クレーム対応の難しさ
クレームが発生した時に、企業がどのような対応を取るかは重要な問題です。私は以前欠陥自動車の裁判を何件か担当したことがあります。当時の運輸省は今よりも欠陥に対してずっと鈍感だったので、メーカーも平気で欠陥隠しをしていました。
その中で、対照的な対応をしていたのがトヨタと日産でした。いずれも欠陥は隠そうとするのですが、トヨタは検査を申し出て、車両の検査をしてくれました。その上で、どのような検査をしてどのような結果が出たかを説明してくれました。こちらの主張が通らなくても、被害者はここまでチェックして原因が判明しなかったのなら仕方がないとあきらめることができました。
これに対して日産は、個々のディーラー任せでそういうチェックすら受け付けようとしませんでした。裁判をやっても、高い技術と整備された工場で何万台も生産しているが、そのような欠陥は報告されてないなどと言ってくる。報告、握りつぶしているだけだろう。何万台も生産して1台も不具合がないこと自体を疑え。米国が技術の粋を尽くしたスペースシャトルだって墜ちているではないか、などと主張しても、被害者をクレーマー扱いでした。
裁判官の面前で欠陥現象を再現して勝ったケースもありますが、負けたケースも少なくありませんでした。ただ、このような姿勢は、裁判では勝てても市場では勝てませんでした。批判に謙虚に耳を傾けようとしない独善的な企業は、消費者には支持されないということです。
クレームを商品やサービスの改良のチャンスと考えれば、対応の仕方はおのずと変わってきます。個々の要求に常にYESと応じるわけには行かないでしょうが、NOと言うにも言い方が違ってくるでしょう。個々の消費者の情報がかつてなく迅速かつ広範囲に広がるこの時代にあって、クレーム対応の重要性は飛躍的に高まっているように思います。
なお、自動車の欠陥については、三菱トラックの事故が欠陥によるものと発覚して以来、国交省もメーカーもかなりきちんとするようになってきている印象を受けます。
(櫻井)
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