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2013年1月29日 (火)

カネミ油症新認定訴訟

現在、カネミ油症新認定訴訟という裁判が福岡地裁小倉支部で行われています。

カネミ油症事件という大事件が、昭和43年に起きました。カネミ倉庫株式会社が作った食用油にダイオキシン類が混入していたことで、西日本を中心に多数の中毒患者を出した事件です。

カネミ油を摂取した者には、初期段階では皮膚に吹き出物が出たり、爪や歯の変形・変色するといった症状が典型的に見られます。このあたりの症状を中心として、当初は患者を認定する基準が作られました。

しかし、ダイオキシン類の摂取は、遺伝子レベルに影響を及ぼすため、油を直接摂取していない二世三世にも影響すると言われています。また、ダイオキシン類は体外に排出されにくいため、長年悪影響を与え続け、長期的には「病気のデパート」と言われるほど多様な症状を呈するようになります。

つまり、初期の認定基準は患者の全ての症状をカバーできていなかったために、患者として認定されないまま、多くの者が放置されてきたのです。

そこで、平成16年、ダイオキシン類の血中濃度という新しい基準が加えられました。これにより、新たに患者として認定された人たちが出ました。これが、新認定患者と呼ばれる人たちです。

旧認定患者の多くは、多数の集団訴訟に原告として加わったことで多少の賠償金を手にしたものの、新認定患者はこれまで患者としてすら認められてこなかった人たちです。当然、かつて旧認定患者が起こした訴訟に加わることはできませんでした。それが、平成16年以降の新認定基準によって患者として認定されたことで、ようやく彼らは賠償請求を行うことができるようになったわけです。

しかし、現在の訴訟において、被告カネミ倉庫は「除斥期間」を主張してきています。除斥期間とは、ある請求を行うに当たって設けられている時間制限のことで、不法行為に基づく損害賠償請求を起こすことができる期間は、民法上、不法行為時から20年とされています。

ところが、新認定患者は、事件発生から優に20年以上、患者として認められてきませんでした。にもかかわらず、20年以内に訴訟を起こしていないからあなたたちには何ら救済を与えることはできませんと加害企業は答弁しているのです。こんな不合理なことがあるでしょうか。
先日の和解のための協議期日では、カネミ倉庫は1人10万円程度なら支払ってもよいと回答したそうです。

何ら落ち度なく、ただ油を使った料理を食べただけで、あらゆる病気にかかり、病院に行っても原因が分からないと言われてただ苦しむ毎日。病院代ばかりが嵩み、満足に働くこともできずに困窮し、結婚しても出産した子にも症状が現れるのではないかと苦悩し、子どもを生んでも生まなくても辛い。同じ油を食べた家族の中でも認定される者とされない者が出て、誰に認定されなくとも己はこの苦しみが毒油からくるものだと知っているのに、40年以上見捨てられてきた人々。

それなのに、事件から20年以上が経過したので加害企業は一切法的義務を負うことはないという結論でよいのでしょうか。こんなに苦しめられてきた人生の結論が、10万円の賠償で済まされてもよいのでしょうか。

除斥期間の主張は、水俣病やじん肺の訴訟等でかつても主張され、排斥されてきたという事実があります。
いずれも、加害者に除斥期間の主張を許すのはあまりに社会正義に反すると思われた事件です。世論が、加害者の逃げを許さなかったのです。

ブログを読んでいただいている皆さんにお願いします。カネミ油症を、終わった事件と思わないでください。今も患者の苦しみは続いています。二世三世の問題もあります。加害企業の逃げを、許さないでほしいのです。
訴訟に対する応援を期待します。

(石丸文佳)

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