DV事件
著明なサッカー選手が逮捕されました。妻に対し「今から殺しに行く。」と電話で告げたとのことです。
選手が否認しているため即断はできませんが、報道によるとDVは以前から繰り返されていた可能性が高いとのことです。
(http://www.news24.jp/articles/2013/06/07/07230033.html)
被害が長期化・深刻化しがちであることから一般にDV事案は解決までに時間がかかると思われがちです。
しかし、個人的な経験をお話しさせて頂くと、殆どの事案は比較的早期に解決します。ここで言う解決とは加害者が被害者の目の前に現れなくなるという意味で使っています。弁護士が介入してもなおしつこく加害者が被害者につきまとうケースが存在することも否定はできませんが、数はそれほど多くありません。そのようなケースでも法的な手続を駆使して粘り強く対応していれば遅かれ早かれ必ず解決します。
比較的早期に解決可能なのは使える法的な手続が充実しているからです。殴る蹴るの暴力や、殺害予告に代表される脅迫など、誰が見ても悪い行為に対して法律は比較的簡単に介入することができます。
配偶者からの暴力の防止及び被害者保護に関する法律(通称:DV防止法)に規定されているだけでも、被害者の接近禁止命令、未成年の子への接近禁止命令、被害者の親族等への接近禁止命令、退去命令、電話等禁止命令など多様な手続が用意されています。
警察から助けてもらうこともできます。指導警告してもらうことのほか、傷害罪・脅迫罪などで告訴することも考えられます。悲惨な事件が相次いで起きたことを踏まえ、警察もこの種の事案の摘発には力を入れています。警察庁の統計によると10年前には1万2568件であった認知件数が平成24年には4万3950件まで増加したとのことです。統計上の数値からも警察の本気が看取できます。
(http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/24DV.pdf)
それではなぜ被害が長期化・深刻化するのでしょうか。
それはDV事件には被害者が声を上げにくいという特性があるからです。DVの被害者の中には「自分が悪いから暴力を振るわれるのだ。」と自責の念を抱いている方が少なくありません。周囲の人が結婚を大いに祝福してくれたようなケースでは、心配をかけてはいけないと相談を躊躇ってしまう人もいます。旦那さん夫に社会的地位・信用がある場合では「相談しても、どうせ信じてもらえない。」として諦めてしまう方も珍しくありません。DV事件は被害者自身が主体的に解決に向けて動くことを期待しにくい事件類型です。これがDV問題の難しいところです。
事実、内閣府男女共同参画局の統計によると、DV被害を受けた女性の4割は誰にも相談していないようです。
(http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h23danjokan-gaiyo.pdf)
DV事件で重要なのは周りが気付くことです。「身体に不自然な痣がある。」「笑顔がなくなった。」など何か気付くことがあれば専門家のところへ連れて行ってあげて下さい。心あたりがなければ当事務所まで連れて来て頂いても構いません。
法律家は「DVがどういうものなのか」ということに事例の蓄積があります。本人から事実関係を聴き取り、問題がある場合には勇気づけた上で即座に介入することもできます。
お心あたりのある方はぜひ一度相談にいらして下さい。理不尽な暴力の根絶に役立つことができればとても嬉しく思います。
(註:DV事案の多くは夫から妻に対するものであるため,上記の説明では夫からの暴力を例に説明しましたが,法は「配偶者から」の暴力と定めており,夫から妻に対する暴力だけでなく,妻から夫に対する暴力も同様に扱っています。)
(師子角允彬)
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