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2012年6月

2012年6月13日 (水)

弁護士費用保険の利用法

 弁護士費用保険の契約件数が1400万件を超えたが,利用件数は1万件未満と低調である,という報道に接しました(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120531-00000128-san-soci)。「全国の総世帯数の3割近くを占める」ということですから,3~4世帯に1世帯は,弁護士費用保険に加入していることになります。

 これまで,ご相談者の方から「弁護士費用がいくらかかるか分からないから,不安である」「弁護士費用が高額になるから依頼しづらい」という声を聞くことがありました。しかし,弁護士費用保険に加入していれば,基本的に弁護士費用の全額が保険でまかなわれるため,これを活用しない手はありません。

 とりわけ少額の物損事故の場合,過失割合に争いがあっても,弁護士費用の方が高く付く「費用倒れ」になりがちです。そのため,不本意な示談をしてしまっているケースも少なくないものと思います。しかし,弁護士費用保険を利用すれば,弁護士費用は全額支払われますから,「費用倒れ」の心配をする必要もありません。

 では,なぜ弁護士費用保険は活用されないのでしょうか。その原因は,ご相談者の方が「弁護士費用保険に入っていることを知らないから」「使い方が分からないから」ではないかと思います。ご相談を受けて,弁護士に「弁護士費用保険に入っている可能性もあるので,確認されてはいかがですか」と言われて,はじめて気が付いたという方もいらっしゃいます。

 日弁連交通事故相談センターでは,交通事故の相談は無料で受けています。当事務所でも,弁護士費用保険を利用したケースを取り扱っています。保険会社の提示額に疑問を持たれた場合には,ぜひ一度ご相談ください。

(田岡)

2012年6月 8日 (金)

東電OL事件(3)

 私が昨年7月に雑誌に寄せたエッセイの原稿です。ここから更に1年近くも時間がかかっていることに憤りを感じます。(以下引用)


 私の事務所の神山啓史弁護士が主任を務める東電OL殺人事件の再審裁判は徐々に進展が見られるようです。先頃は、被害者の胸と口の周りに付着していた唾液がO型血液のヒトのものであるとの鑑定結果が初めて弁護側に開示されました。

ここで重要なのは、O型の鑑定結果は事件直後に出ていたということ、それにも拘わらず検察はその証拠を裁判所に提出しなかったということです。ゴビンタさんの血液型はB型です。ですから被害者の胸や口の周りに別の血液型の者の唾液が付着していたということは、犯人がゴビンタさん以外の者、少なくともその可能性が極めて高いことの有力な証拠になります。それを、十分承知しながら、というよりも承知しているからこそ証拠を出さなかったのでしょう。ゴビンダさんを有罪にするためにはゴビンダさんの無罪につながるような証拠はあえて出さないという姿勢です。

お気づきの方もいるかも知れませんが、これは、厚労省の村木元局長のえん罪事件と全く同じ構図です。村木元局長の裁判で大阪地検特捜部の検事は同局長を有罪にするために証拠の改ざんまで行いました。この者を有罪にすると決めた以上はどんな手を使ってでも有罪にする。そういうことが許される、少なくとも大目に見られる体質があるのだということです。

刑事訴訟法第1条はその目的を「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現すること」と定めます。また、検察庁法第4条は検察官の職務につき、「刑事について公訴を行い、裁判所に法の正当な運用を請求」すると定めます。事案の真相を明らかにし、法の正当な運用を請求するのであれば、証拠隠しや証拠の改ざんはあってはならないはずですが、どうしてこのような事態が起こるのでしょうか。

検察官は端的に正義を実現する官職です。個々の検察官は強い自負心を持ってその職務に臨んでいます。けれどもここに落とし穴があります。この自負心は、ともすると、自らあるいは同僚が「こいつが犯人だ」と起訴した被告人は犯人に違いないはずだ、だとすれば被告人を何としても有罪にして処罰することが正義だ、という独善に転化します。そこから、被告人を有罪にするためには「真相」を見えにくくする証拠は裁判官の目に触れないようにしようという証拠隠しの発想や、更に進んで被告人に有利な証拠を改ざんしてしまおうという発想が生まれます。いずれも誤った自負心と皮相な正義観に基づくものです。

検察は、「検察故に正義」なのではなく、「検察故に正義でなければならない」のです。そして正義はそれを実現する過程においても不正義の存在を許さないものです。それが「手続的正義」「適正手続の保障」などと言われるものです。

村木元局長は、先頃新聞のインタビューに答えて、取調べの全面的可視化は絶対必要だと言っていました。全く同感です。従来の裁判では法廷での証言よりも密室での取調べで検察官が作成した調書の方が信用される傾向がありました。被告人が脅されたから自白したと言ってもなかなか信じてもらえませんでした。自白強要などがないのであれば、取調べを録音録画しても全く問題ないはずです。それよりも、物的証拠の採集、分析能力を高め、科学的な捜査能力を高めるべきです。

検察の改革は正念場にさしかかっています。

(櫻井)
 

東電OL事件(2)

 東電OL殺人事件について、2000年に会計人コース(中央経済社)という雑誌に掲載したコラムの原稿を見つけましたので、ご紹介します。改めて、感慨深いものがあります。以下引用。
 
 この春、電力会社OL殺人事件で裁判にかけられていたネパール人の無罪判決が出ました。著名な事件でしたからご存じの人も多いことでしょう。検察官は判決を不服として控訴しました。問題はその後です。

普通は一審で無罪判決が出ると、検察から控訴されても身柄が拘束されることはありません。ところがこの事件では検察は立続けに3度も裁判所に身柄拘束を申し立て、ついに3度目の申立を受けた東京高等裁判所は勾留を決定しました。弁護側はこれを争いましたが、最高裁判所は3対2で勾留を認めてしまいました。

刑事訴訟法は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに、定まった住所がない、証拠隠滅のおそれがある、逃亡のおそれがある等の場合に被告人の身柄を拘束することを認めています。しかし罪を犯したと疑うに足る相当な理由という点では第一審の無罪判決で払拭されている筈です。記録を一見すれば罪を犯したかに見えるのは当然のことで、だからこそ3年に及ぶ審理を行い、証拠を精査したわけです。そしてその結果が無罪判決だったわけですから、控訴審での審理を開始する前に一審の無罪判決を覆さなければならないような「疑い」がどうして認められるのか不思議ですらあります。また、定まった住所がないというのは、日本国内にないというのであれば当たり前のことで、えん罪で3年間も獄につながれている間にアパートの契約が切れたのは被告人のせいではありません。もちろんネパールにはきちんと住所があります。証拠隠滅のおそれについては何をか言わんやというべきです。殺人の疑いで逮捕された被告人はその後今日に至るまで自由を奪われています。その間検察側は考えられる全ての証拠を収集しているわけです。被害者の居室内の体液の痕跡まで収集しているほどですから、被告人が今後隠滅しうる証拠の存在など全く考えられません。しかもこの被告人は釈放されたら直ちに強制送還される立場ですから、ますます証拠隠滅などできるはずがありません。最後の逃亡のおそれについて言えば、控訴審は被告人の出頭を求めませんので、被告人の身柄が確保できなくとも審理の進行には何ら問題は生じません。この点は被告人が在廷しなければ審理が開けない第一審と異なる点です。にもかかわらず「逃亡のおそれ」を言うのであれば、それは控訴審で無罪判決が覆されたとき、刑を執行するために支障が生じるという理由に他ならず、一審の無罪判決をあまりに軽んじるものです。

いずれにしても今回の勾留決定は訴訟法的にも合理的な理由を欠くもので、まじめな弁護士なら誰もが許し難いと思う内容ですが、仮に法的な問題を抜きにしても、一旦無罪判決がでたらとりあえず身柄は解放されるべきだというのが健全な市民感覚ではなのないかと思います。

私が今回この問題を指摘したのは、この問題が最近巷間を賑わせている司法改革の問題と大きな関わりがあると考えるからです。司法改革は、これまでの行政主導型の国家を脱して企業や市民の自主性を尊重する自由な国家を作って行こう、その上で不適切な事態が生じたときは司法により解決して行こう、そのために国民にとって使いやすい司法を実現して行こうという議論です。そのためには裁判官の意識改革も必要で、一部に見られる独善的で市民感覚を全く理解しないような裁判官は考えを改めるか、他の有能な人材に取って代わられるべきです。それなのに現実は、無能で人権感覚に乏しく、独善的な人間がその地位に止まり、時に害悪を流しているのです。

まず裁判官の人材の改革を。

(櫻井)
 

2012年6月 7日 (木)

東電OL事件

本日、東京高等裁判所において、当事務所の神山啓史弁護士が主任を務める東京電力OL殺人事件の再審開始決定が下されました。遅きに失した感はありますが、正しい決定が出たことを評価するともに、弁護団の長年にわたる尽力に心から敬意を表したいと思います。

併せて、証拠を隠した検察官の卑怯と、予断に眼を曇らせ、あまつさえ無罪判決後の勾留まで認めた裁判官の不明は厳しく批判したいです。

この冤罪事件は、本来、1審裁判所の無罪判決で終わっていたはずの事件でした。正義よりも面子と有罪の追求を優先し、重要な証拠を隠して、裁判をゲームの場にした検察はその体質を深く省みるべきです。

また、いやしくも一つの裁判体が無罪の判断をした判決を、弁護人に十分な反証の機会も与えずに、覆した高裁とそれを追認した最高裁はその傲慢と無能を深く反省すべきです。

神山弁護士は若い弁護士に話をするときに、最高裁の決定が常に正しいと思ってはならないと戒め、東電OL事件では最高裁が間違っていると言っていました。

若い法律家には、権威に目を眩まされることなく真実を追求する姿勢を持っていただきたいと思います。

(櫻井)

2012年6月 3日 (日)

橋ケ谷弁護士、奈良に赴任

  当事務所で1年半にわたり様々な事件に携わった橋ケ谷佑可弁護士が、6月1日から奈良県の法テラス奈良法律事務所に赴任しました。奈良では役所の福祉部門などと連携し、これまでなかなか司法にアクセスできなかった人たちの支援に力を入れることが期待されています。困っている人の力になりたいという思いの強さと、事件に取組む姿勢の熱心に定評のある橋ケ谷弁護士にはぴったりの役割で、今後の活躍が楽しみです。

 これまで橋ケ谷弁護士を応援して下さった皆様にはこの場をお借りして改めて感謝申し上げます。

(櫻井)

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