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2012年9月10日 (月)

交通事故は行政書士に?

 最近,行政書士の広告が増えました。「交通事故は行政書士へ」「離婚は行政書士へ」など,権利義務をめぐる紛争についても行政書士が相談を受けられるかのように誤解させるものが少なくありません。ひどいものになると「不倫・浮気専門」「プロ行政書士」のように専門性を謳ったり,「○○相談所」とか「○○センター」のように,あたかも公的な相談機関であるかのように装うものさえあります。費用についても,「増額分の○%」といった成功報酬を受け取っているものがありますし,その金額も弁護士報酬より高額であるものさえあります。

 初めて法律問題に遭遇した方にとっては,弁護士と司法書士,行政書士の区別が付きづらいのでしょう。そのために,インターネットで検索したり,知り合いの法律家に相談しようとして,行政書士に相談されるのだと思います(浮気や不倫で検索して出てくるのは,ほとんどが行政書士のホームページです。)。行政書士も,官公署に提出する書類のほか,権利義務・事実証明に関する書類の作成の代理を行うことができますから,内容証明郵便の作成等が直ちに違法であるとまで言うつもりはありません。しかし,代理人として交渉し,その対価として成功報酬を受け取るとなれば,実質的には,弁護士及び司法書士が行うべき法律業務に他なりません。

 もちろん,交通事故の後遺障害等級認定等の異議申立書の作成とか,慰謝料の支払義務を認める公正証書の作成等の限られた場面では,行政書士でも対応できる場合があるでしょう。しかし,多くの場合には,それだけでは終わりません。離婚事件であれば,単に不貞の相手方に慰謝料を請求するだけではなく,配偶者との間で親権者,養育費,面会交流,財産分与,慰謝料のほか,年金分割等を取り決める必要があります。その際には,養育費や財産分与の算定方法につき,専門的な知識が要求されることになります。子どもの親権など,その子の一生を決めてしまいかねない重要な問題を取り扱うことになります。

 また,交通事故の損害賠償に関しても,仮に異議申立てにより後遺障害の等級認定が認められたとしても,示談交渉で保険会社が支払う金額には上限があります。保険会社は,自賠責基準,任意保険基準のほか,弁護士基準,裁判基準(赤本基準)など複数の基準を使い分けています。自分で示談交渉を行ったり,行政書士が就いて示談交渉を行うより,弁護士が代理人に就いたり,訴訟を起こした方が,賠償額が高額になる仕組みになっているのです。行政書士が相談を受ける場合に,こうした情報を正しく説明しているのだろうか,という疑問なしとしません(私の経験では「弁護士に頼むと,費用が百万円はかかる」と言って依頼を断念させた例がありましたが,そんなことはありません。)。

 もちろん,行政書士の中にも,きちんとした方はいらっしゃいます。私どもも,行政書士のほか,司法書士,税理士,社会保険労務士など他の士業の方々とも,日常的にお付き合いがあります。ですから,行政書士に相談してはダメだというつもりはありません。そうではなく,それぞれに専門分野がありますから,うまく使い分けましょう,ということです。風邪であれば知り合いの看護師に相談して市販薬を飲んでもいいでしょうが,癌のような重い病気は専門の医師に手術してもらわないと,手遅れになってしまうことがあります。誰に相談したらよいか分からないときは,法テラスなどの公的機関に相談されるとよいでしょう。

(田岡)

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