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2012年10月 9日 (火)

取調べ一部録画の弊害

「素人に裁判ができるはずがない」という裁判員裁判の批判をときどき目にしますが、こういうことを言う人は「プロの裁判官」が本当に正しい判断をしてきたと信じているのでしょうか。私に言わせれば、裁判員裁判でも裁判官裁判でも間違うときは間違います(いい判断をしてくれるときは、いい判断をしてくれます)。でも、間違った判断が出たときに、裁判員は素人だからしょうがないと思えますが、プロは許せません。

先日、控訴審でこんな判決がありました。知的障害と精神障害のある被告人が検察官の取り調べでは自白をしましたが、その信用性が争われた事件です。警察官の前では否認するのに検察官の取調べでは自白するので、否認、自白、否認、自白、否認ところころ供述調書の内容が変わり、しかも、その内容が毎回違っていました。弁護人はこんなの信用できるはずがないじゃないか、と争いましたが、一審の裁判員裁判では信用できると判断されてしまいました。

でもまあ、裁判員は取調べを見たこともないから、分からなくても仕方ない。控訴審では判断が変わるかもと淡い期待をしたのですが、さらにひどい判決でした。いわく、たしかにDVDには読み聞かせの場面しか映っていないから、その前にどのような取り調べがあったかはわからないが、少なくとも録画されている間に意思を抑圧されるような強制はなかった、そして書かれている内容もあり得ないことではない、というのです。

被告人は知的障害と精神障害があって、当時も服薬中ですよ。そんな人を2時間も取り調べて作文しておいて、読み聞かせる場面だけ録画して、はいあなたの言ったとおりですね、署名捺印してください、と言われて、署名捺印した場面を見たからと言って、何が分かるというのでしょうか。都合が悪いことがないなら、なぜその前の場面を撮らないのでしょうか。なぜ、その前と後は否認しているのに、そのときだけは自白しているんでしょうか。まったく理解できません。

こんな判断がなされるなら、一部録画はまったく役に立たないばかりか、むしろ有害というべきでしょう。しかし問題は検察官ではありません。検察官は有罪にするために仕事をしているのですから、自白調書をとろうとするのは当然です。録画も都合がいいところだけで済ませようとするのも当然です。問題はそれをチェックすべき役割の裁判官が機能していない、ということです。こんな判断が出るなら、検察官は全部録画などするはずがありません。だって、全部録画なんて面倒なことをしなくても、有罪にできるのですから。

裁判官の責任は重いといわなければなりません。

(田岡)

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