遺言のススメ(2)--遺言執行者の死亡
前回,遺言を作るには遺言執行者が必要だと書きました。遺言執行者は相続人でもなれますが,弁護士などの専門家の方がよいでしょう。一度,遺産分割協議を行った方であれば分かるかと思いますが,登記名義を変更したり,預貯金を解約するのは,けっこう面倒なものです。遺言執行者に弁護士を指定しておけば,こうした面倒なことを全て任せることができます。
ところで,まれに遺言執行者の方が先に亡くなる,ということが起こります。私ども弁護士が依頼を受けるときは,そういうことが起こらないように,ご依頼者よりも若い弁護士が遺言執行者になるように注意しています。しかし,何が起こるかは分かりません。私自身も遺言執行者になっている遺言がありますが,みなさんとてもお元気です。遺言を執行するのが,10年先になるのか,20年先になるのか,そのときになってみないと分かりません。
また,遺言執行をしようにも,その方が亡くなったことに気付かないこともあり得ます。亡くなられた方が遺言があることを周囲に伝えていたり,貸金庫に謄本を預けておいていただけるとよいのですが,誰も気付かないと,遺言執行者に連絡がないことがありえます。そのために,遺言を作ったものの,執行されないことが起こり得るのです(貸金庫があれば貸金庫に保管し,そうでないときは身近な人には遺言があることを伝えておく方がよいでしょう。)。
遺言執行者が亡くなったときは,裁判所に遺言執行者の指定を申し立てることになります。申し立てる裁判所は,亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所です。そうすれば,新しい遺言執行者が選任され,遺言に書かれたとおりに執行してもらえます。万一,遺
言執行者が亡くなっても,安心というわけです。
(田岡)
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