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2013年7月16日 (火)

名ばかり取締役と労災認定

 中央労働基準監督署で過重労働が原因で死亡したとされる取締役の男性に労災が認定されました。
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20130706ddlk11040248000c.html)。

 記事によると男性は「工事受注など営業活動に従事しており、実態は『名ばかり取締役』だった」とのことです。

 労働者災害補償保険法は労働災害による負傷・疾病・障害・死亡等を手厚く保護していますが、これは飽くまでも「労働者」にしか適用されません(労働者災害補償保険法1条参照)。労働者災害補償保険法は労働者に関する独自の定義規定を設けてはいませんが、これは労働基準法上の「労働者」に合致すると理解されています(大阪地方裁判所判決 平成15年10月29日 労働判例866-58参照)。

 労働基準法は「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義しています(労働基準法9条)。取締役は使用「する」側で使用「される」側ではないため、一般に労働者には該当しないと理解されています。その意味で中央労働基準監督署の認定は例外的な判断と位置付けられます。

 ただ、中小規模の企業では取締役といっても名ばかりで、実体は使用「される」側の従業員であるということは決して珍しくありません。絶対数としては結構たくさんいると言っても良いだろうと思います。こうした名ばかり取締役が一切労働者災害補償法上の保護を一切受けられないというのでは、何のための法律か分かりません。

 こうした我が国の実情には行政も比較的早期から問題意識を有しており、昭和34年には「法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であっても、法令、定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役、理事、代表社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対象として賃金を得ている者は、原則として労働者として取り扱う」との通達が出されていました(昭和34年1月26日 基発第48号参照 厚生労働省のホームページhttp://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/tp0323-1b.htmlも参考になります)。

 また、平成15年には取締役に労働者性を認めた裁判例も出されています(前掲大阪地方裁判所判決平成15年10月29日 労働判例866-58)。これは専務取締役に就任していたものの、就任の前と後とで業務内容に特段の変化がなかったこと等を指摘した上で、労働者性を認めた事例です。

 今回は取締役に労災認定が出されたことが大々的に報道されていますが、昭和34年から行政実例が積み重ねられていることからすれば、比較的珍しいにしても決して特殊例外的な判断ではないと思われます。

 労災の適用が受けられるかどうかは労働者・ご遺族にとって切実な問題です。取締役であったとの一事で労災認定を諦めなければならないわけではありません。お心あたりがおありの方はぜひ一度ご相談ください。

(師子角允彬)

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