はるえの活動日記(その2)
(昨日から続きます)
障害者の人権が守られなければならないことは当然ですが、虐待と誹られることを怖れて職員が萎縮してしまうことも問題です。法制定に反対していた人の危惧は萎縮的な効果を念頭に置いたものだと思います。
しかし、障害者虐待防止法は問題を潜在化させないことを念頭に置いた法律であるため、施設職員の方が萎縮する必要はありません。
極めて大雑把に言うと、障害者虐待防止法は、①虐待を受けたと「思われる」障害者の発見→②市町村への通報→③問題があれば改善のための措置をとる、という構造の法律です。判別が難しいため、虐待が疑われるものがあれば取り敢えず問題を顕在化させよう、その上で本当に問題なのかを議論して行こうという法律です。虐待をした人を吊し上げるための法律ではありません。罰則も守秘義務に違反した場合や、役所による調査を妨害した場合にのみ規定されています。議論が積み重なって何が虐待で何が虐待ではないのかの線引きが明確になることは施設で働く職員の方にとっても有益なのではないかと思います。
虐待を防ぐためには、①目的は手段を正当化しないという障害者を取り巻く方の意識と、②虐待と思われるケースが潜在化しないための組織作りの両方が重要です。
例えば、客観的に障害者のためになるからといって物理的な力を使って通帳を取り上げることはやはり虐待にあたるのだろうと思います。目的は正当でも手段が個人としての尊厳を無視した乱暴なものであれば容認することはできません。この場合には法に規定されている後見制度を利用しなければなりません。
目的が正当かどうかという問題と手段が適切かどうかという問題は区分けして考えなければなりません。この点を混同すると虐待が生じてしまいます。善意に基づく虐待は悪意による虐待よりもずっと厄介です。虐待者に虐待をしているという認識がないし、周囲も目的の正当性に目を奪われて多少のやりすぎは仕方ないと黙認してしまいがちだからです。いくら正しい目的のもとでも障害者の人格を蹂躙することは許されないことを明確に意識することが重要です。
(さらに続きます)
(師子角)
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