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2013年11月22日 (金)

保護者制度と精神保健福祉法の改正

 「保護者」というと一般的には子供の親、親権者というイメージがあるのではないでしょうか。実は、精神保健福祉法上、精神疾患にある人を保護するために「保護者」という制度があります。これは親権者とは全く違う意味です。

 精神障害者については、後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となるとされています(精神保健福祉法第20条)。扶養義務者が数人いるような場合は家庭裁判所により保護者が選任されることもあります。

さらに、保護者がおらず、また保護者がその義務を行うことができないときは精神障害者の居住地を管轄する市町村長が保護者となります。

 保護者は、精神障害者の財産上の保護も担いますが(成年後見人とは異なります)、役割として一番大きいのは、医療保護入院の同意権を持つことです。医師が精神病患者の入院が必要と判断した時に、本来であれば本人の同意が必要なところ、仮に本人が入院を拒んでいても保護者の同意により入院させることができるというものです(精神保健福祉法第33条)。
 
このような保護者制度が精神保健福祉法の改正により平成26年4月1日より廃止されます。そして、医療保護入院は指定医の診断があれば保護者の同意がなくても、家族等のうちのいずれかの者の同意で可能となります。ここでいう「家族等」には、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人が含まれます。改正法施行前の現在と大きく異なるのはこれらの者に順位がついていないことです。

改正の背景には、これまでの保護者の権限が家族にとっては重い負担になっていることが挙げられます。例えば、精神疾患の妻を持つ保護者の夫は妻が入院を拒んでいる時に本人のためと思って同意しても、結果的にそれを理解しない本人から恨まれることになってしまうのです。そのような親族の辛い状況は珍しくなく、精神的負担を大きくしているのも事実です。逆に保護者の同意がなければ、入院の必要性があったとしても市町村長の同意をとらない限り入院させることができず、そのことが治療の妨げになっていると言われることもあります。

医療保護制度が現場では必ずしも上手くいっていないことが多々あり、そういう意味では、上記改正も理解できるところではあります。

しかし、保護者の同意を不要とし、一方で「家族等」という広い範囲の人からの同意で足りるとすることは強制的な入院を事実上広げることにもなりかねません。

また、「家族等」はまさに家族であり、保護者でないにせよその負担は結局変わらないのではないかという見方もあります。さらに、家族等に含まれる人達の間で意見が分かれた場合に医師が事実上悩ましい立場に置かれることもあり得ます。

私達弁護士にとってもこのような悩みは他人事ではありません。精神障害者の成年後見人という立場で医療保護入院に関わることがあり得るからです。成年後見人は改正前までは保護者として第一順位の権限を持っていますが、来年4月以降は第一順位ではないので医療保護入院の同意を巡って他の家族と意見対立する可能性もあります。

衆議院厚生労働委員会の附帯決議では、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示するとありますが、その策定を急ぐ必要があるように思います。

いずれにしても入院は任意が原則であるところ、医療保護入院は本人の意思に反する以上例外的なものであり慎重な判断が必要です。改正法は精神科病院の管理者に退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う精神保健福祉士等の設置、地域援助事業者との連携、退院促進のための体制整備を義務づけています。実際わたしが関わったことのある精神科病院でも医師やケースワーカー、福祉関係者等何人もの人がひとりの患者のために退院に向けた環境調整を一生懸命サポートしている例がありました。

あくまでも保護者制度の廃止は、このような早期退院を目指した人的体制の充実とセットで行わなければなりません。そして、我々弁護士もその一端を担えればと思っています。

(亀井真紀)

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