしまうような軽率な発言であったように思います。

 その後、森元首相は、この発言について、「反省しなければならない。思いを正しく伝えられなかったことは残念だ。」と発言したのですが、さて、皆さんはこの発言を聞いて森元首相が反省したと思いますでしょうか?

2  「反省」とは何か?

 刑事事件の弁護人をしていると、被告人が罪を認めている所謂自白事件を多く担当します。自白事件においては、被害者の被害回復や、被告人の反省をいかに深めるかが大切です。そこで、自白事件の弁護人をする度に、被告人と一緒に反省とは何かを考え、他の弁護士や裁判官、法律家以外の人たちとも意見交換をする中で、自分なりに反省とはこんなものではないかという以下のような考え方に辿り着きました。

反省していると評価されるための要件は、①自分がしてしまったことの意味(どんな人にどんな被害を与えるのか等)を理解し、②自分がなぜそんなことをしてしまったのかという原因を探り、③二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な防止策を実行することであると考えます。ここまでして初めて、この人はもうやらないなと思ってもらえるのではないでしょうか。

自分で「反省しています」と言えば反省していると評価してもらえるというような単純なことではないと思うのです。逆に、安易に「反省しています」という人ほど反省などしていないとすら言えるでしょう。

3 森元首相は反省していると言えるでしょうか?

 では、森元首相は反省していると言えるでしょうか?

まず、①自分がしてしまったことの意味を理解していると言えるでしょうか?浅田選手が「大事なときに必ず転ぶ」という発言をすることは、浅田選手個人の心を傷つけるだけでなく、浅田選手を応援する人達やオリンピック関係者全体からの信用を失いかねない発言と言えるでしょう。

しかし、森元首相は「思いを正しく伝えられなかったことは残念だ」と述べるのみなので、発言だけを見れば、そんなつもりじゃなかったと弁解しているだけのように見えます。それを言われた浅田選手がどう感じたかや、他の関係者達がどのように感じたかについてまで考えが及んでいないように見えます。

この時点で既に①の要件すら満たしていないのですから、森元首相が反省していると評価することはできないでしょう。

4 森元首相の失言の原因と防止策

 既に反省はしていないという結論が出てしまいましたが、森元首相の度重なる失言の連続の原因はどこにあるのでしょうか?

 これはおそらく、自分の置かれている立場と、自分の発言の持つ影響力を理解していないということと、何よりも言われた人がどう思うか何も考えずに発言をしているからであると考えます。

 しかし、この原因を排斥して再発を防止するためには、森元首相に自分の置かれている立場と発言の影響力を理解させ、なおかつ言われた人の心情に配慮しながら発言させなければなりません。これは極めて困難な作業です。

5 結論

 反省だけなら猿でもできるなどというフレーズが流行ったこともありましたが、本当に反省していると評価されるためには、実は非常に難しい作業を要求されるものです。少なくとも、「反省」とは何かを考えることもなく、安易に「反省」という言葉を使うべきではないでしょう

(高木良平)

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2014年3月 2日 (日)

経営者保証に関するガイドライン

平成26年2月1日に、経営者保証に関するガイドラインが施行されました。
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2014/140130keiei.htm
だいぶ難しい話しですが、今回はこのガイドラインを紹介してみたいと思います。

銀行等の金融機関は、中小企業に融資する際、当然のように社長に連帯保証を求めてきました。この連帯保証は、俗に経営者保証と呼ばれています。この経営者保証があるため、会社の経営が立ち行かなくなった経営者は、個人としも破産等をせざるを得なくなり、経営者保証は一種のペナルティーとして機能してきました。経営者保証が当然のように求められていることから、経営者保証が起業を阻害しているとか、これがあるから破産直前まで金融機関に相談できないなど、様々な批判が寄せられてきました。

このガイドラインは、不必要な経営者保証を抑制すると共に、経営者保証を求める場合でもその範囲を合理的な範囲に制限させるため、国の関与の下、日本商工会議所と全国銀行協会が中心になり策定されたものです。法律ではないので強制力はありませんが、多くの金融機関は、このガイドラインを遵守しますと表明していますので、中小企業経営者と金融機関の関係に一石を投じるのではないかと期待されています。

 さて、肝心の内容の説明をさせていただきたい所ですが、内容は非常に複雑かつ難しいので、ここでは要点のみ紹介したいと思います。もし、本ガイドラインに興味を持たれた方は、ぜひ当事務所への相談をご検討ください。

 このガイドラインは、
1 これから受ける融資の経営者保証の在り方を定めており、一定の場合には、金融機関に経営者保証を求めない可能性、代替的な融資手法活用の可能性の検討を求め、さらに経営者保証を求めるときは、その必要性等を丁寧かつ具体的に説明することを求めたり、漫然と融資額と保証額を同額にしないことを求めたり、一定の条項を保証契約に盛り込むことを求めたりしています。

2 また、過去に結ばれた経営者保証についても、経営改善等の理由で見直しを求められたときで、一定の条件を満たすときは、1の場合と同じ様な対応を求めています。

3 特に、事業承継に伴い、退任する経営者から保証契約の解除を求められたときで、一定の条件を満たすときは、実質的な経営権の有無、保証契約以外の債権保全状況、返済能力等を勘案して、適切に対応することを求めると共に、後継者に漫然と保証契約を引き継がせるのではなく、一定の場合には、1と同じ様な対応を求めています。

 なお、上記の「一定の場合」というのは、それぞれの場合で多少の差はありますが、おおよそ以下のとおりです(詳しくは法律相談時にご質問ください)

ア 融資を受けている方が中小企業・小規模事業者等であること
イ 保証人が個人で、中小企業の経営者またはこれに準ずる人であること
ウ 融資を受けた者(債務者)と保証人が弁済について誠実で、債権者(金融機関等)の求めに応じて適時情報開示し、正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明すること
エ 反社会的勢力ではなく、その恐れもないこと
オ 法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離しており、報酬、賞与、配当、貸付等が社会通念上適切な範囲を超えないこと等
カ 財務状況及び経営成績の改善を通じて返済能力の向上に努めていること

(小口幸人)

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2014年3月 1日 (土)

クライアントの立場に立って

先日,歯の調子が悪くなり,歯科にいってきました。診断の結果,奥歯2本を抜歯した上で,インプラントを2本埋め込むという,結構大がかりな治療が必要となりました。

私にとって,当然ながら歯科は全くの専門外の分野です。それまでのちょっとした治療と違って,本格的な手術に近い治療になるわけなので,歯科に行くまでも色々な不安がありましたし,わからないことだらけでした。

歯科に行ってみると,主治医の先生が,歯の現状を写真などを交えて丁寧に説明してくれました。さらに,最適な治療法・インプラントを入れる場合の手術の術式・予想されるリスク等を,CT画像やレントゲン写真などを駆使して,「ここに骨があるので,10㎜のインプラントをこの角度で打ち込んでやれば安全マージンを十分取って手術ができる」などと,素人にもわかりやすく説明してくれました。

こうした事前説明があったので,これから何をするのか,どのようなリスクがあるのかがはっきりわかり,不安もなく手術に臨むことができました。
(そうはいっても,抜歯とインプラントの埋設手術自体は,口の中で土木工事が行われている様な,世にも恐ろしい体験だったのですが(笑))

自分が専門家のサービスを受ける立場に立って,改めて気付かされたことはいろいろありました。
1 専門家にとっては恐らく当たり前のことであっても,依頼者にとっては初めての体験であり,全くわからないことだらけである事。
2 不安や恐怖の半分は,「何が起こるかわからない」未知への恐怖であること。そしてこれが一番怖いこと。
3 丁寧に説明と対応をするという,当たり前のことによって,クライアントの理解と満足度が大きく変わってくるであろう事。そして,それが信頼の獲得に繋がっていくこと。

もちろん,これまでもわかっていたつもりでしたし,心がけてきたつもりなのですが,今回自分がクライアントの立場に立ってみて,改めてこうしたことが実感できました。貴重な経験として,今後の弁護士業務にも行かしていきたいと思います。

新谷泰真


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