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2013年6月28日 (金)

北区収賄冤罪事件・不起訴のお知らせ

(★記事作成につき,依頼者のご了解を得ています。)

 当事務所の,新谷泰真,石丸文佳,髙木良平弁護士が弁護人を務めていた,東京都北区営繕課主任主事(以下,「依頼者」といいます)の収賄事件は,平成25年6月24日付で,嫌疑不十分による不起訴処分となりましたので,ご報告いたします。

「東京・北区主事らを不起訴 贈収賄の証拠「見つからず」」
http://www.asahi.com/national/update/0624/TKY201306240427.html

東京地検は24日、東京都北区発注の中学校校舎新築工事にからみ、収賄容疑で警視庁に逮捕された北区の営繕課主任主事(60)と、贈賄容疑で逮捕された同区内の建築会社専務(61)を嫌疑不十分で不起訴処分とし、発表した。処分理由は「贈収賄と認めるに足る証拠が見つからなかった」と説明した。

「北区中学工事汚職、贈・収賄側とも異例の不起訴」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130624-OYT1T01670.htm?from=ylist

東京都北区の中学校新築工事を巡る汚職事件で、東京地検特捜部は24日、警視庁に収賄容疑で逮捕され、処分保留で釈放された同区営繕課の主任主事(60)と、贈賄容疑で逮捕され、同様に釈放された建築会社専務(61)をそれぞれ不起訴(嫌疑不十分)とした。


 捜査機関が逮捕に踏み切った汚職事件で、贈賄側、収賄側共に不起訴となるのは極めて異例。特捜部は「逮捕するだけの疑いはあったが、起訴に足りる証拠はなかった」として詳細な理由は明かさなかった。捜査を担当した警視庁幹部は「不起訴については地検が判断したことなので、コメントする立場にない」と話している。

本事件は,東京都北区発注の中学校校舎新築工事にからみ、建設業者に入札予定価格を教える見返りに,現金を受け取ったという収賄罪の容疑で逮捕された事件です。

依頼者が入札予定価格を業者に教えた事実も,現金を受け取った事実もなく,依頼者は収賄事件とは全く無関係でした。

しかしながら,捜査機関の見込み捜査により,犯人と目された依頼者は,逮捕前から,長期間・長時間にわたる取調べを受けることになりました。捜査機関としては,依頼者が収賄を犯したという前提,つまり依頼者が犯人である事を前提に取調をするわけですから,身に覚えがないことだと主張しても聞き入れてもらえません。
また,捜査を受けていることを誰にも話さないように,と固く口止めされたため,依頼者は,家族に相談することもできず,弁護士と相談することもできず,一人で取り調べを受け続けることになりました。

自分の言い分を聞いてもらえず,連日のように犯人と決めつけられる取調べを受け続ける中で,依頼者は次第に心を折られていき,自分の言い分をきちんと主張する気力を失っていってしまいました。そして,警察の誘導に乗る形で,収賄を認める供述をするようになりました。

依頼者からの自白が得られたことで,捜査機関は,正式に事件を立件しようと,依頼者の逮捕に踏み切りました。

逮捕後,我々が弁護人として受任した当初から,依頼者は,「自分は収賄事件などやっていない。工事の予定価格を漏らしたこともないし,現金を受け取ったこともない」と明言しました。

逮捕後も,連日長時間にわたり,厳しい取調べが行われ,捜査機関は依頼者の自白を引き出そうと躍起になりましたが,弁護団も連日接見を行い,依頼者を励まし続けると共に,絶対に虚偽の自白をしないよう,アドバイスを続けました。
また,検察官に対して,録画による取り調べの可視化をするよう申し入れると共に,不当な取調べが行われた際には,取調べに対する抗議を適宜行い,虚偽自白を防ぐことに努めました。
(結局,可視化はされませんでしたが…)

同時に,刑事証拠保全手続きの申立を行って弁護側証拠の収集に努めるとともに,勾留理由開示をおこない,公開の法廷で,無実を訴える依頼者の言い分を明らかにしました。

捜査機関は,依頼者を逮捕した後,依頼者の通帳やキャッシュカード等を差押え,金銭の受領や受領した金銭の使途などの捜査をしていました。しかし,本件では,もともと金銭授受の事実自体がありませんから,依頼者が現金を受領したり,多額の現金を使ったりした形跡が出るはずもありません。

結局,依頼者と収賄事件とを結びつける証拠は見つからず,勾留期限の満期を持って釈放された後,6月24日付で,検察官は起訴を断念しました。

本件の問題点は,関係者の自白に頼った見込み捜査が行われ,かつ,強引な取調べも辞さずに自白を獲得することに力が注がれる一方で,金銭の使途など,金銭の授受に関する客観的な証拠の収集・検討を怠ったことです。任意捜査の段階から,客観的な証拠を収集して慎重に検討していれば,そもそも事件が成り立たないこと,依頼者が収賄事件とは無関係である事が早期に判明し,依頼者が逮捕されることもなかったのではないかと思えてなりません。

旧態依然とした,自白偏重の捜査が,今回のような事態を招いたと言ってよいでしょう。自白偏重の弊害は明らかであり,そこからの脱却は急務でしょうし,強引な取調べを防止するためにも,取調べの可視化は必須であると感じた事件でした。

最後に,今回の不起訴処分により,無辜の依頼者が裁判にかけられることなく,もとの平穏な生活を取り戻せたことを,何よりも嬉しく思います。

(新谷泰真)

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