母さん助けて詐欺
かつて「オレオレ詐欺」の名で一世を風靡?した詐欺は、後に振り込め詐欺と呼ばれるようになりましたが、最近またしても名称を変更したそうです。
名付けて「母さん助けて詐欺」。
オレオレ詐欺が振り込め詐欺と名を変えたのは、詐欺犯の名乗り方が「俺、俺」ではなくなってきたからとのことですが、今回振り込め詐欺が更に名を変えたのは、金銭の受け渡し方法で振込を指定することの方が少数派になってきたからということのようです。
確かに、最近私が取り扱ったことのある詐欺は、ほぼ振込の形を取っていません。
現金書留で送金するか、直接現金を手渡すかです。
何故かというと、振込の形で騙し取られたお金は、口座を凍結するという手法で簡単に犯人の手に金銭が渡ることを阻止できるからです。
口座凍結は、該当口座がある銀行にFAXで一報するだけで簡単にできます。
一定期間経過後に、特に権利行使の届出等が口座名義人から行われることがなければ、口座に残っている金銭は振込を行った口座の名義人に返金されます(但し、複数名の振込人がいる場合は、振り込んだ金額で按分された金額が返金されます)。
なお、口座の凍結が行われているか否か、権利行使の届出等がされていないか否かは、預金保険機構のホームページで該当口座情報を入力するだけで調べられます。
さて、そういうわけで、振り込め詐欺の金銭受け渡し方法は、現金書留を送るか、または直接金銭を受け取るかに進化?したわけです。
しかし、現金書留を送るという手法だと、送り先の住所を反復して使用することができません。何度も同じ住所を使用していれば、いずれ足が付くからです。
ところが、直接金銭を受け取る方法だと、金銭を受け取りにいく人物には逮捕の危険がありますが、金銭を受け取って来いと命令している者にはなかなか実害が及びません。何故なら、実際に受け取りに行っている人物は、上の人間の情報をほとんど持っていないからです。逮捕の可能性が一番高い危険な役どころを割り振られている者は、大抵小遣い稼ぎ、バイト感覚で小金をもらって(あるいは金をやると騙されて)動いているに過ぎず、母さん助けて詐欺だとは認識していないことも多いのです。
大金を受け取ってくるバイトを持ちかけられた場合、安易に飛びついてはいけません。
美味しい話には裏があります。受け取りに行った先で、現行犯逮捕されるかもしれません。
「お金」あるいは「書類」を受け取りに行く簡単なバイトだという誘い文句、当日携帯電話を渡すから指示されたところへ行けと言われて前もって回収先を知らされない仕事、行ってみたものの「そこは今日は止めになった」と何度も言われて空振りが多い仕事、「周囲に誰かいないか」などと無闇に周辺を警戒するような指示が来る仕事は、赤信号です。
即座に手を引いてください。警察に一報できればベストです。
最後まで、徴候に気付かず逮捕された場合は、すぐに弁護士を呼びましょう。無罪の主張ができることもあります。
(石丸文佳)
« 行政書士さん,それもないでしょう。 | トップページ | 6月,7月,8月の神山ゼミ »
「弁護士コラム」カテゴリの記事
- スタッフ弁護士になる10の理由(その1)(2018.06.14)
- 弁護士に依頼するともっとモメる?(2018.05.01)
- 桜丘釣り同好会(2017.05.19)
- 憲法記念日に思うこと(2017.05.03)
- パワーハラスメントへの対応(海上自衛官の住宅火災の事件報道を受けて)(2016.02.17)
コメント