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2012年12月20日 (木)

『東電OL事件--DNAが暴いた闇』を読む

読売新聞社会部『東電OL事件--DNAが暴いた闇』を読みました。読売新聞は,東電OL事件に関する一連の取材報道により新聞協会賞を受賞したそうです。DNA型鑑定の結果別人の型が出たことを知った記者が,他社に抜かれないように秘密裡に取材を進める過程はスリリングであり,朝日新聞取材班『証拠改竄--特捜検事の犯罪』などと同じように最後まで一気に読むことができました。

 読み終えて感じるのは,DNA型鑑定の威力です。読売新聞は,数十人規模の遊軍を動員し,ネパールやアメリカに渡り関係者の取材に当たっていますが,こうした取材報道を行うようになったのは,DNA型鑑定でゴビンダさんと別人の型が出たからです。

 記者は,後書きで「正直に打ち明ければ,ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告が東電女性社員殺害事件の犯人だと思っていた」と率直に認めています。別の箇所では「『外国人』『売春』をどこか軽く見る意識が捜査官にあり,それが捜査の行方を狂わせたのではないか」とも指摘していますが,このような思い込みは捜査官だけでなく,検察官や裁判官にも通じるものではなかったでしょうか。

 当事務所の神山啓史弁護士は,12年前に出会ったときから「ゴビンダさんは無罪だ。自分が無罪だと信じる人を助け出せないほど,つらいことはない」と言っていました。

 曇りのない目で証拠を見る神山弁護士には,DNA型鑑定などなくても,最初から真実が見えていたのだろうと思います。一審弁論要旨と一審判決を読み直せば,DNA型鑑定以外の証拠はすでに揃っていたはずです。

 ゴビンダさんを無罪にするのに,なぜ15年もの歳月を待たなければならなかったのか,検察庁,裁判所は真摯に過ちと向き合い,検証結果を公表してもらいたいと思います。

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