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2012年4月

2012年4月27日 (金)

地域活動支援センター「はるえ野」訪問日記(1)


先日,江戸川区にある地域活動支援センター「はるえ野」を訪れました。
はるえ野は,NPO法人東京ソテリアという,障害者を病院に閉じ込めるのではなく,社会の中で生活させることを目的とした組織が運営しているセンターです。

はるえ野は,ソテリアに入居する人以外でも,1日100円で利用できるようになっています。
利用者は,交流室でテレビを見たり,楽器を弾いたり,集まってきた人とおしゃべりをしたり,お菓子を作って食べたり,自由に伸び伸びと過ごしています。
あるいは,生きることに行き詰まったとき,センター職員に相談をしたり,関連施設に出向く際に職員の同行をお願いすることもできます。色々な関係者と連携を図ることでトータルサポートを受けられるよう,手配してくれたりもします。弁護士の訪問も,この一環です。

心を病んでしまった人たちは,時には死にたいと言って暴れたりもするので,病院に閉じ込めておけばよいという結論に簡単に傾きがちですが,ソテリアやはるえ野の職員は,人生の中で心を病むことは誰にでも普通に起こることであり,地域社会の中で見守ることが大事だという使命感を持って,ほとんど年中無休で活動しています。

ところで,はるえ野を訪れて1日皆と過ごして驚いたことは,このような使命感を持って活動しているセンターのスタッフにも,病歴を持つ人がかなりの人数存在したことです。
彼らは,健常者と何ら変わるところがないように見えます。
また,利用者の中にも,健常者とほとんど変わらないように見える人たちがいます。
結果的に,スタッフと利用者の区別がつきません。
それなのに,障害者というレッテルを貼り,人生の落伍者であるかのように扱うのは,彼らに対してとても失礼なことだし,間違った認識だと言えます。
聞いたところによると,人生の中で一度は心を病んだことがある人の割合は,10人に1人という高確率なのだそうです。
つまりは,誰でも心を病む可能性があるし,誰でも立ち直ることができるのです。

…続きます。次回訪問は,約2週間後です。

(石丸)

2012年4月25日 (水)

事務所内模擬裁判

 先週末事務所内で刑事の模擬裁判を開きました。現在進行中の事件の重大な争点について裁判官・裁判員はどう判断するか、弁護側、検察側の冒頭陳述や弁論のみならず証拠調べも行いました。と言っても情状証人以外は来てもらうわけには行きませんから、調書を読み上げてこれに代えました。検察官役は田岡弁護士、裁判長役を先月まで東京地裁刑事部に在籍していた河合弁護士にお願いし、激しい攻防を行いました。

 進行中の事件のため詳細をご紹介できないのが残念ですが、模擬裁判の結果、弁論をもっともっと練り上げる必要があることがわかりました。自分の主張がうまく裁判所に届いているかをチェックする良い機会になりました。駆け足でやっても丸1日がかりの大仕事でしたが、実り多い模擬裁判でした。

(櫻井)

2012年4月15日 (日)

「検事失格」

 

犯罪者の社会復帰を助け、再犯を防ぎたいという気持ちから任官した検事が実際に検察庁で受けた教育は、彼が思い描いていたものとは全く異なるものだった。「生意気な被疑者がいると机の下から被疑者の向うずねを蹴るんだ」と得意げに話す先輩検事。検事が1人語りして作成した自白調書に署名するのを被疑者が拒んだときには「これはお前(被疑者)の調書じゃない。俺(検事)の調書だ!」と一喝して署名させろと指導する次席検事。最前線の検事や事務官が全員不起訴にすべきだと進言しているのに「お前、もう諦めろ」と言って起訴を命ずる検事正。そして彼はその事件で無理な自白を引き出そうとして、否認する被疑者に暴言を浴びせてしまう。元検事・市川寛弁護士が自身の経験をありのままに述べた記録だ。いままで曇りガラスの向こうにぼんやり見えていたものをくっきり見せてくれる。弁護士を30年してきた私にして「もう少しましなところかと思っていた」というのが率直な感想だ。

 もちろん個人的に立派で信頼できる検察官は少なくない。それでも上記のような問題を正せない、「それもあり」としてしまう検察庁の体質に問題があるということを私たちはきちんと見据えなければならないと思う。刑事弁護人には必読。一般市民にも是非読んで欲しい1冊だ。勇気をもって本書を世に出した市川寛弁護士に敬意を表したい。

(櫻井)

2012年4月 2日 (月)

1.3%

 先般大宮ロースクール時代の教え子の女性弁護士から、被疑者弁護で勾留請求を却下させることに成功したという報告を受けました。本来勾留する必要のない人に対して検察官が勾留請求をしたので資料をそろえて裁判官を説得した結果でした。

 褒める私に対して彼女は謙遜していましたが、彼女は褒められるだけの仕事をしたのです。というのも、勾留請求が却下される例はまだまだ少ないからです。

 次に掲げる表は、最高裁判所が発行している司法統計年報という統計資料をまとめたものです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                       
 

司法統計年報より

 
 

平成

 
 

全裁判所請求による発布

 
 

却下数

 
 

却下率(却下数×100/請求による発布数と却下数の和)

 
 

12

 
 

122354

 
 

549

 
 

0.446693734

 
 

13

 
 

128615

 
 

594

 
 

0.459720298

 
 

14

 
 

137649

 
 

581

 
 

0.420313969

 
 

15

 
 

148333

 
 

536

 
 

0.360048096

 
 

16

 
 

151204

 
 

749

 
 

0.492915573

 
 

17

 
 

151720

 
 

711

 
 

0.466440553

 
 

18

 
 

147095

 
 

1039

 
 

0.701391983

 
 

19

 
 

135864

 
 

1353

 
 

0.986029428

 
 

20

 
 

129269

 
 

1436

 
 

1.098657282

 
 

21

 
 

127792

 
 

1504

 
 

1.163222373

 
 

22

 
 

121634

 
 

1648

 
 

1.336772603

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

ある年の全裁判所に対してなされた勾留請求につき、勾留状を発布した件数と、却下した件数を拾い出し、却下数と双方の和との比を百分率で示した。厳密な意味での却下率とは言えないが、概要を理解するには十分であろう。20年には却下率が1%を超えている。

 

これによると、勾留請求の却下率は年々上がっているとはいえ、平成22年でも1.3%強にしか過ぎません。それに彼女がまだ駆け出しの弁護士2年生であることを考えればなおさら立派だというべきです。

最近は刑事弁護に熱心に取組む若い弁護士が増えてきました。将来が楽しみです。

(櫻井)

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