障害者虐待防止法
先日,江東区の福祉施設で障害者虐待防止法の講演をする機会がありました。介護所などの施設職員,通所している障害者,約40名の方を前に平成24年10月に施行されたばかりの法律を解説するのは実はとても緊張しましたが,みなさん熱心に聞いて下さって嬉しかったです。鋭い質問もたくさん出て,私自身とってもいい刺激を受けました。
障害者虐待防止法は,虐待の防止,養護者の支援を目的とし,そのための施策を国または地方公共団体の責務としている点で,児童虐待防止法や高齢者虐待防止法ととても似ている法律です。
ただ,前の2つの法律が対象者の年齢制限があるのに対し,障害者虐待防止法はそのような制限がありません。また障害者には,身体障害者,知的障害者,精神障害者,発達障害者が含まれます。とても広い人を対象としている点で,国や地方公共団体,そして国民ひとりひとりの責務もその分重くなるといえます。
講演では,どういう場合が「虐待」にあたるか,どんな時に市町村や都道府県に「通報」するべきかという話を具体例交えてお話ししました。例えば,障害者施設でトラブルをきっかけに他の入居者を叩いた方の身体を拘束して隔離することは「虐待」か?などです。この場合でも,本人や他人が危険にさらされているという切迫性,他の方法をとることができないという非代替性,一時的なものであるという一時性などの要件が充たされなければ「虐待」にあたり得ます。もっとも現実には,判別が難しいことも多々あるはずです。
気を付けなければならないのは法律上の「虐待」にあたるか,「通報」の対象なのかを迷って結局何もしないということがあってはならないということです。関係者が,この行為(不作為も含まれます)は問題ではないかというアンテナを張り,一人で判断せずに複数で対応も含めてすみやかに協議するということが大事です。厚生労働省もマニュアルで「虐待」の判断はチームで行うべきとしています。言うまでもなく,これはチームで「虐待」と判断するまでは何もしなくてよいということではありません。結果的に「虐待」にあたらなかったとしてもチームで問題点を浮き彫りにし,成年後見申立てなどにつなげるべき事案は多くあるはずです。
必要な人に必要な救済や支援をしていくという今まで通りの当たり前の視点こそが関係者に求められています。
(亀井)
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