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2013年11月 3日 (日)

「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」に関するパブリックコメントを提出しました。

文科省中教審教育制度分科会は,去る10月11日「今後の地方教育行政の在り方について」と題する審議経過報告を発表し,これに対するパブリックコメントを求めていますが,この報告では教育委員会の形骸化を一層進める方向性が明らかにされています。

しばしば機能していないと批判されることがある教育委員会ですが,だからといってその機能を奪うのは本末転倒。ブレーキの利きが悪いからブレーキをなくそうという人はいないでしょう。機能が不全ならばその回復こそ模索すべきです。締め切りは11月5日と目前であることに気付いたので,慌ててコメントを送りました。以下は私が送信したパブリックコメントの全文です。

東京都大田区の教育委員を8年務めた経験から,審議会経過報告の,新しい教育長及び教育委員会の制度の方向性について反対します。以下その理由を述べます。

 今回の「改革」の理由に,責任者が不明確だという点が挙げられていますが,それならばそれを明確にすれば良いだけの話で,その責任者を教育長とする理由に乏しいと思います。現状では責任を負うべきは合議制の教育委員会だと思いますが,最終的な法的責任は当該自治体が負うことになりますから,あまり実益のある議論とも思えません。


 また,審議すべき事項を「限定する」必要性も,「一歩離れる」必要性も感じられません。あえてするなら必要的審議事項を定めれば良いのであって,余力のある教育委員会はそれ以外の事項全般にわたって審議できるようにする方が,あり方として優れていると考えます。

 合議体だと危機管理能力が不足するという意見は論外です。重大な事項であれば深夜でも早朝でも集まればよいですし,電話やインターネットの活用も可能です。即断すべき事項は教育長が即断して,後に事後承認を得るやり方でも一向に構わないでしょう。どんな組織でもそのように対応しているはずです。教育委員会ではそれができない,というのであれば,その人選こそを問題とすべきでしょう。

 制度と実態の乖離を改めるため教育長の任命権者を首長とすることには反対しませんが,他方で教育委員の職務権限を制約するのは反対です。また,「実態との乖離」を理由に首長を任命権者にしながら,それとの整合性を理由に,現在の「実態と異なる」首長の罷免権が広く認められようとしていることが窺われますが,出発点の「実態との乖離」の解消の目的からは逸脱するものですから反対です。

 教育の責任者を教育長とし,教育委員会の審議事項を制約し,且つ教育長の任免権を首長に委ねることにより,教育の中立性,安定性は,制度的に,大きく損なわれることになると考えます。

 以上を踏まえると,今回「新しい教育長及び教育委員会の制度の方向性」として最有力に提案されているA案の,「教育委員会は,首長又は教育長からの諮問を受けて答申を行うとともに,自ら首長又は教育長に対し,建議,勧告等を行う機関とする。」との案には到底賛成できません。

 諮問を受けて答申するのが原則となれば,教育委員会の形骸化は一層進むことでしょう。個別の教育課題とは離れた抽象的な教育目標の審議などに時間を取られることになり,教育の現場とは益々遠ざかることになると思われます。また,建議,勧告のような大掛かりな作業は,合議にせよ単独にせよ,教育委員のメンバーのみではできません。仮に教育委員会事務局の手を借りて行うということになれば,結局は首長・教育長の意を体現するような建議・勧告をする機関になるだけでしょう。現在比較的活発に活動している教育委員会のように,個々の具体的な課題について意見交換を行うことが,各教育委員の負担が少なく且つその持てる力を最大に発揮する方法であると考えます。

 A案は,教育委員の職務を制限することによって,その目的に反して,教育委員会のチェック機能を低下させるものと言わざるを得ません。

 以上から,今回示された「新しい教育長及び教育委員会の制度の方向性」について反対の意見を表明するものです。

(櫻井光政)

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