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2012年3月

2012年3月29日 (木)

死刑執行に異議あり

 3月29日、東京、広島、福岡の3つの拘置所で死刑が執行されました。日弁連は早くも抗議の会長声明を発しましたが、私も今回の執行には憤りを禁じ得ません。

 国は「死刑の在り方についての勉強会」を続けて来ましたが、小川法務大臣は議論が出尽くしたとしてこの勉強会を廃止しました。その報告書のまとめには、「死刑制度の存廃に関する主張については(中略)一概にどちらか一方が正しく、どちらか一方が誤っているとは言い難いものであるように思われる。」、「国民の間でさらに議論が深められることが望まれる。」と記載されています。

 一概にどちらが正しいと言い難い問題で、議論が深められるべき問題だという確認さえされているのに、死刑を執行するのは、勉強会のまとめの趣旨に明らかに反します。

 小川大臣は執行に際し、内閣府の調査で国民の85%が死刑を支持していると言いますが、これも二重の意味で誤りです。その理由の第1は、そもそも調査の仕方がまずいことです。

 同調査は冒頭に「人殺しなどの凶悪犯罪は4,5年前と比べて増えていると思うか」という設問を設けています。これに対して73.9%の人が増えている、12.0%の人が変わらないと回答しています。減っていると答えた人は5.8%にすぎません。現実には、平成17年と22年の比較(平成18年版及び23年版犯罪白書により認知件数を比較)では、殺人が24%、強盗が33%も減少しているのです。ですから、現在の死刑の是否を問うならば、人殺しなどの凶悪犯罪が激減していることを正しく伝えてから行うべきです。ところが、回答者の94.2%は近年の凶悪犯罪の発生件数が著しく減少しているという動向について正しい認識を持たぬまま、続く質問で死刑の是非を回答しているのです。このような調査の結果は信頼性が低いと言わざるを得ません。

 理由の第2は、85%が支持という評価です。この割合は、「どんな場合でも死刑を廃止しようという意見に賛成か」という問いに賛成の回答が16%だったことから、それ以外は死刑を支持しているという論法から導かれたものだと思われますが、別の質問に対して、重い罪を犯した人の場合でも,実際にはなるべく死刑にしない方がよいという意見に賛成している人が41.6%もいることを考えれば、全面的廃止論を支持する者以外は死刑制度の支持者だというのは我田引水が過ぎるというべきでしょう。また、上記の回答からは、死刑制度の存続と執行の是非を分けて考えている回答者が相当数いることも予想されます。従って、「85%が支持」との論拠は、その数値自体に信頼性が欠けるうえ、執行の根拠にすることの適否も疑問のあるものです。

 私は、死刑は非人道的な刑罰だと考えています。また、国際社会で信頼と尊敬を集めている友好国の多くが歴史の過程で廃止してきた経緯からも、死刑制度は存続すべき合理性を失っていると考えています。遅ればせながらそのような議論をして行こうと言った矢先に死刑を執行する法務大臣の人権感覚のなさと姿勢の不誠実さに憤りを覚えます。

(櫻井)

2012年3月27日 (火)

原発ADRの動きが活発になっています。

 久々に原発賠償の話題です。東京の弁護団で活動していますが、身近に見聞きするだけでも色々な動きがあります。

 大きく報道された通り2月27日に申立て1号案件が和解成立に至りました。 
 http://ghb-law.net/?p=231

 大熊町、原発から5キロにお住まいだった方が都内に避難してきて昨年9月1日に原子力賠償紛争解決センターにADRの申立てを行ったものです。

 申立当時は、帰還できないことを前提に不動産の全損分を請求することについて正直「何て大胆な」と感じたりもしましたが、いざ現実になってみると、ようやくここまで来た実感とともに帰還できないことが確定したようで複雑な思いもあります。

 つい先日は、避難者が多く住む江東区の集合住宅にて、この申立人の生のお話しを聞く講演報告会を東京三弁護士会で主催しました。予想以上にたくさんの人が来て、何故そんなに早くに申立てをしたのか?途中迷いはなかったのか?東電はどんな対応をしてきたのか?これからどうするのか?等々の話に熱心に耳を傾けていました。同じ立場の人が勇気をもって先陣を切り、完全ではないにしろ生活再建のための足がかりを一早く掴んだ経験談は少しばかりの勇気を与えたようです。できればまた同様の企画を行っていきたいと考えています。

 この1号案件以外にも実は続々と和解案が出されています。とにかく早期に救済をということで一部和解による支払いを促す案もあれば、被災者の精神的苦痛に理解のない残念な和解案もあります。被災者にとっても弁護団にとっても踏ん張りどころだと感じます。

 そんな中、福島県の現地では行政区を中心としたADRの集団申立ての動きが活発です。南相馬、双葉町、飯舘村等々・・・今まで耐え忍んでいた被災者の怒りの声がものすごいエネルギーになりつつあります。年末に初めて集団申立て(何と130人!)をした南相馬の件は早くも(3か月経過しているから実際はそう早くもないですね)4月には和解案が出るそうです。130人を同様の論点を持ついくつかのグループに分けて、その中の代表を中心に調査審理しているようです。これをチャンピオンシップ方式(センターがネーミングした)と呼ぶようですが、わたしも書いていてどんな審理方式かよく分かっていません。いずれきちんと報告できればと思っています。

 原発事故から1年が経過し、ますます地味になりつつあるテーマですが、賠償問題はむしろこれからが本番です。150万人以上の方が損害賠償問題という法律紛争を抱えていることになります。マスコミ関係者にも法曹関係者にも引き続き関心をお寄せ頂きたく思います。

(亀井)

2012年3月18日 (日)

事業としての不動産賃貸借7(賃料の増・減額請求)

 バブル経済の崩壊から20年、不動産の相場も賃料の相場もかつてほど大きく変動することはなくなりました。しかしそれでも都市部の賃料の相場は意外に変化しています。気づいた時には賃料の額が相場とかけ離れていたということがよくあります。こんなときにはどうしたら良いでしょうか。

 賃料が相場と比較して不相当になったときは貸主借主のいずれからも賃料の増減額の請求ができます。通常は申し入れをして話合いが持たれ、最終的には双方の合意で新しい賃料が決まるのですが、話がまとまらないこともあります。

 そんな時には賃料の増額・減額の調停を起こすことができます。裁判所の調停で賃料を決めるのです。調停が成立しなかったときは裁判を起こすことができます。調停をせずに裁判を起こすことはできません。また、調停も訴訟も素人の方が進めることは難しいので、弁護士に依頼して下さい。

 調停が起こされるとたいていの場合は鑑定を行います。適正な賃料額を決めるわけですから、この鑑定の結果がかなりの程度重要視されます。ですから調停や訴訟を起こす時も、予め鑑定の結果について見通しを立てることが重要です。

 貸主から増額を求められた借主は、賃料が決まるまでは少なくとも現状どおりの賃料を払い続ける必要があります。相場はもっと安いはずだと主張して低い賃料しか払わないでいると、債務不履行で契約を解除される場合があるので注意が必要です。また、借主から減額を求められた貸主も、現状通りの賃料を請求できます。

 賃料増減額の調停まで申立てる人はあまり多くありません。けれども賃料の増減がいっぺんに大幅になされることはありません。たとえ近隣の相場と違っても、新規の賃料と継続賃料は違うからという理由で、直ちに相場なみの金額が認められないことの方が多いのです。そうならないためにも、労を惜しまず然るべき手続きを取ることが大切です。

(櫻井)

2012年3月 8日 (木)

事業としての不動産賃貸借6(困った借主3)

 困った借主に対して訴訟に踏み切れない理由は何と言っても費用が相当かかるに違いない、あるいはいくらかかるかわからないといった不安でしょう。さりとて弁護士に相談しようにもどうして弁護士を選んで良いかわからない。しばらく様子を見ようかなどと考えているうちに時間はどんどん過ぎてしまいます。

 その費用の点ですが、事務所によってかなり違いがあるようですから、一概には言えません。私たちの事務所では建物明渡し訴訟を起こす場合、着手金が賃料の2か月分(但し最低額は10万円)報酬は賃料の3~4か月分が基準になります。たとえば賃料10万円の物権の明け渡しの場合、着手金が20万円、明渡しの判決を得た場合の報酬が30~40万円というのが標準の報酬額です。かつての弁護士会の報酬規定よりも低額に設定しています。もちろん、それでも安くはありませんが、賃料を半年滞納されるとそのくらいの額になってしまいますから、決断は早い方が良いのです。困った借主は、大家さんの対応が甘いと一層ルーズになる傾向があります。きちんとした対応が不可欠なのです。

 弁護士を立てて交渉や訴訟をすることは、個別の事案に注目すると出費の方が多くなることがあります。私は、それでもなお弁護士を利用することをお勧めしています。それは、どういう貸主か理解してもらうためです。理不尽な対応をすれば訴訟も辞さない。目先の損得で動かない、という姿勢は困った借主の態度を改めさせる上でも意味があるからです。困った借主に甘く見られないために必要なコストとして弁護士費用を考えていただくと良いと思います。

 上手に弁護士を利用して、「手ごわい」大家さんになって下さい。

(櫻井)

2012年3月 4日 (日)

取材を受けました

 こんにちは、神山昌子です。

 先日、雑誌の取材を受けました。 「いきいき」という50代からの生き方・暮らしかた応援雑誌です。月刊誌で毎月16万部の売り上げがあるそうです。

 なんと編集者・ライター・カメラマン全員女性でした。とくにカメラマンが女性という点に感心したら、最近は若い男性がカメラマンになりたがらず、またなっても続かないので、女性のカメラマンの数が多くなっているとのことでした。どこの世界も女性の方が頑張っているね、男性より根性あるのかもという話で盛り上がりました。

 とはいえ、私の本を読んでの取材なので、私の長い受験時代の話が主であり、50代以上の読者の方へのメッセージということで、新しいことにどんどん挑戦しよう、という内容になりそうです。

 5月号にのります。発売は4月10日のようです。 まだ、これから昔の写真を探してお渡しすることになっているので、記事の内容などがはっきり分かるのはまだ先になります。どんな記事になるのか楽しみです。

 もし良かったら、読んでみてください。

(神山昌子)

2012年3月 3日 (土)

事業としての不動産賃貸借5(困った借主2)

 

困った借主に対しては毅然とした態度を取るべきですが、それにはやり方があります。口頭での注意は一度で十分です。2度目以降は文書にして下さい。何度も口頭で注意するのは結果的には時間の無駄となることが少なくありません。

 文書にするのは最終的に訴訟になったときの証拠とするためです。口頭での注意は言った言わないの話になりがちですが、文書はその心配がありません。いつ出したかについても記録に残ります。また、口頭での苦情申し入れを無視したのと文書での正式な抗議を無視したのとでは借主に対する非難の程度も変わって来ます。弁護士が内容証明郵便を使うのも、いつどのような意思表示をしたかを正確に残し、訴訟の際に有力な証拠にするためです。

 最初の文書ではとりあえず債務不履行について抗議し、債務不履行状態の解消を求めます。賃料の滞納などの場合は○月○日までに支払えと明示します。それで事態が改善しなければ賃貸借契約解除の通知をし、明け渡しを求めます。

 ここまでの過程で問題が解決することが少なくありません。けれども中にはそのような通知にも動じない人たちがいます。そのような場合は、ここまでご自身で進めてきた人も弁護士を依頼して訴訟を検討しなければなりません。ところが実際にはここで諦めてしまう人が多いのです。残念です。

(櫻井)

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