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2013年7月17日 (水)

いじめとどのように向き合うか

先月、いじめ防止対策推進法が成立しました
http://mainichi.jp/select/news/20130622k0000m040108000c.html)。

一昨年に起きた大津市の中学校2年生の男児の自殺など、いじめをめぐる悲惨な事件が後を絶たないことから成立した法律です。法律が出来たところでいじめがなくなることはないという冷ややかな見方をする人もいますが、いじめが生じた時に速やかに発見・解決する枠組みを作り、自殺などの深刻な事態を未然に防ぐことは十分実現可能性のあることだと思われます。私はこの法律がいじめによる悲惨な事件を根絶する契機になることを期待しています。

いじめによる自殺が問題になった裁判例を見ると、程度の差はあれ途中で大人の介入する契機があった事件が多く見られます。気付くきっかけとしては、教師による現認、被害者からの申告、他の生徒からの申告、被害者の外傷の存在、被害者による不自然な金銭の支出、理由の不明確な遅刻・欠席・早退などが挙げられます。気付いた時に問題を軽視することなく初期段階から適切な対処をしていれば、救うことができる命は決して少なくなかったと思われます。

問題はどのような対応が適切かです。これを考えるにあたっては、福島地裁いわき支部 平成2年12月28日判決 判例タイムズ746号116頁が参考になります。本判決は学校の注意義務の内容を判示したものですが、いじめを受けている児童やその保護者が学校にどのような対応を求めて行くかを考える上での指針にもなります。

 上記判決は,いじめを認知したときに取るべき学校の対応として,「まず第一に、迅速に、しかし慎重に、当事者達はもとより必要に応じて周囲の生徒など広い範囲を対象にして事情聴取をするなど、周到な調査をして事態の全容を正確に把握すること」を求めています。その際には「学校側が調査に乗り出したことによって、被害生徒に更に増幅されたいじめが加えられないよう、場合によってはその間の被害生徒の登校を見合わせることも考慮するなど、十分な配慮」をしておかなければならないとしています。

 結果、「放置することができないいじめの実態が解明されたときには、当事者達だけの問題としてではなく、当事者生徒が所属するクラス全体、場合によっては当該学年全体…更には学校全体の問題としてこれを取り上げ、いじめがいかに卑劣で醜い行為であるか、また、被害生徒の屈辱や苦悩がいかに大きいものであるかなどを、加害生徒は勿論、生徒達全員に理解させると共に、周囲の生徒達にはいじめを決して傍観することなく、身をもって制止するか、或いは教師に直ちに報告する勇気を持って欲しいということを訴え、他方、被害生徒に対しては自らいじめと戦う気概を持つことの大切さを説ききかせ、それができそうにもない生徒であれば、いじめを受けた時には全てを包み隠さず担任教師や家人に申告することを約束させるなどの教育的手段を講ず」ることが必要になります。

 それでもなお、いじめが継続する場合には「再度、加害生徒の保護者をも交えるなどして、場合によっては『このまま事態が改善されないときには、児童相談所や家庭裁判所への通告というような手段を執らざるを得ない』ということも明示するなどして、より一層強力な指導をなすべきであり、更には、学校教育法26条の出席停止の措置をとることをも検討」することになります。

それでも「依然として何らの効果もみられず、加害生徒がなおも暴力、金銭の強要などの悪質かつ重大ないじめまたはその他の問題行動を繰り返し」ている場合には「もはや学校内指導の限界を超えるものとして、警察や家庭裁判所その他の司法機関に対して、当該行為を申告して加害生徒をその措置に委ねること」も必要になってきます。

 あまり知られてはいないかもしれませんが、いじめ問題は弁護士も取り扱っています。それは損害賠償請求訴訟を提起するなどの裁判上の業務に限られことではありません。
例えば、時として被害者の親御さんが学校や加害者方に出向いて改善を求めても真剣に取り合ってくれないということがあります。しかし、弁護士が調整役として介入することで被害者-学校-加害者の意思疎通を円滑にし、問題の解決に向けて事態が動き出すこともあります。上記に見られるようないじめが問題となった裁判例を引用しながら、学校の取るべき対応を明示した上で建設的な話合いを進めることができる場合もあります。

また、いじめの加害児童・生徒は家族から虐待を受けているなど強度のストレスを抱えていることが珍しくありません。弁護士は少年犯罪を取り扱うことによって得られた再非行を防止するための知見を活かし、問題の根本的な解決に寄与できることもあります。

上記の福島地裁いわき支部の判決でも指摘されていますが、いじめは陰湿でありなかなか表面化しません。たまたま表面にあらあれた時には既に相当深刻な事態が潜在していたということも珍しくありません。小さなサインであったとしても、軽視することなく適切な対処をすることが重要です。いじめを受けている方でも、いじめを見てしまった方でも構いません。お困りの方は、ぜひお気軽にご相談頂ければと思います。悲惨な事件を一つでも減らすことに寄与できれば、とても嬉しく思います。


(師子角允彬)

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