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2013年2月 8日 (金)

取引先の売掛金を担保に取る方法

新谷です。会社の顧客から,「取引先の経営状況が悪化しているようで,万が一の時の債権保全手段を講じておきたい」という相談を受ける事があります。

こうした場合,よく行われるのが不動産への抵当権設定や,取引先の代表者から個人保証を受けることです。しかしながら,多くの場合,不動産には銀行が一番抵当を付けており,後順位抵当権を付けても回収はできません。また,会社の破産と共に代表者も破産するケースがほとんどであり,代表者の個人保証は債権保全には役立たないことも多いです。経営状況が悪化しているような会社やその代表者であれば,なおさらでしょう。

では,こうした場合にどのような手段を講じればよいのでしょうか。

一つの方法として,取引先が持っている売掛金債権の債権譲渡を受け,売掛金を担保にする方法があります。事例で説明すると,以下のようなものです。

 

甲社は,取引先の乙社に対し,継続的に物品を販売している。売掛金が400万円に達しているが,最近乙社からの入金が遅れたり,減額して支払われるようになってきている。そのため,今後未収の売掛金が増えていく可能性がある。
 乙社は,A社との間で継続的な取引を行っており,毎月1000万円程度の売掛金が発生するということなので,いざ乙社が倒産状態に陥った場合の時のために,乙社のA社に対する売掛金を担保に取れないか。


○債権譲渡担保契約
甲社と乙社との間で,乙社のA社への売掛金を債権譲渡担保とするとの契約を結びます。
債権譲渡担保とは,乙社がA社に有している売掛債権を,一旦甲社へ債権譲渡し,乙社が債務不履行を起こすまで,債権の取り立て権限を乙社にとどめておくといった特約を取り交わすことをいいます。
現在存在する売掛金だけではなく,今後の乙A間の取引によって将来発生する分の売掛金も含めて担保に取ることができます。
乙社が債務不履行などを起こすまでは,乙社がA社から支払を受けますが,債務不履行などを起こした場合には,甲社がA社から,売掛金を直接回収することになります。

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○対抗要件
 ただ,A社からすると,甲乙間の債権譲渡担保契約などあずかり知らぬことなのに,ある日突然見知らぬ甲社から請求を受けたとしても,困惑してしまいます。
甲社が正当な権利を有しているのかどうか,甲社に対して支払をしてもいいのかどうか判断がつきかねることでしょう。
 そのため,甲社がA社に対して,譲り受けた売掛金を請求するためには,「対抗要件」を備える必要があります。対抗要件とは,A社に対して自分が正当な権利者であると主張するための条件,と考えておいてください。
 では,対抗要件を備えるためには,何が必要でしょうか。

○債権譲渡通知
 民法上の原則的な手段としては,乙社からA社に対して,「甲社に債権譲渡をした」との債権譲渡通知をすることになります。

第四百六十七条  指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

手続は簡単ですが,A社に債権譲渡の事実が伝わってしまい,乙社の信用不安が明らかになってしまいますから,あまり現実的な方法ではありません。また,債務不履行状態が生じてから通知をしてもらおうとすると,乙社が応じてくれない,債権が多重に譲渡される,乙社が破産した場合には偏頗行為であるとして破産管財人から否認される(返還を要求される)などのリスクが生じます。

○債権譲渡登記
「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に基づいて,東京法務局に債権譲渡登記をする方法があります。
この方法によれば,登記時点でA社に知らせる必要はなく,いざ乙社に債務不履行が生じた場合に,A社に対して登記事項証明書を交付することによって対抗要件を備えることができますから,乙社の債務不履行が生じるまでは債権譲渡の事実を秘密にしたままにできます。
 乙社が債務不履行を起こした場合には,A社に対して登記事項証明書を交付し,A社に対して支払を求めることになります。

(もちろん,登記を確認されれば債権譲渡の事実が明らかになりますが,わざわざA社が確認する可能性はほとんどないと考えてよいでしょう。)

○債権譲渡禁止特約
 ただ,乙社とA社との間の売買契約において,売掛金の債権譲渡を禁止するとの特約が入っている場合には,債権譲渡ができないため,債権譲渡担保の手法は使えないこととなります。しかし,中小企業間の取引では,きちんとした契約書が締結されていないまま取引を行っているケースも多く,債権譲渡禁止特約が定められていない場合も多くあります。そうした場合には,この手法が使えます。

○まとめ
若干わかりづらい話になってしまいましたが,おおざっぱにまとめると

債権譲渡担保契約を結び,債権譲渡登記を利用することで,乙社の売掛債権(現在存在するものと,将来発生していくもの)を担保に取ることができる。なおかつ乙社の債務不履行が起こらないうちには,A社に知られることのないまま担保に取れる。乙社破綻時には,他の債権者に優先して乙社の売掛債権を回収することができる。

という事です。なお,乙社の取引先が複数あるならば,複数の売掛債権を担保に取ることが可能です。
乙社が倒産状態に陥ったときには,担保を取っていない限り売掛金の回収はまず不可能になります。不動産等の確実な担保が取れない場合であっても,売掛金債権を持っていない会社はないでしょうから,これを担保に取ることで,いざというときの備えになります。

○費用は?
当事務所に一連の手続をご依頼された場合,債権譲渡登記契約書の作成費用およびこの手続に関するアドバイスを含んで15万円(消費税別途)です。なお,取引先との基本契約書が作成されていない場合,この機会に一緒に作成されることをお勧めします。両者をセットで作成する場合は,あわせて20万円(消費税別途)となります。
その他詳しいことは,お問い合わせ頂ければと思います。

(新谷泰真)

桜丘法律事務所のHPはこちら。

ウェブ上の簡易な無料相談もやっています。こちらへどうぞ。

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